企業人なら知っておきたい働き方改革関連法とは?

 2020.08.05  2022.02.17

働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます”

引用:首相官邸ホームページ「働き方改革の実現

日本の労働環境は今、大きな転換期にあります。それはコロナ禍による世界的なリモートワークへの潮流のことだけでなく、日本企業がこれまで積み上げてきた文化や風土、習慣、経済社会全体を取り囲む「労働に対する固定概念」、そうした様々な要素を変化させ、真にグローバル化された社会を作り上げることです。

働き方改革は「一億総活躍社会」に向けた取り組みです。そこには「日本全体の労働生産性向上」を目指す動きがあり、2019年より施行された働き方改革関連法案によって、法律的にその実現を目指しています。本記事では、企業人・ビジネスパーソンなら必ず知っておきたい働き方改革関連法案について解説します。

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働き方改革関連法案とは?

働き方改革関連法は内閣府に設置された働き方改革実現会議という、安倍内閣総理大臣の私的諮問機関において「多様な働き方を実現し、労働者間の格差を解消するにはどうすれば良いのか?という議論を繰り返し、2018年6月29日に成立した各種法案のことです(2019年4月1日より施行)。具体的にどんな法案が盛り込まれているのか?以下に働き方改革関連法によって施行される項目を列挙します。

  • 時間外労働の上限規制の導入
  • 長時間労働抑制策・年次有給休暇取得の一部義務化
  • フレックスタイム制の見直し
  • 企画型裁量労働制の対象業務の追加
  • 高度プロフェッショナル制度の創設
  • 勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等の設定の改善に関する特別措置法改正)
  • 産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法・じん肺法改正)
  • 不合理な待遇差を解消するための規定(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)・労働契約法改正)
  • 派遣先との均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)の改正)
  • 労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

これらの法案のうちいくつかは既に施行されており、特に「時間外労働の上限規制の導入」については経済界全体で大きな波紋を呼びましまた。また、労働基準法の改正だけでなく「高度プロフェッショナル制度の創設」といった新しい制度も登場しています。

 

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「時間外労働の上限規制の導入」について

「時間外労働の上限規制の導入」は2019年4月1日に施行され、働き方改革関連法案の中では最も重視されている法案です。「そもそも残業時間には上限があるのでは?」と思われる方も多いかと思いますので、簡単に解説します。

働き方改革関連法案施行以前の労働基準法では、1日8時間以上、週間で40時間以上の労働を禁止しており、残業時間の規制に関しては、月間45時間未満、年間360時間未満と定められています。しかし例外措置が認められており、これを「サブロク(36)協定」と呼びます(労働基準法第36条が基準になっていることから)。

労使の協定によりサブロク協定が結ばれると、前述した帰省以上の残業を従業員に課すことができ、月間45時間未満・年間360時間未満という残業規制を大きく超えた残業が可能になります。これにより過酷な労働環境に身を置かれ、慢性的な長時間労働によって罹患したり精神病を患ったり、時には過労死するケースすらあります。

これまで事実上「青天井」だった残業規制に、より具体的な上限規制を設けてそれを脱した場合に罰則を設けたのが「時間外労働の上限規制の導入」です。所定の残業規制(月間45時間)を超えて労働できるのは繁忙期であっても年間で6ヵ月までとされ、年間の上限規制が720時間、さらに月間100時間未満、複数月間平均80時間未満という上限規制が施行されました。これにより、労働基準法の月間45時間未満・年間360時間未満がより厳格化されてことになります。

もっと見る:【3分でわかる】働き方改革とは?

働き方改革関連法案がビジネスに与える影響

「時間外労働の上限規制の導入」については2020年4月1日に中小企業でも施行され、さらに大企業にて「同一労働同一賃金制度」も適用され、労働環境の変化がより顕著になりました。これら働き方改革関連法案は、我々のビジネスにどのような影響を与えるものなのか?

良い影響としては「人材の多様性」が今後急速に拡大するものと考えられます。少子高齢化により2016年は6,648万人だった労働人口が減少傾向に転じ、2065年には3,946万人と4割強減少すると見込まれています。

出典:みずほ総合研究所「少子高齢化で労働力人口は4 割減

少子高齢化には全く歯止めがきかず、それに伴い労働人口減少も阻止できないものと考えられます。その反面、人材の多様性が徐々に拡大しており、老若男女様々な人材が活躍できる社会が整いつつあります。首都近郊ではシルバー人材の起用が活発化しており、テレワークの普及によってこれまで前線を退いていたビジネスパーソンにとっても働きやすい環境が整われています。

さらに、「雇用の流動化」も今後大きくなっていくのではないかと考えられます。残業時間が規制されることにより仕事効率の良い労働者が求められるようになり、市場を越えてスキルのある人材へのニーズが高まっていきます。これに雇用の流動化が促進され、高いスキルをもった労働者の活躍の場が多様化していくことでしょう。また、残業時間の規制によりこれまで割増賃金をあてにしていた労働者の給与水準が下がることで、副業に対するニーズも増加するでしょう。

既にUber Eatsなど複数のサービスにて副業を開始するビジネスパーソンが多く、企業側でも副業を容認する動きが活発化するでしょう。

「成果主義への転換」も考えられます。今年4月より施行された「同一労働同一賃金」制度は雇用の種類に関わらず、同じ労働をしている労働者には同じ賃金を支給することになり、その中でより効率性の高い労働者が注目されるようになるので、雇用形態や年齢などを考慮しない成果主義が日本でも主流になっていくと考えられます。

今後の働き方改革関連法案に注目

働き方改革関連法案は今後も改正される可能性は大いにあります。その都度、日本のビジネスは転換期を迎えるかもしれないため、そうした大きな時代の動きに敏感になるためにも、今後の働き方改革関連法案の動向に注目していきましょう。

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