クリティカルパスとは?プロジェクト管理に役立つ手法を解説

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2024年2月29日
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概要

クリティカルパス法 (Critical Path Method, CPM) とは、プロジェクトを完了させるために実行しなければならないタスクを特定する手法です。プロジェクト管理におけるクリティカルパスとは、一連のタスクが要する所要時間のうち、パス (経路) が最長となるものを指します。この記事では、この手法をプロジェクト管理にどう活用するのか、クリティカルパスの書き方、求め方や CPM の計算方法などをご紹介します。

更新: この記事は、クリティカルパスが活用される分野と具体例に関する記述を含め、2024年 1月に改訂されました。

プロジェクト目標達成には、ロードマップを作成してタスクをプロセスを可視化することが不可欠です。その際に役立つのが、クリティカルパスです。この手法を用いることで、プロジェクトを完了するために対応が求められる重要 (クリティカル) なタスクを見極め、プロジェクト管理に役立てることができます。

またこの手法を活用すると、タスクの依存関係を管理したり、現実的な期間設定も可能になります。この記事でクリティカルパスのポイントをチェックして、プロジェクトのタイムライン最適化に役立てましょう。

Asana でプロジェクトのタイムラインを追跡する

クリティカルパスとは?

クリティカルパスとは、プロジェクトの全工程を最短時間で完了するために重要な作業経路のことを言います。端的には、「プロジェクト完了のために外すことができない重要な作業工程」に着目した効率的な作業経路と言えるでしょう。プロジェクトに不可欠な作業工程そのものも意味する言葉としても使用されます。

重要な作業 (タスク) を特定することで、スケジュールの柔軟性も判断することができるようになります。プロジェクトには複数のタスクが存在し、個々のタスクを終わらせなければプロジェクトは完了しません。その一連のタスクを時系列で結んだとき、一番時間かかる最長経路のことをクリティカルパス (Critical path) というわけです。

クリティカルパスの重要性とは?

前述した「時系列に経路を結ぶ」とは、「タスク A を完了させないとタスク B ができず、タスク C を行うにはタスク B が完了している必要がある」といったように、タスク同士が因果関係もしくは依存関係にあるものを結びつけることを指します。つまり、このパスでつないだタスク同士は連動しているため、このパスのどこかで遅延が発生した場合、それ以降の後続タスクが全て後ろ倒しになってしまうのです。

クリティカルパス (重要タスク) に遅れがあると後続する作業にも影響が現れ、プロセス全体も遅延してしまうという意味で、クリティカルパスを特定しておくことはとても重要です。そのためにはまずプロジェクトタイムライン上でタスクの依存関係を把握、タスクの期間を計算し、そして最も重要なタスクを発見していきます。

例えばクリティカルパスにあたる作業が予定より数日遅れているなら、ほかのすべての作業工程にも遅れが生じるため、プロジェクトの完了時期を変更もしくは見直しする必要が生じます。このように、クリティカルパスという発想は、重要な作業経路を把握しやすくし、完了予定日の遅延防止や工程管理の円滑化へとつながるのです。

クリティカルパスは、メイン工程として他工程より優先して行う必要があります。たとえ関連する作業全般が順調に進んでいたとしても、メイン工程が遅れてしまうと作業工程は中断されて、全体の作業がそこでストップしてしまいかねないからです。

上記のように、メイン工程が管理されずに遅れていると、作業全体にも遅延が生じて納期までに完成できません。これを避けるためプロジェクトマネージャーは、全体の予定日数に大きく影響する作業経路を発見し、作業の遅れが生じないように対策を立てる必要があります。

そのためには、「早めにメイン工程を把握して優先して業務を進め、予定よりも早く終わらせておくこと」が重要となるでしょう。集中的に取り組むポイントを特定することで、工程全体にゆとりを持って取り組めるようになれば、品質の向上にもつながります。

詳しくは下記の『クリティカルパスの求め方と書き方』をご覧ください。

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クリティカルパスの歴史

クリティカルパスは 1950年代後半、非効率なスケジューリングによるコスト増の問題を解決する手法として開発されました。それ以来、プロジェクトの計画やタスクの優先順位付けの手法として普及。複雑なプロジェクトを個々のタスクに分解、効率化し、プロジェクトの柔軟性を見極めるのに活用されています。 

現在では建築や土木、生産などのビジネスシーンでよく使用されています。医療福祉の分野でも、病院で医師や看護師、薬剤師などさまざまな職種のスタッフが連携して検査、治療、処置、指導を行う治療計画書に取り入れられるなど、幅広い分野で活用されています。

クリティカルパスのメリットと使い方

クリティカルパスのメリット

クリティカルパスは、プロジェクトの計画、リソースの割り当て、タスクのスケジュール設定などマネジメントに役立ちます。具体的にクリティカルパスにはどんなメリットがあり、どのような目的のために活用することができるのでしょうか。知っておきたいクリティカルパスのポイントをまとめます。

  • プロジェクトを効率的に管理できる

  • タスクの優先度が明確になる

  • 柔軟なスケジュール管理ができる

  • 能率的にリソース管理ができる

  • 今後に役立つデータが入手できる

  • ボトルネックを回避できる

プロジェクトを効率的に管理できる

クリティカルパスを把握することによって、プロジェクト全体の所要時間やタスク数を把握することにつながります。プロジェクトの全体像を早い段階からつかみやすくなり、また進捗管理も行いやすくなるため、プロジェクトのより効率的な進め方を検討する余裕が出てきます。その結果、例えばクリティカルパス上のタスクを優先的に進めることで、その他の作業スケジュールに余裕を持たせることが可能になるしょう。

このような柔軟で効率的なプロジェクト運営が実現することで、大きなメリットが得られるのです。

タスクの優先度が明確になる

クリティカルパスの特定のためにタスクを洗い出す作業によって、各タスクの重要度が把握しやすくなります。そのため、「どのタスクから処理していくべきか」「どのタスクに人材を厚く割り当てるか」といったケースでも適切に優先順位をつけやすくなります。いつ重要なタスクが発生するかを事前に把握することで、そのタイミングで人材リソースを投下できるようになるのです。

柔軟なスケジュール管理ができる

プロジェクトの締め切りは、思いがけず前倒しになることもあります。そのような突然のスケジュール変更に直面したときも、前もってクリティカルパスを把握しておけば柔軟に対応することができます。

スケジュールの短縮方法には「ファストトラッキング」と「クラッシング」の 2 つの手法があります。

  • ファストトラッキング: 複数のタスクを並行して実行し、全体の所要期間を短縮する手法です。クリティカルパスが明確なら、同時進行できるタスクをすぐに見つけることができます。このとき、タスク間に依存関係がないことを確認しましょう。メイン工程を短縮できると全体のスケジュール短縮にもつながり、業務効率がアップするなどのメリットがあります。

  • クラッシング: リソースを増やして作業を高速化する手法です。リソースを増やす前に、プロジェクトスコープの範囲内であることを確認し、変更内容はすべてステークホルダーに知らせるようにしましょう。

事前に描いておいたクリティカルパスがあれば、前倒しになった締め切りに間に合うよう、最適な戦略を選択することができます。

記事: ファストトラッキングとクラッシング: プロジェクトのスケジュールを短縮するヒント

能率的にリソース管理ができる

クリティカルパスを活用することで、プロジェクトマネージャーはタスクの優先順位付けリソースの配置方法の見極めをより容易に行うことができるようになります。

一方で、この手法ではリソースの可用性は考慮されていません。チームメンバーの過密スケジュール、機器や設備の不足など、リソース不足の問題は、リソース平準化の手法を使って解決しましょう。

リソース平準化は、リソースの過剰な割り当てを解消し、現状のリソースを活用してプロジェクトを完了させることを目指す手法です。活用するときは、プロジェクトの開始日と終了日を調整します。クリティカルパスの再調整ができない場合は、フロートのあるタスクに限定して実行してください。

記事: チームのインパクトを最大化したいなら、リソース配分をおすすめします。

今後に役立つデータが入手できる

クリティカルパスは、前もって想定された作業と実際の進捗状況を比較するのに役立てることができます。現在のプロジェクトで使用しているデータは、今後のプロジェクト計画に反映可能です。

プロジェクトの進行に伴い、当初のクリティカルパスと、実際のクリティカルパスを比較しましょう。その比較データは、今後のプロジェクトの精度を高めるために有用です。タスク期間を見積もる際に、参考にしてください。 

ボトルネックを回避できる

プロジェクトにボトルネックがあると、貴重な時間が無駄になってしまいます。クリティカルパスを明確にしていれば、万が一のトラブルに際しても、臨機応変に対応しやすくなります。プロジェクトの全体像を把握しているので、ボトルネックになり得るタスクが事前に把握できるため、トラブルが発生した場合のリカバリーやフォローのシミュレーションを高い確度で行えるようになるのです。もちろん、ただクリティカルパスを特定するだけで自然に対応できるものではないため、事前に十分準備をしておく必要があります。

クリティカルパスの求め方と書き方

クリティカルパスはどうやって見つけ、そして特定するのでしょうか。クリティカルパスの求め方を、例を挙げながらステップごとに解説します。

クリティカルパスの見つけ方

クリティカルパスを求めるときは、専用のテンプレートを使うと効率的です。Asana では、個々のニーズに合わせてカスタマイズできるクリティカルパスのテンプレートをご利用いただけます。

クリティカルパス法テンプレートを作成

1. タスクをリストアップする

まずはじめに、プロジェクトを完了するために必要となる作業やタスクをすべて洗い出します。このステップは、作業分解構成図を用いて行いましょう。ここで作成されるタスクリストはクリティカルパスのベースとなります。

プロジェクトの全体をフェーズごとに分けた上で、各フェーズ内でプロジェクトの完遂までに必要な作業やタスクを漏らすことなく全てリストアップしましょう。タスクを細分化して把握することで、それぞれのタスクがどの程度の工数ないし日数、時間がかかるかを把握できます。クリティカルパスの作成には各タスクにどれくらいの稼働がかかるかを知ることが必要です。そのため、大まかではなく、過去実績や全体のスケジュールを踏まえた詳細な見積もりをしましょう。

また、タスクを細分化する際は、細かくブレークダウンしすぎても煩雑になるため、ある程度の大きさまで分解できれば十分です。最も細かい単位のタスクが数時間から数日で終わるレベルを目安にするとよいでしょう。

作業のリストアップ

たとえば、マーケティングチームがインタラクティブなブログ記事を新たに制作するとします。作業分解構成図には次のようなタスクが含まれるでしょう。

作業分解構成図

「下書きを作成」や「記事を投稿」など、リストアップされたひとつひとつのタスクがクリティカルパスの基礎となるわけです。必要な作業が明確になったら、次のステップに進みます。

2. タスク間の依存関係を把握する

作業分解構成図に基づいて、タスク間の依存関係を確認していきます。これにより、他のタスクと並行して行える作業の有無についてもチェックすることができます。

上記の例に基づいたタスクの依存関係は以下のとおりです。

  • タスク B はタスク A に依存する

  • タスク C はタスク B に依存する

  • タスク C とタスク D は並行して実行できる

  • タスク E はタスク D に依存する

  • タスク F はタスク C、タスク D、タスク E に依存する

このような依存関係を表すタスクリストは作業シーケンス (順序) と呼ばれ、クリティカルパスの決定に用いられます。 

3. ネットワーク図を作成する

このステップでは、作業分解構成図からネットワーク図を作成します。クリティカルパスにおけるネットワーク図とは、作業を時系列で示すフローチャート (工程表) のことです。タスクごとにボックスを作り、タスクの依存関係を矢印で図示します。 

時間的制約がある要素をネットワーク図に追加していくことで、最終的にプロジェクトの大まかなスケジュールが固まってきます。

記事: 工程管理の基礎知識と効率的に行う方法を解説

4. タスクの所要期間を推定する

プロジェクトの工程がおおよそ特定されたら、次はそれぞれのタスクがどの程度の時間を要するのか定めます。クリティカルパスとは一連の重要タスクの最長経路のことなので、各作業の所要時間を見積もるのはクリティカルパスを計算するうえで重要な作業です。 

所要期間の見積もりには、以下の方法を試してみてください。 

  • 経験と知識に基づいて推測する

  • 過去のプロジェクトのデータをもとにする

  • 業界標準をもとにする

このほかに、往路時間計算 (フォワードパス)、復路時間計算 (バックワードパス) という手法もあります。

  • フォワードパス: 事前に指定された開始日から順々に、最早開始日 (ES) と最早終了日 (EF) を計算する方法です。ES は先行作業の EF のうち最大値であり、EF は「ES + 所要期間」です。計算するときは、最初の作業の ES で「0」から始まり、スケジュールの進行に沿って進んでいきます。ES と EF の日付を決定すると、プロジェクトに対して早期にリソースを割り当てることができます。

  • バックワードパス: 最遅開始日 (LS) と最遅終了日 (LF) を計算する方法です。LS は、「LF - 所要期間」で、LF は後続作業の LS のうち最小値です。計算するときは、スケジュールの最後の作業から始まり、スケジュールの初めまで逆算していきます。これにより各タスクのデッドラインが明確になるため、プロジェクトを運営する際に進捗管理の目安がつかみやすくなり、タスクの期限に幅を持たせることができるようになります。   

この方法を使えば、ES と LS、終了日をもとに、各タスクのフロート (スケジューリングの柔軟性) を算出することができます。

この時点で、PERT 図を作成する場合もあります。「PERT」 (Program Evaluation and Review Technique) は日本語に訳すると「プロジェクト評価レビューテクニック」となり、プロジェクトの工程管理を定量的に行う手法を指します。その中で、各タスクにおける工数や所要時間を視覚的に表した業務間のネットワーク図が PERT 図です。

PERT 図については、後述の『クリティカルパスと PERT の違い』で詳しくご覧ください。

5. クリティカルパスを計算する

タスクの所要時間を特定したら、次のステップはクリティカルパスの算出です。クリティカルパスの計算はどうやって行えばいいのでしょうか。手動でもできますが、アルゴリズムを用いると時間短縮につながります。 

手動でクリティカルパスを計算する手順

ステップ 1: 各タスクの横に開始日と終了日 (または開始時刻や終了時刻) を書きます。

  • 最初のタスク開始日を 0 とし、終了日がそのタスクの所要期間となります。

  • 次のタスクの開始日は直前のタスク終了日です。このタスク終了日は、開始日に所要期間を加えたものになります。

  • すべてのタスクも同じように計算します。

ステップ 2: シーケンスの中で最後となるタスクの終了日をもとに、プロジェクト全体の所要期間を求めます。 

ステップ 3: ステップ2 で算出された所要時間のうち、最も長い作業シーケンスはどれかを見極めます。その最長シーケンスが、クリティカルパスです。

前述の例をもとにしたクリティカルパス図は次のようになります。クリティカルパスの書き方として、参考にしてみてください。

クリティカルパスを手動で計算する手順

この際、必ずタスク同士の因果関係または依存関係を意識して経路を作る必要があります。例えば、タスク A の次にタスク D に行けるように見えるが、実は他のパスに分岐したタスク B、C を経ないとタスク D に着手できないケースは往々にしてあるため、よく確認しましょう。把握したクリティカルパスをもとに、実際のプロジェクトのスケジュールを組み立てます。

6. フロートを算出する

フロート (スラック) とは、タスクの柔軟性の高さを指します。後続するタスクやプロジェクトの終了日に影響が出ない、タスク遅延の許容範囲のことです。 

フロートを見極めておくと、プロジェクトの柔軟性を判断するのに役立ちます。フロートは、プロジェクトにおけるリスクや不測の事態への対応を想定したリソースであるわけです。

クリティカルなタスクは日程が決まっており、フロートはゼロになります。フロートが正の値であるタスクは、非クリティカルパスに属し、遅延してもプロジェクトの完了日に影響は出ません。非クリティカルなタスクは、時間やリソースが不足する場合には省略できます。 

フロートは、アルゴリズムを用いるか、もしくは手動でも計算できます。フロートには「トータルフロート」と「フリーフロート」の 2 つのタイプがあり、それぞれで計算方法が異なるのでこちらで確認しておきましょう。 

トータルフロートとフリーフロートの計算方法

2 種類のフロートの意味と計算方法は次のとおりです。

  • トータルフロート: プロジェクト終了日の遅延や、スケジュール制約条件からの逸脱が出ない範囲で、ある作業の開始を最早開始日から遅らせることができる期間です。トータルフロートは「LS - ES」または「LF - EF」で算出します。

  • フリーフロート: 後続のタスクに遅延が出ない範囲で、ある作業の開始を遅らせることができる期間です。フリーフロートができるのは、2 つ以上の作業に共通して 1 つの作業が後続する場合のみとなります。ネットワーク図を見ると、作業が一つに収束する箇所です。フリーフロートは「ES (次のタスク) - EF (現在のタスク)」で算出します。

フロートをしっかり理解しておくと、どんなメリットがあるのでしょうか。たとえば、プロジェクトマネージャーにとっては次のポイントが挙げられます。

  • プランどおりにプロジェクトを進行できる: プロジェクトのトータルフロートを監視することで、プロジェクトが順調に進んでいるかどうかを判断することができます。フロートが大きいほど、早期または予定どおりに終了する可能性が高くなります。  

  • 優先順位付けができる: 作業にフリーフロートがあるかどうかを見極めることで、優先すべきタスク、先送りする余裕があるタスクを把握することができます。

  • 有用なリソースとなる: フロートとは、プロジェクトにおけるリスクや不測の事態への対応にあてられる時間的な余裕ともとらえることができます。フロートの量を把握しておくと、時間を有効に活用できます。


最初に明確化したクリティカルパスはプロジェクトの要になるものです。この経路上のタスクを効率化できないかどうか、常に検討しましょう。効率化の具体的な方法としては、並行可能なタスクは並行して実施することや、追加リソースを投入することなどが考えられます。

クリティカルパスを作成するときは、テンプレートを活用して効率的に行うのがおすすめです。

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クリティカルパスの具体例

ここでは、具体例を挙げて確認していきましょう。ハンバーガー製造の際の作業工程について説明します。

1.製造時に行う全作業の確認

ハンバーグを焼く 5 分、バンズを焼く 1 分、盛付と提供 5 分

2.クリティカルパスの特定

ハンバーガー製造の作業工程のうち、バンズを焼く工程は 1 分と短いため、作業が遅れたとしてもほかの工程に大きな影響を与える恐れはありません。またほかの工程と比較して、バンズを焼く工程はメイン工程には当てはまらないと確認できます。

対してハンバーグを焼く工程と盛付、提供の工程は、どちらかが遅れると完成までに遅れが生じます。工程全体の納期に影響する作業 (=クリティカルパス) はこの 2 つと判断できるため、メインの作業工程として計画を立てることが重要です。

3.クリティカルパスの管理

クリティカルパスを特定したら、その進捗状況に重点をおいて工程を管理します。クリティカルパスを滞りなく進めることを基軸にすれば、作業全体の流れも中断や遅延させず、スムーズに進められるでしょう。

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クリティカルパスと PERT の違い

クリティカルパスと似たプロジェクト管理方法に、プロジェクト評価レビューテクニック (Program Evaluation and Review Technique) があります。頭文字を取って PERT と呼ばれる手法です。この 2 つのテクニックは、どちらも 1950年代に開発されました。

PERT はアメリカ海軍でプロジェクト構築と管理用に開発されたもので、「タスクの種類、流れ、かかる時間」を可視化するという特徴があります。楽観値と悲観値の加重平均を用いて、プロジェクトの各作業について不確実性を推定します。そして、作業を完了するために必要な時間を評価します。

記事: PERT チャート (PERT 図): 実例付き解説

PERT は、作業にかかる所要期間の範囲を、次の 3 つの推定値から求めます。

  • 最も可能性の高い推定値 (M、一般的な所要時間)

  • 楽観値 (O、完了までの最短時間)

  • 悲観値 (P、障害による遅延などを想定した最長時間)

PERT で用いる計算式は、「推定期間 = (O + 4M + P) / 6」です。

PERT とクリティカルパスの大きな違いは、作業の所要期間の確実度です。前者が作業を完了するのに必要な時間を推定するために用いるのに対し、後者は作業期間がすでに推定済みの場合に用います。 具体的に 2 つの手法の違いを見てみましょう。

  • PERT は不確実なプロジェクトのタスクを管理し、クリティカルパスは予測可能なプロジェクトのタスクを管理する。

  • PERT はプロジェクトの期限内での達成や期間短縮を図り、クリティカルパスは時間とコストの最適化を図る。

  • PERT は確率的モデル、クリティカルパスは決定論的モデル。

  • PERT は各作業に対して推定値が 3 つあり、クリティカルパスは 1 つのみ。

一方で、共通する部分もあります。PERT でもクリティカルパスでも、次に挙げる項目を分析対象としているところです。

  • 遂行すべきタスクのリスト

  • 各タスクの推定所要期間

  • タスクの依存関係

PERT 図とクリティカルパス法の併用

この 2 つの手法は、同時に用いることでより高い効果が得られます。PERT で用いられるネットワーク図のことを PERT 図と呼びますが、クリティカルパスやフロートの算出を行う前に PERT 図を活用すると、より正確にタスクの所要期間を予測することができます。

まず PERT 図で作業経路を図式化し、タスクの流れを可視化します。可視化したタスクからメインの作業工程を特定し、作業それぞれの時間やメイン作業からなるプロジェクト完了までの時間を予測していくと、効率良くスケジューリングできるでしょう。

各タスクには、前述した 3 種類の所要時間をそれぞれ予測し、最短のケースから最長のケースまで、作業経路を状況別に作成しておくとさまざまな状況に対応しやすいでしょう。

効率的にプロジェクトを管理する方法とは?

クリティカルパスとガントチャートの違い

ガントチャートは、プロジェクトの作業計画を示す横棒グラフで、設定されたタイムラインに沿って追跡することができます。クリティカルパスもガントチャートも、タスク間の依存関係を示します。 

この 2 つのツールの違いを確認しましょう。

クリティカルパス

  • 重要タスクと非重要タスクを可視化し、プロジェクトの所要期間を算出する

  • ボックス同士を矢印で結んだネットワーク図でタスクを表示する

  • リソース所要量の情報は含まない

  • 作業計画をネットワーク図にするがタイムスケールは含まない

ガントチャート

  • プロジェクトのタスク進捗状況を可視化する

  • 横棒グラフでタスクを表示する

  • 各タスクのリソース所要量を表示する

  • 作業計画にタイムスケールが含まれる

ガントチャートをクリティカルパスと組み合わせると、経時的にクリティカルパスを追跡し、スケジュールどおりにプロジェクトを進めることができます。

【まとめ】クリティカルパスを利用して効率的なプロジェクト管理を行う

プロジェクトマネジメント、とりわけタスク計画やリソース管理に役立つ手法「クリティカルパス法 (CPM)」について解説しました。クリティカルパスとは何か、何に使うのか、どうやって見つけるのか、クリティカルパスの書き方などの押さえておきたいポイントを理解して、今後のスムーズなプロジェクト管理に役立てましょう。

実際に企業が抱えるプロジェクトは非常に規模が大きいものであったり、期間の長いものであったりすることが多いため、手作業でクリティカルパスの特定を行うのは非常に困難です。その場合、プロジェクト管理プラットフォームを導入することで、タスクの洗い出しやそれぞれの所要時間の計算、タスクのタイムライン化、クリティカルパスの特定など、さまざまな対応が自動化できます。プロジェクトの実施中にタスクへの変更プロジェクト管理ツール対応が必要な場合でも、ツールの利用で手書き修正よりも迅速かつ簡単に修正できるのです。

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