クリティカルパスはプロジェクト管理において非常に重要な用語です。「聞いたことはあるけど内容はよく知らない」「知ってはいるけど実際のプロジェクトで導入したことはない」といった方は多いのではないでしょうか。本記事では、クリティカルパスの概要をはじめ、実際の導入方法やメリットについて解説します。
クリティカルパスとは?
「クリティカルパス」は、主にプロジェクトマネジメントで使われる用語です。プロジェクト内のタスクを細分化して時系列で経路を結んだとき、最初のタスクから最後のタスクまでの所要期間が最長となる経路のことです。ここでの「時系列に経路を結ぶ」とは、「タスクAを完了させないとタスクBができず、タスクCを行うにはタスクBが完了している必要がある」といったように、タスク同士が因果関係・依存関係にあるものを結びつけることを指します。つまり、このパスでつないだタスク同士は連動しているため、このパスのどこかで遅延が発生した場合、それ以降の後続タスクが全て後ろ倒しになってしまうのです。
クリティカルパスはプロジェクトの中で最も長いものであるため、クリティカルパス上で遅延が生じると必然的にプロジェクト全体が遅延することになる、プロジェクトの中で最も重要な要素です。
クリティカルパスの求め方・書き方
ここからは、具体的にクリティカルパスをどのように特定していけばいいのかを、4つのステップに分けて解説します。Step.1 タスクを洗い出す
まずはタスクを洗い出すことから始めます。プロジェクトの全体をフェーズごとに分けた上で、各フェーズ内でプロジェクトの完遂までに必要な作業やタスクを漏らすことなく全てリストアップしましょう。タスクを細分化して把握することで、それぞれのタスクがどの程度の工数ないし日数・時間がかかるかを把握できます。クリティカルパスの作成には各タスクにどれくらいの稼働がかかるかを知ることが必要です。そのため、大まかではなく、過去実績や全体のスケジュールを踏まえた詳細な見積もりをしましょう。
タスクを細分化する際は、細かくブレークダウンしすぎても煩雑になるため、ある程度の大きさまで分解できれば十分です。最も細かい単位のタスクが数時間から数日で終わるレベルを目安にするとよいでしょう。
Step.2 PERT図を作成する
タスクの洗い出しが終われば、PERT図の作成に移ります。「PERT」(Program Evaluation and Review Technique)は日本語に訳すると「プログラム評価およびレビュー手法」となり、プロジェクトの工程管理を定量的に行う手法を指します。その中で、各タスクにおける工数や所要時間を視覚的に表した業務間のネットワーク図がPERT図です。
各タスクの所要時間は、タスクを洗い出す段階である程度の見積もりまではできても、実際は計算によって求める必要があります。その手法として「フォワードパス」と「バックワードパス」という手法があります。
「フォワードパス」は、プロジェクトの開始日から起算して、各タスクの開始日と完了日が最も早い日になる前提でスケジュールを組んでいく手法です。プロジェクトが進行するにつれて少しずつ設定した日程が後ろ倒しになっていきますが、この手法により最短でいつから各タスクが開始できるかを把握することで、事前のリソース確保が可能になります。
「バックワードパス」は、プロジェクトの完了日から起算して、各タスクの最も遅い開始日と終了日がいつになるのかという視点からスケジューリングする手法です。これにより各タスクのデッドラインが明確になるため、プロジェクトを運営する際に進捗管理の目安がつかみやすくなり、タスクの期限に幅を持たせることができるようになります。
それぞれの手法を活用しながら、タスクの所要時間やバッファの時間を割り出し、PERT図にプロットしていきましょう。
Step.3 クリティカルパスを計算する
次に、作成したPERT図に基づいてクリティカルパスの計算を実行します。以下の手順に沿ってクリティカルパスを特定しましょう。- プロジェクトの開始から完了まで、タスク順に沿って一本道の経路をたどってみましょう。基本的には複数の経路があるはずです。
- たどった経路上のタスクの所要時間を全て足し合わせます。
- それぞれの経路でのタスクにかかる所要時間の合計を比較し、最も所要時間の大きい経路(=クリティカルパス)を割り出します。
この際、必ずタスク同士の因果関係・依存関係を意識して経路を作る必要があります。例えば、タスクAの次にタスクDに行けるように見えるが、実は他のパスに分岐したタスクB、Cを経ないとタスクDに着手できないケースは往々にしてあるため、よく確認しましょう。
Step.4 プロジェクトの進行に合わせて改善する
PERT図はクリティカルパスを特定するだけのものではありません。プロジェクトは常に状況が変化するため、実態の変化に伴って図を更新したり、進捗が遅れている場合は改めてその内容をPERT図で把握したりするためにその都度必要となります。
最初に明確化したクリティカルパスはプロジェクトの要になるものです。この経路上のタスクを効率化できないかどうか、常に検討しましょう。効率化の具体的な方法としては、並行可能なタスクは並行して実施することや、追加リソースを投入することなどが考えられます。
クリティカルパスを把握するメリット
クリティカルパスを把握することで、プロジェクトの運営においてさまざまなメリットが得られます。プロジェクトを効率的に管理できる
クリティカルパスを把握することによって、プロジェクト全体の所要時間やタスク数を把握することにつながります。プロジェクトの全体像を早い段階からつかみやすくなり、また進捗管理も行いやすくなるため、プロジェクトのより効率的な進め方を検討する余裕が出てきます。その結果、例えばクリティカルパス上のタスクを優先的に進めることで、その他の作業スケジュールに余裕を持たせることが可能になるしょう。
このような柔軟で効率的なプロジェクト運営が実現することで、大きなメリットが得られるのです。
タスクの優先度が明確になる
クリティカルパスの特定のためにタスクを洗い出す作業によって、各タスクの重要度が把握しやすくなります。そのため、「どのタスクから処理していくべきか」「どのタスクに人材を厚く割り当てるか」といったケースでも適切に優先順位をつけやすくなります。いつ重要なタスクが発生するかを事前に把握することで、そのタイミングで人材リソースを投下できるようになるのです。トラブルに対応しやすくなる
万が一のトラブルに際しても、臨機応変に対応しやすくなります。PERT図などを用いて全体像を把握することで、ボトルネックになり得るタスクが事前に把握できるため、トラブルが発生した場合のリカバリーやフォローのシミュレーションを高い確度で行えるようになるのです。もちろん、ただクリティカルパスを特定するだけで自然に対応できるものではないため、事前に十分準備をしておく必要があります。クリティカルパスの特定には「プロジェクト管理ツール」がおすすめ
実際に企業が抱えるプロジェクトは非常に規模が大きいものであったり、期間の長いものであったりすることが多いため、手作業でクリティカルパスの特定を行うのは非常に困難です。その場合、プロジェクト管理ツールを導入することで、タスクの洗い出しやそれぞれの所要時間の計算、タスクのタイムライン化、クリティカルパスの特定など、さまざまな対応が自動化できます。プロジェクトの実施中にタスクへの変更対応が必要な場合でも、ツールの利用で手書き修正よりも迅速かつ簡単に修正できるのです。
大規模・長期間プロジェクトを管理する場合はツールの導入を検討してみるとよいでしょう。
まとめ
クリティカルパスは、プロジェクト内のタスクをつないだ時に最も時間がかかる経路のことです。プロジェクトパスを把握することで円滑なプロジェクト運営や、トラブル時のリカバー対応などにプラスの影響が出るため、確実に把握した上でプロジェクトに臨みましょう。
「Asana」はプロジェクトの管理を一元的に行えるプロジェクト管理ツールです。「どのようなプロジェクトが社内にあるのか」「それぞれにどのようなタスクがひもづいているのか」といったことを視覚的に確認できます。プロジェクト管理にお悩みの方はぜひ「Asana」の導入をご検討ください。
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