テレワークとは?厚生労働省のテレワークガイドラインを解説

 2020.12.28  2022.02.17

多くの企業でテレワーク導入が進んでいますが、テレワーク導入のメリット・リスク・注意点について適切に把握している方が少ないのが現状です。本記事では、厚生労働省によるテレワークガイドラインの内容に基づいて、テレワーク導入のメリット、労働基準関係法令の留意点について詳しく解説します。

telework

テレワークとは

厚生労働省のガイドラインでは、テレワークを「労働者が情報通信技術を利用して行う事業場外勤務」と定義しています。テレワークは「Tel(離れる)」と「Work(仕事)」をつなげた造語で、ICT(Information and Communication Technology)を活用し、時間や場所にとらわれず柔軟に働くスタイルを指します。勤務先のオフィスから離れた場所で、ノートPCやiPadなどモバイル機器を利用して働くことができるので、子育てや介護と仕事の両立を目指せます。

テレワークによって、それまで仕事一辺倒だった会社員は、ワークライフ・バランスを図ることが可能です。また、家庭の事情で働けなかった人たちも仕事に就けるようになり、多様な人材の能力発揮につながります。

一方で、テレワークには「仕事とそれ以外の切り分けや労働時間の管理が難しい」「逆に長時間労働になりやすい」という指摘もあります。テレワークを自社に導入し、定着させていくためには、適切な労務管理が欠かせません。そのために厚生労働省のガイドラインでは、テレワーク導入前に理解しておきたいポイントや留意点をまとめています。

テレワークの種類や分類

テレワークは、働く場所によって3つに分類できます。自宅で仕事をする「在宅勤務」、出張先や移動中に仕事をする「モバイル勤務」、本部のオフィス以外の施設で働く「サテライトオフィス勤務」です。以下、それぞれの概要や特徴を詳しく解説します。

在宅勤務

「在宅勤務」は勤務先から離れ、労働者の自宅で仕事を行う働き方です。通勤する必要がないため、節約した通勤時間を有効に活用できます。また、毎日満員電車に乗って通勤するストレスから解放されるというメリットもあります。在宅勤務は就業形態で雇用型と自営型に分類され、自営型テレワークでは基本的に出社がなく、ほぼ自宅で仕事を行うのが一般的です。

雇用型テレワークの場合は、会社にもよりますが、週1~2日を在宅勤務にシフトするケースが多く見られます。最近の活用例では、午前や午後だけ在宅勤務する「部分在宅勤務」を採用している企業も増えています。例えば、育児休業明けの社員が短時間勤務と組み合わせることも可能です。子どもの検診やPTAの会合、役所の手続きなどが必要なときに、在宅勤務と半日または時間休暇を組み合わせれば、社員の働きやすさにつながります。朝一番にWebミーティングを終え、子どもを保育園に送り出し、時差出勤をするという働き方も可能です。

サテライトオフィス勤務

「サテライトオフィス勤務」は、社員が勤めるメインオフィス以外に設けられた施設を利用する働き方です。通勤時間を短縮しつつ、在宅勤務やモバイル勤務よりも仕事を行う環境が整ったスペースで就労できます。サテライトオフィスには自社や社内グループで利用する専用型と、複数の企業やSOHOが利用する共用型の2つがあります。

専用型は、自社事業所内または別途に設置することも可能です。活用例としては、在宅勤務の代わりに利用したり、営業の外回り中や出張の際に立ち寄って、事務作業に利用したりするケースが見られます。最近では、地方にサテライトオフィスの拠点を作る例もあります。

共用型はシェアオフィスやレンタルオフィス、コワーキングスペースと呼ばれる施設を利用するのが一般的です。これらの施設は、従来フリーランスや起業家が多く利用していましたが、テレワークの普及により企業がサテライトオフィスとして契約し、社員が利用するケースが増えています。

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モバイル勤務

「モバイル勤務」はノートPCや携帯電話などを利用し、自由に働く場所を選べる働き方です。業務に合わせて臨機応変に働く場所を選定できるため、業務効率化を推進する効果があります。

活用例としては電車やバス、タクシーなどの移動中はもちろん、空港ラウンジ・出張先・カフェ・ホテルなどでも仕事を行います。出社後はほぼ外回りで退社時間に帰社するような営業職の場合、待ち時間や隙間時間の有効活用が可能です。さらに直行直帰ができるようにすれば、オフィス業務がなくなり、社員のワークライフ・バランス向上を図れます。

テレワークのメリット

テレワークは労働者・使用者の両方にメリットがあります。ここでは、それぞれの立場から見たテレワークのメリットを解説します。

労働者のメリット

労働者はテレワークを行うことで、まず通勤時間を短縮できるため、身体的・心理的負担を減らせます。会社との往復に使っていた時間を読書や家事などに充てることが可能です。

また、オフィス勤務では仕事中の着電や来客、同僚とのおしゃべりなどでデスクワークに集中できないことがあります。在宅勤務などのテレワークなら仕事に集中し、生産性を向上させ、業務効率化を図れます。

さらに子育て中の場合、子どもの病気などで出社できないときも、Webミーティングを活用すれば育児と仕事の両立が可能です。家族を介護している場合も同様で、デイケアサービスがない日を在宅勤務にすると、仕事に支障なく両立を図れます。

労働者にとってテレワークの大きなメリットは、ワークライフ・バランスを確立できることです。これまで残業や休日出勤をこなし、仕事だからと犠牲にしてきた家族との時間を作れます。テレワークで浮いた時間を、これまでやらなかった料理や掃除、洗濯など家事の時間に使ったり、忙しいからと遠ざけていた趣味を再開したりする時間に使えるでしょう。

使用者のメリット

まず、業務効率化による生産性の向上が望めます。例えば、営業職が顧客先で入荷状況や技術的質問を受けた際、その場でiPadなどから会社のネットワークにアクセスし、即時回答できます。本人が答えられない質問には、Webミーティングツールを利用して、社内の担当者が対応することも可能です。次の顧客訪問まで時間があった際は、サテライトオフィスやカフェ、公園などで仕事をすれば、顧客の面談時間や訪問数を増やせます。社員自身でテレワーク業務を計画する必要があるので、自律性が高まり、主体的に行動できるようになるでしょう。

また、子育てや介護が必要な家族がいる社員は、テレワークを活用することで仕事との両立を図れるため、育児・介護による離職の防止につながります。テレワークを導入しワークライフ・バランスに配慮した企業は、求職者からの人気が高まっており、在宅勤務ができれば遠隔地の優秀な人材を確保することも可能です。中には、地方在住の障害者を在宅勤務で雇用する企業も増えており、障害者雇用にも効果的と言えます。

さらにテレワーク導入でオフィスを縮小できれば、賃料や光熱費など関連するコストも削減できます。社員が固定席を持たないフリーアドレスを採用すれば、社員数より席数を減らし、省スペースで仕事を行えます。残業代や交通費などの削減も可能でしょう。

テレワークの問題や課題

労働者の立場で、もっとも多くの人が感じる課題は、仕事とプライベートの切り分けが難しいことです。在宅勤務では仕事と休憩のメリハリをつけづらく、長時間労働になりやすいという問題があります。

一方、使用者の立場からすると、もっとも多くの担当者が感じる課題に、労働時間の管理の難しさが挙げられます。これは在宅勤務やモバイル勤務でも同様です。特にモバイル勤務は情報漏えいの問題もあり、セキュリティ確保が喫緊の課題とされています。

労働基準関係法法令の留意点

テレワークにも労働基準関係法令は適用されます。労働基準法や労働安全衛生法、長時間労働対策で留意するポイントを解説します。

労働基準法のポイント

「フレックスタイム制」は、労働者が法定労働時間の範囲内で始業・終業時刻を自由に決められるため、テレワークと好相性とされますが、残業時間の管理は必要です。原則、時間外労働には月45時間の上限が設けられているため、労働時間を管理できる体制を作らなければなりません。

「事業場外みなし労働時間制」は、事業場外で労働する者の労働時間の把握が困難な場合に、所定のみなし労働時間を算定する制度で、多くのテレワーク導入企業が採用しています。

事業場外みなし労働時間制を採用するには、「使用者の了解を得て、PCやiPadなどモバイル通信機器が常時接続状態でないこと」「使用者から随時詳細な指示を受け、業務を行わないこと」が条件です。また、みなし労働時間制であっても、法定労働時間を超えた時間外労働に対し、残業代の支払いは必要です。残業トラブルを防ぐには、時間外や休日労働を原則禁止し、必要があれば使用者の許可を得ると就業規則に明記する方法があります。

長時間労働対策のポイント

テレワークの長時間労働を防止するには、時間外・休日・深夜労働を原則禁止するとよいでしょう。深夜・休日は外部から社内システムへのアクセスを禁止したり、残業を禁止するためにパソコンを自動でシャットダウンさせたりする仕組みの導入も有効です。長時間労働の要因となるメールやチャットにおいても、社員は時間外や休日に業務連絡を行わないように規定します。管理職も緊急時を除き、就業時間外のメールやチャットは原則禁止するルールを周知しましょう。

労働安全衛生法のポイント

管理者の目が届きにくいテレワークでは、従業員の健康管理対策を講じることが大切です。テレワークでもオフィスワークの従業員と同じく、健康診断を受診させましょう。不慣れなテレワークで従業員が心身の不調を抱えていても気づきにくいため、ストレスチェックを実施し、十分なケアを行うことが必要です。

テレワーク勤務で健康を保つには、作業環境を整えることも大切です。厚生労働省のガイドラインでは、PC作業で必要な照明やスペース、窓、机、椅子、作業姿勢などに詳細な基準が設けられています。適宜休憩を取り、軽い運動をするなどの健康管理法を加えることもおすすめです。

また働き方改革関連法により、使用者には労働時間の適正把握が義務付けられています。事業外みなし労働時間制を導入する場合は、従業員の過重労働を防ぐため、労働時間を適切に把握できる仕組みが必要です。

まとめ

テレワークは通勤時間を短縮し、生産性が高まるなど、労働者と使用者双方にメリットがあります。一方で、労働時間の把握が難しく、長時間労働になりやすいなどの課題も指摘されています。厚生労働省のガイドラインでは、労働基準法や労働安全衛生法、長時間労働対策の留意点を紹介しているので、テレワーク導入にぜひ参考にしてください。

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