Asana導入で複数チームの生産性を向上!
クロス・マーケティンググループが取り組んだ4つの工夫とは?

 2025.06.20  ワークマネジメント オンライン編集部

2025年5月13日に開催されたイベント「Asana AI Studio〜人間とAIが共創する新しい働き方 2025〜」では、株式会社クロス・マーケティンググループ グループ経営企画本部の丹羽 貴大氏が登壇し、自社でのAsana活用事例を紹介しました。

セッションでは、30社を超えるグループ企業を横断しながら、複数のチームをどうマネジメントし、Asanaを使って業務の可視化・効率化・自動化を実現してきたのか、またAI Studioを取り入れてどのように人間の作業を解放しているかなど、実践的な工夫が多数語られました。

Asana導入で複数チームの生産性を向上!クロス・マーケティンググループが取り組んだ4つの工夫とは?

拡大する組織を支えるため、Asanaをどう使っているのか

最初にお伝えしておくと、いわゆる「AIがすごい!」みたいな派手な話ではありません。私たちがAsanaをどんな工夫で使いこなしているか、日常的な業務の中でどう活かしているかを、実際の運用に即してお話しします。

Asanaを使い始めて、もうすぐ4年になります。最初は自分の周りの10名ほどで試すところから始まりましたが、今では100人規模でEnterpriseプランを導入し、組織全体で活用しています。会社自体はM&Aを繰り返して拡大してきた背景があり、グループ全体で30社の子会社を抱えています。ここ3年だけでも10社が新たに加わり、私はその親会社の管理部門、特に経営企画領域を担当しています。

拡大する組織を支えるため、Asanaをどう使っているのか

社内のオペレーションは複雑さを増す一方ですが、その中でAsanaを導入することで、関係各部門──営業、経理、ITなど──と連携しながら、業務の流れを効率化してきました。最近では新しいチームにも展開し始めており、タスクやプロジェクトが爆発的に増える中、より良く活用できるよう試行錯誤しています。

また、私はAsana東京コミュニティの運営メンバーでもあります。先月もAI Studioの活用事例として「メール返信の文面を自動生成する」というテーマで紹介しました。Asanaに興味のある方は、ぜひ今後のイベントにも参加していただけたら嬉しいです。

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新チームで始まった“分断されたタスク”との格闘

これまで私は、グループ全体の業務効率化を担う管理部門でAsanaを活用してきて、昨年からはさらにもう一つ、新しい役割が加わることになりました。それが、グループ全体を横断した経営管理業務への本格的な参画です。具体的には、予算策定や経営会議向けのレポート作成といった、経営層に関わるコア業務を、新しいメンバーたちと一緒に担うチームに加わることになったのです。

この新しいチームに入ったのは、前任のマネージャーが1カ月半後に退職するというタイミングでした。メンバーたちはAsana自体には慣れていたものの、実際に見てみると、その使い方はかなり分断されていました。各自が自分の業務のためだけにプロジェクトを作り、共有もされておらず、チームとしての一体感や共通言語がない状態です。タスクになっていない“見えない仕事”も多く、情報のやりとりは主にチャットやメールで行われていました。

結果、通知がひっきりなしに飛び交い、「これは自分に関係あるのか?」「いま対応すべきなのか?」という判断に毎回時間がかかる。いわゆる“通知疲れ”が起きており、進捗の確認も結局は口頭で行っているような、非効率な状況でした。

新チームで始まった“分断されたタスク”との格闘

最初にチームに加わったときの私の感想は「何がどこでどう進んでいるのか、まったく見えない」でした。似たような資料が複数あったり、プロジェクトやタスクがあるのに関係性がわからなかったりした状況だったため、私はまず「情報を集約する土台を整える」ことから始めました。

とはいえ、いきなり「全部Asanaにタスクを書いてください」と言っても、うまくいかないのは明らかです。そこで、まずはプロジェクトの整理と、導入の背景を共有するための「説明メモ」を準備し、着実に地盤を固めていくことにしました。

タスクの“迷い”をなくすための3つの準備

新しいチームへのAsana導入で、最初に私が取り組んだのは、「どこに何を書くかを迷わないようにする」という仕組みづくりでした。混乱した状態のままでは「タスクを書いてください」とただ伝えてもうまくいかないので、可能な限りシンプルで直感的なルールを用意する必要があったのです。

タスクの“迷い”をなくすための3つの準備

そのために用意したのが、2つのプロジェクトです。ひとつは「ルーティンタスクプロジェクト」。こちらには年に1回以上発生するような繰り返し業務をすべて記載します。もうひとつは「タスク交流プロジェクト」で、これは単発の依頼やイレギュラーなタスクをすべてここに集約する仕組みです。

それ以上増やしてしまうと「どこに書けばいいか」と迷いが生じ、その迷いがタスクの“非可視化”につながるため、プロジェクトの数は2つに絞りました。実際、「プロジェクトを探すのが面倒」「名前の意味を思い出せない」「迷っているうちにチャットで済ませてしまった」──そうした理由で、せっかくの業務がタスクとして残らないケースが散見されました。タスクが見えなければ整理できず、共有もできません。だからこそ“迷いをなくす”ことを最優先にしたのです。

そしてもうひとつのポイントが、「説明メモ」の作成です。これは単なる使い方のマニュアルではなく、「なぜこの仕組みを導入するのか」「今の現場にどんな課題があるのか」といった背景と目的を明確に記したドキュメントです。通知が多すぎて集中できない、タスクが流れてしまうといった“現場あるある”を共通認識として可視化し、チームの中で目的意識をそろえるための材料となっています。

そして最後に意識したのが、導入のタイミングです。私は、業務の引き継ぎや整理が落ち着くまでの間、あえて導入を急ぎませんでした。一時的に業務が増えていた時期だったので、慌ててツールを使い始めると余計に混乱すると判断し、ひと通りの業務をこなしてから一気に導入・整理を進めました。

こうして、

  1. 2つのプロジェクト
  2. 説明メモ
  3. 導入タイミングの調整

という3つの準備を整え、新チームでもAsanaを活用できる体制を少しずつ築いていきました。

工夫1:「すでにタスクがある状態」を仕組みでつくる

新チームを担当し始め、私の仕事量が大きく増えていく中、積みあがっていくタスクやプロジェクトをどうすれば捌ききれるのかを考え続けてきました。

その答えとして私が実践しているのが、Asanaを軸にした4つの活用方法です。

1つ目は「タスクがすでにAsanaにある状態をつくる」、2つ目は「ルーティンタスクを徹底的に省力化する」、3つ目は「AI Studioを使って人間の作業を解放する」、そして4つ目が「増えたタスクをコントロールしやすい形に整理する」です。

まず1つ目の「タスクがすでにある状態」についてお話しします。

目的はシンプルです。誰かに相談したい、報告したい、依頼したいと思ったときに、いちいちゼロからタスクを作るのは非効率だからです。そもそも「タスクを作る」という行動自体が心理的なハードルになる場面は珍しくありません。だからこそ、最初から“タスクが存在している”状態を用意しておく。それが、仕事のスピードを上げるための第一歩だと考えました。

具体的には、プロジェクトテンプレートを活用して、毎月250件以上のルーティンタスクを自動で生成しています。さらに、Googleフォームを設置しておき、問い合わせやデータ収集、依頼内容をフォーム経由で入力すれば、それがそのままタスク化される仕組みも作りました。

Salesforceと連携している業務では、Zapierを使って、Salesforceのレコードが更新されたタイミングでAsanaにタスクを自動生成。スケジュールに関しても、Googleカレンダーに予定が追加されたら、Zapierがその内容を取り込み、期日と時間を設定したタスクがAsana上に作成されるようにしています。

このような“自動生成”の仕組みをいくつも組み合わせることで、「誰かが何かを入力したときには、すでにタスクがある」という状態を実現しています。例えば社内のGoogleチャットや通知メールをGmail経由で自動転送し、そこからタスクを作る仕掛けも組んでいます。

「スケジュール登録されただけで、もうタスクがある」という状態は本当に快適です。事前に類似タスクのリンクを貼っておいたり、説明コメントを転記しておいたりすることで、すぐに対応内容を書き始められ、会話もそのままタスク内で完結します。

工夫1:「すでにタスクがある状態」を仕組みでつくる

工夫2:ルーティンタスクを徹底的に省力化して、時間を生み出す

次にご紹介するのは、ルーティンタスクの徹底的な省力化です。これは単に作業を楽にするという話ではなく、「緊急ではないが重要なこと」に取り組む時間をどうやって捻出するか、という目的に直結する工夫です。

私が意識しているポイントは大きく2つあります。ひとつは「改善の数をとにかく増やす」こと。もうひとつは「タスクの所要時間を正確に把握する」ことです。

改善については、やってみないとわからないことが多いため、思いついたらとにかく試すようにしています。たとえ細かい内容でも、他のチームに横展開すれば意外と効果が出ることも多く、「このくらいなら続けられる」と感じるラインを下げることができるようになります。

この“改善メモ”はAsanaのホーム画面に固定して、すぐに書き込めるようにしています。1つのタスクに対して、1ヶ月で50件から100件を目安に書き込み、来月に向けた改善方針やタスク名の修正、リンク先の見直しなど、細かいことでも何でも記録するようにしています。

そしてもうひとつの軸が「時間の可視化」です。Asanaのタイムトラッキング機能を使って、すべてのルーティンタスクにかかる時間をポチッと記録しています。これによって「実際に何分かかったのか」が把握でき、体感との差を認識することで改善のきっかけにもなります。

タスク上に時間が表示されるだけでも集中力が上がりますし、作業中にそのリンクからすぐ元のタスクに戻れるという利便性もあります。想定以上に時間がかかっていたり、何気なくやっていた作業に意外な負荷がかかっていたりしたことに気づくことも多く、「まず終わらせる」「あとで改善する」という考え方の分離も定着してきました。

こうして「終わらせること」と「改善すること」を分けて取り組むようにしたことで、ルーティンタスクの改善数が着実に増えていきました。

工夫2:ルーティンタスクを徹底的に省力化して、時間を生み出す

工夫3:AI Studioを使って人間の作業を“解放”する

3つ目の工夫は、AI Studioの活用です。ここで目指しているのは、人間が判断したり、探したりするような作業を減らして、仕事を高速で終わらせることです。AI Studioを使うようになってから、タスク処理のスピードや精神的な負荷が大きく変わったと感じています。

今、主に使っているのは2つのパターンです。1つは、Asanaのプロジェクトにメール転送で作成されたタスクに対してAI Studioが自動で対応するもの。もう1つは、Googleフォーム経由で受け取ったタスクに対してAIが自動で処理する仕組みです。

例えばメール本文の中に部門名が含まれていれば、その情報をもとに担当者を自動でアサインしたり、別のシステムからの通知メールに含まれているURLを抽出してカスタムフィールドに貼り付けたりしています。また、外部からのスケジュール調整依頼に対しては、メールの返信文案をAIが自動で生成する仕組みもつくっています。最近では、英文メールを日本語に自動翻訳するプロンプトも試していて、意外と使える場面が多くあります。

特に便利だと感じているのは、URL抽出機能です。カスタムフィールドにリンクを貼っておくことで、Asanaのタスクからワンクリックで他のシステムへアクセスできるようになります。正直、最初は「そこまで便利でもないかも」と思っていたのですが、実際に運用してみると気持ちの負担がだいぶ減りました。

工夫3:AI Studioを使って人間の作業を“解放”する

さらに、AI Studioの情報を効率的に集めるためにもAI Studioを使っています。例えばAsanaの英語フォーラムには新機能や改善内容が次々に投稿されていますが、私はそれをフォローして通知メールで受け取り、その内容をAIに翻訳・要約させてAsanaのコメント欄に貼っておくようにしています。英語を毎回読むよりも、情報を効率的に把握できるようになります。

もちろん、まだ試行錯誤しているところもたくさんあります。一例として、問い合わせ対応の文面を自動生成させたものの、精度が安定しないこともありました。そこで最近は、AIに「自信の度合いを自己申告させる」ような使い方ができないか、検討しているところです。

また、特定の請求書の明細を読み取る用途や、月次の経理データに異常値がないかをチェックする作業にも活用できないか、少しずつ試しています。うまくハマるところと、まだ精度が足りないところがありますが、AI Studioの良さはとにかくスピード感があることです。以前であれば、こうした処理をエンジニアに依頼して、仕様を詰めて……という流れが必要でしたが、今は自分で数分で試して、その場で運用に組み込むこともできてしまいます。

AI Studioを導入して実感しているのは、複雑な業務の中にある「人間じゃなくてもいい作業」をうまく分離し、それをストレスなく処理できる土台を作ることの重要性です。

工夫4:増えたタスクをコントロールしやすい形に整理する

Asanaを使い続けて4年になりますが、実は「ポートフォリオ」機能は3年近く使っていませんでした。というのも、デフォルトの画面構成が私の運用スタイルと合わず、一覧性や視認性の面でやや扱いづらさを感じていたからです。

ですが、複数チームをまたぐプロジェクトが30を超える現在、さすがに管理が追いつかなくなってきたため、ポートフォリオの活用方法を見直すことにしました。ポイントは「コントロールしやすい構造を自分で作る」ことです。

プロジェクトを「会議運営」「月次ルーティン」「改善活動」などの目的ごとに分類し、ポートフォリオ上でもカテゴリ別に見えるようにしました。また、期限切れのタスクを一覧表示できるようにし、優先的に処理すべき業務が視覚的に把握できるようにしています。

さらに、タスクに記録された実績時間も表示されるようにし、どのプロジェクトにどれだけの工数がかかっているかが一目で分かるようにしました。完了したプロジェクトはアーカイブして非表示にし、画面が煩雑にならないようにするなど、フィルター設定もこまめに工夫しています。

工夫4:増えたタスクをコントロールしやすい形に整理する

Asanaを有効活用した結果、問い合わせ件数が54%減少、コストも47%削減

こうした工夫を重ねた結果、増え続けるプロジェクトやタスクの全体像が非常に掴みやすくなりました。とくに新しいチームでの運用においては、月250件×2プロジェクト分のルーティンタスクがすべてAsana上に可視化され、予定時間と実績時間も追える状態になっています。

その成果は、数字にも明確に表れています。他部門からの問い合わせ件数は、ここ2年で月平均70件(54%)減少。月次ルーティン業務にかかる時間は2年で約45%、月平均20時間も短縮されました。直近1年だけでも7.5時間減っており、こうした効率化の効果が日々確実に積み重なっていると実感しています。

さらに、部門全体のコストも人件費や間接費を含めて2年で47%削減できました。加えて、子会社の月次決算にかかる期間も1.5営業日に短縮されており、組織全体としても「早く・確実に・負荷なく」運営できる基盤が整ってきています。

Asanaの使い方は、導入したら終わりではなく、業務の変化に応じて柔軟に調整し続けることが大切です。私はこれからも、増え続けるプロジェクトやタスクに向き合いながら、「見やすく、動かしやすく、続けやすい」仕組みを模索し続けていこうと思っています。

Asanaを有効活用した結果、問い合わせ件数が54%減少、コストも47%削減

「銀の弾丸はない」──だからこそ、Asanaで試し続ける

ここまで、Asanaを使って我が組織の生産性をどう高めてきたかについて、ほぼ全部をお話ししてきました。だけど残念ながら「これさえやれば効果が出る」という一撃必勝の技法は、実際の現場には存在しないと思っています。

ソフトウェア開発の分野で言われる「銀の弾丸はない」という言葉がありますが、これは単一の技術ですべてを解決できるような夢のような手法は存在せず、複雑な問題には地道な努力と、複数の視点からの実践が必要だという意味です。

私自身のAsanaの活用も、まさにその種の経験の結果と言えます。「AI Studioを入れたら事務がこう変わった」という分かりやすい言葉を用意できたらよかったのにと思わないこともないのですが、実際はそんな簡単なものではありません。

「たくさんの導入工夫」「現場のことを知っていること」「自分が手を動かせること」、それらを繰り返しながら、結果的に効果を生んだと感じています。

自分のスキルや思考パターン、組織内の環境や依頼される業務の性質など、その組み合わせは終わりなき検討の連続でしかありません。しかし、それを可視化し、試し、組み替え、改善し続けられる基盤として、Asanaは非常に信頼できるプラットフォームだと思っています。

私の話が、同じような課題を抱える方々にとって、何かの参考や勉強、心が楽になるヒントになれば幸いです。

Asana AI〜人間とAIが共創する 新しい働き方2024〜

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