国境を越えた協働基盤:商船三井がAsanaで築く「新しい動脈」
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■企業情報
株式会社商船三井 ■従業員数 ■取材対応者 株式会社商船三井 Executive Officer/CDIO |
■導入効果
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商船三井システムズ グループデジタル推進1部 コーディネーター 渡邊 寛人氏(左)
株式会社商船三井 Executive Officer/CDIO 慶山 順一氏(中央)
株式会社商船三井 LNG・エタン事業群 LNG・エタン第二ユニット チームマネージャー 伊東 雄大氏(右)
株式会社商船三井(以下、商船三井)は、海運を中核に、エネルギー輸送・物流・不動産など多岐にわたる事業を世界規模で展開しています。グループ経営計画「BLUE ACTION 2035」が掲げる「グローバルな社会インフラ企業への飛躍」の実現に向け、複雑かつステークホルダーが多いプロジェクトが同時並行で進む中、情報共有とプロセスの標準化が長年の課題となっていました。こうした状況の中で、同社が業務基盤の一つとして選んだのがワークマネジメントプラットフォーム「Asana」です。導入の背景から現場での活用実態、そして全社・グローバルへの展開を見据えた今後の取り組みについて、同社 Executive Officer/CDIOの慶山 順一氏と、同社 LNG・エタン事業群 LNG・エタン第二ユニット チームマネージャーの伊東 雄大氏、そして商船三井システムズ グループデジタル推進1部 コーディネーターの渡邊 寛人氏にお話を伺いました。
世界の物流を支えつつ
エネルギー輸送で新たな価値創出をめざす
商船三井は、海運を起点とした社会インフラのリーディングカンパニーとして、グローバルに約10,500名のグループ従量員を抱え、鉄鉱石・石炭・穀物などを運ぶドライバルク船から、LNG(Liquefied Natural Gas、液化天然ガス)船やタンカー、自動車専用船、フェリー・クルーズ、不動産事業まで、多岐にわたる事業を展開しています。慶山氏は「935隻の船を運行し、海運を起点に多様な事業を展開する当社では、事業や組織の広がりとともに、経営として向き合う課題も高度化しています。グループ経営計画『BLUE ACTION 2035』の実現に向け、従来の延長ではない形で、事業運営を進化させていくことが重要です。」と語ります。
こうした多角化とグローバル展開を支えるのが、同社のデジタル戦略です。CDIO(チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)である慶山氏は、DX推進やITガバナンス、経営戦略の実行、人材開発、リスク管理まで幅広い領域を統括し、業務プロセス改革と企業文化の変革を推進しています。「CDOとCIOを統合した役割として、基盤のITを守りながら、業務部門の効率化と革新を同時に進めることが、わたしのミッションです。」(慶山氏)

株式会社商船三井 Executive Officer/CDIO 慶山 順一氏
同社の強みのひとつが、保有・運航数で世界トップクラスの規模を誇るLNGです。近年はLNG輸送にとどまらず、ガスの貯蔵・再ガス化、洋上発電など、エネルギーインフラ全体を見据えた新たな事業創出にも注力しています。 LNG・エタン事業群第二ユニットでチームマネージャーを務める伊東氏は、海外顧客に対するLNG船プロジェクトの契約履行を主に担当するチームを率いています。LNG船主会社の管理に必要な幅広い業務を担い、国内外の拠点や社外関係者と連携しながら、サービス品質の向上とプロジェクト採算性の改善に取り組んでいます。
さらに、商船三井システムズの渡邊氏は、グループのICT戦略を担い、各事業部から寄せられるデジタル相談を踏まえ、コンサルティングやプロジェクトの策定・実行を推進する立場です。「大規模なグループにおける共通基盤の整備は喫緊のテーマであり、業務プロセスを可視化し、最適な形に再定義することがミッションです。」と同氏は語ります。
こうした多層的な業務と複雑なステークホルダーを抱える商船三井において、デジタル活用の鍵として期待されたのがAsanaでした。
複雑化するプロジェクト型業務
情報の分散と属人管理が限界に
商船三井では、プロジェクト型の業務が全社に広がる一方、仕事の進め方はメールやチャット、Excelなど“個々の手元管理”に依存し属人化していました。担当者ごとに情報が分散し、外部パートナーとのファイル共有が難しく、プロジェクト全体の進捗が見えにくい状況が続いていたのです。慶山氏は「営業案件として外部とスキームを構築していくプロジェクトが多く、ステークホルダーの範囲が広いため、メールやチャットのやり取りだけでは情報が追い切れなくなっていました。」と振り返ります。
LNG・エタン第二ユニットにおいて現場を束ねる伊東氏も、同様の問題を強く認識していました。LNG船の建造開始前、建造期間、運航開始後といった各ステージで求められる意思決定や課題は異なり、さらに複数の船で同時並行的に対応を求められるため、Excelなどに分散した情報では全体像の把握が困難でした。その結果、コミュニケーションコストが増大していました。
「サービス品質の向上や業務プロセスの合理化を目指すには、異なるチームの知見を集約し、ベストプラクティスとして共有することが不可欠です。しかし、特定のプロジェクトのみで問題が解決されたとしても、その知見が他案件に展開されないケースも多く、組織のナレッジマネジメントに課題を感じています。」(伊東氏)

株式会社商船三井 LNG・エタン事業群 LNG・エタン第二ユニット チームマネージャー 伊東 雄大氏
多様なステークホルダーが関与し、情報量が増え続けるプロジェクトを確実に前進させるためには、チームが同じ基盤で状況を共有しながら協働できる環境が欠かせません。こうした背景から、同チームでは業務全体を支えるプラットフォームツールの一つとしてAsanaの導入を検討することになりました。
海を起点に拡がる複雑な社会インフラ事業もシンプルに。
社内外コラボレーションを劇的に変えた、Asanaの「使いやすさ」
商船三井が当初求めていたのは、複雑なプロジェクト型業務を一元的に管理でき、社内外のステークホルダーが同じ基盤で協働できるツールです。一部のグループ会社ではタスク管理ツールを導入していましたが、製品がバラバラで横断的な連携が難しく、全社標準として活用できる環境が整っていなかったといいます。
複数製品を比較検討する中でAsanaが決め手となったのは、「外部との共同利用ができる」ためでした。慶山氏は「船主や造船会社など幅広い関係者とプロジェクトを進める当社にとって、社外と同じ画面を共有しながら協働できる点は非常に重要でした。」と強調します。また、専門知識がなくても直感的に使える操作性も高く評価されました。「実際に触ってみて、誰でも迷わず使えることが大きかったです。」(慶山氏)
運用保守の立場からプロジェクトに参画した渡邊氏も、「プロジェクトを一元管理でき、上長にも担当者にもメリットがあるツールであることが重要でした。Asanaはそのバランスが非常に優れていました。」と語ります。
広範な業務領域で成果を実感。
変革を全社に広げる「スムーズな展開」の秘密
商船三井がAsanaの導入準備に動き始めたのは2022年4月、DX共創ユニットの設置が起点でした。商船三井のグループ経営計画「BLUE ACTION 2035」を踏まえ、2035年に向けてDXを通じて目指す姿を示すMOL DXビジョンやMOL DX Action策定と並行してプロジェクト管理の設計に着手し、同年下期から複数ツールのトライアルを実施。2023年には広報やマーケティングなどコーポレート部門での利用が始まり、2024年上期には技術・デジタル戦略本部で新造船建造の進捗管理にも活用が広がりました。さらに2024年下期には事業部門での営業案件プロジェクトにおいてトライアルを開始し、2025年からはいよいよ本格利用のフェーズに入っています。
商船三井システムズの渡邊氏がプロジェクトに携わり始めたのは2024年春頃です。「内容を知れば知るほど、これは多くの業務に使えると確信しました。上手に活用できれば業務効率化や透明性向上につながるだろうと感じ、特定部門にとどめず事業部門へも展開すべきだと考えました。」と渡邊氏は振り返ります。
実際、2024年11月に事業部門トライアル、2025年2月に全社説明会、3月にはAsana社の協力も得て活用セッションを実施し、4月には利用サポート体制を整備しました。「2024年度は“ツールとしての認識”にとどまっていましたが、2025年度からは具体的に業務へ落とし込む段階に入りました。」と渡邊氏が語るように、導入プロセスは確実に加速しています。

商船三井システムズ グループデジタル推進1部 コーディネーター 渡邊 寛人氏
現場浸透のカギは
「運用の場に組み込むこと」
導入フェーズで最大の課題となったのは、現場へのシステム浸透でした。LNG・エタン第二ユニットのチームでトライアルを開始した伊東氏は「慣れ親しんだツールがある中で、多数の関係者が新しい仕組みを受け入れるハードルは高かったです。」と振り返ります。特に、プロジェクト関係者の一部がAsanaを利用していない状態では、コミュニケーションが分断されるケースもありました。
しかし、運用を続ける中で、Asana中心のワークフローが浸透するきっかけが生まれます。伊東氏のチームでは、プロジェクト管理をAsanaに集約し、2週間に1度、Asanaの画面をメンバーと共有しながら進捗を確認する運用を開始。「会議の場にAsanaを組み込むことで、徐々にAsanaによるコミュニケーションが定着してきました。」と伊東氏は振り返ります。現在はチーム内では1年以上の運用を経て定着が進む一方、海外拠点メンバーへの利用促進は引き続き課題だといいます。
さらに、伊東氏の事業群では約1年前からのトライアルを経て、最近ではLNG・エタン事業群全体(3ユニット・15チーム、東京だけで約130名、海外拠点を含めると約200名)への横展開を進めています。「今後は3カ月から半年をかけて、全員がAsanaを“当たり前に使える状態”を目指しています。事業群横断のプロジェクトや新規事業開発、既存契約履行の管理を標準化できれば、プロジェクト全体の質が向上するはずです。Asanaを活用して、より効率的な働き方を実現したいです。」(伊東氏)
船舶竣工から営業、コーポレート業務まで
Asanaが全社の共通基盤に
商船三井では現在、技術・営業・コーポレートの各部門でAsana活用が広がっています。技術部門では船舶竣工プロジェクトの工程管理に活用しており、各フェーズの進捗をマイルストーンで可視化し、一元的なポートフォリオとして把握できる体制を整えています。さらに、リスク要素を細分化・定義し、ダッシュボード化によりどこに問題があるのかを一目で確認できる仕組みを構築しました。「リスクが見えれば、すぐに対応へ動けるようになります。」と慶山氏は語ります。
そのほか、営業部門では案件管理、コーポレート部門では部門間リクエスト管理や行動計画・目標管理にAsanaを活用し、依頼業務の可視化や効率化が進んでいます。「Asanaは当社における業務標準化の中核的な役割を担い始めています。」(慶山氏)
全社1,500名が動かす「変革のサイクル」:
”できたらいいな”を当たり前の成果へ
商船三井におけるAsanaの利用はすでに広範囲へと広がっており、本社だけで50超の部門、グループ会社や関連ステークホルダーも含めると1,500名以上がアクティブユーザーとして活用しています。特にコーポレート部門やデジタル領域では利用が進んでおり、プロジェクト単位での活用がチーム運営のベースになりつつあります。一方で、営業部門の一部ではトライアル的に少人数で導入している段階もあり、利用の“濃淡”をどう均一化していくかが今後のテーマです。
渡邊氏は、導入拡大の鍵としてサポートチームの存在を挙げます。「部/チーム/プロジェクト問わず、今後利用開始したい/より効果的に使いたいという相談をいただき、業務内容のヒアリングから最適なポートフォリオ構成を検討・提案・プロトタイプ構築・BAUサポートする取り組みを、すでに30件ほど進めています。」一方で、Asanaは直感操作で使えるため、自走できるチームからは問い合わせがほとんど来ない点も特徴だといいます。「こういうことができたらいいな、というアイデアがそのまま形にできる。管理者としても非常に優れた仕様だと感じています。」(渡邊氏)
さらに、データの流れを踏まえて“押さえるべき概念”さえ理解すれば活用の幅が一気に広がる点もAsanaの強みだといいます。チームで新しい取り組みをPoC的に始めたい場合も、構成を整えれば1~2週間で運用を回し、改善サイクルまで到達できる柔軟性を評価します。
「Asanaの浸透は、単なる効率化ではなく、チェンジマネジメントに近いと考えています。新規事業のように最終ゴールが見えづらい領域でも、タスクと目標の紐付けが明確になり、現場が“自分の仕事がどの成果につながるのか”を実感できる点が大きな強みです。」と渡邊氏は語ります。全社規模での活用が進む今、Asanaは業務の透明性と目的意識を高める基盤として重要な役割を果たし始めているのです。
Asanaの魅力は
情報の構造化と業務負荷軽減にあり
渡邊氏が特に気に入っているのは、Asanaの直感的なUIと「Asana AI」です。「タスクやプロジェクト概要を入力すると必要な作業を自動で分解・作成してくれるため、これが社内にもっと浸透すれば、誰でも質の高いプロジェクト管理ができるようになるはずです」と期待を語ります。さらに、AIサマリーやポートフォリオ機能についても「各人がプロジェクトに情報を登録・更新さえすれば、各層が必要な粒度で状況を把握可能です。かつて1時間かかっていた報告作業が2分で済むこともあります。」とその効果を実感しています。
一方、伊東氏が挙げるのは「情報を構造化できる点」です。
「膨大な項目や課題を整理し一覧化できることで、現状が一目で把握でき、次に取るべきアクションの明確化や注意を払うべき事項の早期把握につながります。」と評価します。
Asanaは、チーム運営の透明性を高め、判断スピードを加速する重要な基盤になりつつあります。
Asanaで確立する、グローバル協働の新しい標準。
組織運営と業務プロセスの飛躍的な進化
Asana導入によって、商船三井では定量・定性の両面で大きな変化が生まれています。まず定量的な効果として、慶山氏は「Portfolio‐Projectの階層化設計とレポートラインの整備」「海外・グループ会社を含む業務範囲・利用部門の拡大」「教育の徹底(プロジェクトマネジメント手法とAsanaの利用方法)」の3点を挙げます。「大阪万博に向けた広報プロジェクトでもAsanaを活用しており、これまで1時間かかっていたチームの進捗ミーティングが20分程度と3分の1になりました。Asana活用により、会議そのものの進め方が大きく変わりつつあります。」(慶山氏)
また、DX領域や社内業務改善など多様なプロジェクトを抱える慶山氏自身も、AsanaのAI機能によるサマリー作成を高く評価しています。「以前は上層部向けレポートをAIでチェックしながら整える時間がかなりかかっていましたが、いまはAsanaの自動サマリーでポイントがすぐ見えるようになっています。月に一度の報告会に向けて、メンバーが2週間前から準備し、提出後に精査するという一連の作業も、情報が適切に更新されていれば数分で完了するようになりました。役職を問わず、関係者全員が幸せになれる仕組みだと感じています。」と慶山氏は笑顔を見せます。
定性的な効果としては、業務の見える化が進んだことでチーム全体のタスク共有が習慣化し、個人管理に依存していた業務が組織的に把握・運用できるようになった点が大きいといいます。メンバーが自らタスクを構造化し、可視化することで自律性が高まり、コミュニケーション負荷も軽減しました。「プロジェクトの階層管理やAIのレポートドラフトで会議の質が向上し、重要な議論に集中できる環境が整ってきました。突発で状況を聞かれた場合でも、すぐに共有できる点はAsanaならではの強みですね。」(慶山氏)
「グローバル社会インフラ企業の未来」を切り拓く:Asanaのグローバル展開と、全事業部門への変革浸透
今後1年に向けて、Asanaの利用範囲は、営業をはじめとする事業部門へと利用範囲を拡大し、海運・非海運ビジネス全体の周辺領域にも活用を広げていく方針です。
その実現の鍵となるのが、現場主体のチェンジマネジメントと伴走型のサポート体制です。「プロジェクトマネジメントの基本やシステム活用のタイミングを理解してもらうことで、社員全員がよりスムーズに働ける環境が整うはずです。」(慶山氏)。
トップダウンの後押しと、現場が「使わされている」と感じさせない担当者目線の支援の両方が不可欠です。「なにが見えれば業務が進みやすくなるか、どう使えば効果が出るのかを丁寧に伴走することで、全社的に確かな成果につながります。」(渡邊氏)。
「システム部門による強力な支えや、現場業務に寄り添うサポート環境の整備が、今後の組織的な課題解決のカギとなります。」(伊東氏)。
商船三井が進めるAsana活用は、単なる業務効率化にとどまらず、海を起点とした社会インフラビジネスの変革を後押しする原動力となりつつあります。現場に根づくプロジェクトマネジメントを磨き上げることで、同社が挑む産業構造そのもののアップデートは、これからさらに加速していくはずです。
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