グレーゾーン解消制度とは? 申請方法や事例をわかりやすく解説!

 2023.07.12  ワークマネジメント オンライン編集部

WORK INNOVATION SUMMIT 24

「グレーゾーン解消制度」は事業者が新規事業を行う際、サービス内容が法規制の適用になるかが明らかではない場合に、規制所管省庁に適用の有無を確認できる制度です。本記事では、グレーゾーン解消制度の概要や活用で得られるメリット、申請手続きの流れや書類の記載内容、制度を利用した事例を解説します。
グレーゾーン解消制度とは? 申請方法や事例をわかりやすく解説!

グレーゾーン解消制度とは?

「グレーゾーン解消制度」とは、事業者が新規事業または新しいサービスを安心して始められるよう、具体的な事業計画に従ってあらかじめ法規制の適用の有無を確認できる制度のことです。法規制の不明確な点を明確にする制度のため、「グレーゾーン解消」と名付けられています。

産業競争力強化法に基づいて制定されたもので、当該事業における法規制を担当する規制所管省庁に確認します。例えば、お弁当のモバイルオーダーサービスを提供する事業であれば「消費者庁」、勤怠管理ツールを提供する事業であれば「厚生労働省」が該当します。新規事業が規制対象となるかだけでなく、取得が必要となる許認可の有無や遵守すべきルールの存在の確認にも利用できる制度です。

グレーゾーン解消制度を活用するメリット

グレーゾーン解消制度を活用することで得られるメリットは、主に以下のとおりです。

確認する法令に制限がない

グレーゾーン解消制度は確認したい法令の数に制限がなく、新規事業に関連するあらゆる法律・法令について確認が可能です。
例えば、新規事業が国や地方自治体の行政機関との電子契約サービスであれば、「デジタル庁」「総務省」「法務省」「財務省」など各省庁が施行する法令を確認できます。

申請してから回答までが早い

確認申請をしてから回答がもらえるまでの早さも大きなメリットです。
申請して規制所管省庁から回答がもらえるのは原則1か月以内とされています。
新規事業を始める際、法規制関係の確認はなるべく早く済ませたいところですが、回答が遅延して事業開始前に法規制を確認できないといった事態は起こらないので安心です。なお、1か月以内に通知できない場合は、その理由についての通知が1か月ごとに行われます。

事業所管大臣から的確なアドバイスを受けることができる

事業計画の問題点や改善すべき点、さらに法律に抵触しないための注意点について、事業所管省庁の担当大臣より的確なアドバイスが受けられるのもメリットのひとつです。不明点・疑問点があれば事業所管省庁に相談できるので、不安な点は都度確認しましょう。また、事業者が規制所管省庁に直接確認する必要はなく、事業所管省庁を経由して規制所管省庁に法規制を確認できます。

当該事業を管轄する省庁が複数ある場合は、どの省庁からでもアドバイスを受けられます。法に詳しくない、またはどこに照会すればよいかわからない場合も、関係するどこかの省庁に確認すれば解決するので、安心して進められるでしょう。

グレーゾーン解消制度の申請方法

グレーゾーン解消制度の申請方法および申請の際の注意点は以下の通りです。

グレーゾーン解消制度の申請から回答までの流れ

申請から回答までの流れは以下の通りです。

1.照会書の作成
まず、事業所管省庁に提出する照会書を作成します。記載事項は以下の通りです。

  • 新事業活動及びこれに関連する事業活動の目標
    事業の概要および方向性、達成したい目標などを記載します。

  • 新事業活動及びこれに関連する事業活動により生産性の向上又は新たな需要の獲得が見込まれる理由
    事業によって生産性の向上や新たな需要の見込まれる理由を記載します。見込まれる需要を記載する場合には、金額や件数などの具体的な数字を用いましょう。

  • 新事業活動及びこれに関連する事業活動の内容
    新規事業の内容を記載します。事業の具体的な流れや扱う商品の仕様なども記載し、写真や図表がある場合は添付します。

  • 新事業活動及びこれに関連する事業活動の実施時期
    新規事業を行う上での具体的なスケジュールを記載します。

  • 解釈及び適用の有無の確認を求める規制について規定する法律及び法律に基づく命令の規定
    規制の根拠となる法令の名称や条文をそのまま引用し、記載します。

  • 具体的な確認事項並びに規制について規定する法律及び法律に基づく命令の規定の解釈及び当該規定の適用の有無についての見解
    新規事業についての何を確認したいのか、どの法規制についての解釈が明らかでないかを明確にします。加えて自身の見解についても記載します。

2.照会書の提出
照会書を事業所管省庁に提出します。

3.事業所管省庁から規制所管省庁へ照会書の送付
事業所管省庁より、照会書を新規事業にかかわる法を規制する規制所管省庁を送付します。

4.規制所管省庁の回答(申請から原則1か月以内)
照会書の内容に基づいて、新規事業が対象となる規制について規制所管省庁から事業所管省庁に回答が送られます。

5.回答結果の送付
規制所管省庁から得られた回答の結果が、事業所管省庁を経由して事業者に送付されます。

なお、照会書を提出する事業所管省庁が分からない場合は経済産業省に確認できます。ほか、照会書の様式や記入例は経済産業省のサイトで公表されているので、ぜひご確認ください。
経済産業省「グレーゾーン解消制度、新事業特例制度及び規制のサンドボックス制度の様式

グレーゾーン解消制度申請時の注意点

照会書の記載事項には、新規事業の内容や活動目標のほか、確認したい法律・法令の条項も記載します。
ここで注意が必要なのは、「○○法の○○条に違反するか」と具体的な記載になるため、回答はその法令に限定されます。ほかの法令について照会したい場合は別の手続きが必要になるため、何の法律・法令について具体的に確認したいかを明確にした上で申請手続きを行いましょう。

ゑびやが考える新規事業の考え方とその仕組み
プロジェクト管理スタートアップガイド

グレーゾーン解消制度を活用した事例

ここでは、グレーゾーン解消制度を利用し問題解決した事例を2つ紹介します。

生活習慣病を予防するための運動指導

フィットネスクラブの新規事業を立ち上げる事業者が、医師による指導および助言を踏まえて従業員が運動指導を行うことが「医行為」にあたるかどうかを照会した事例です。もし運動指導が医行為にあたる場合、医師法により医師以外の人物が運動指導を行うことはできません。

この法規制内容の規制所管省庁である厚生労働省に照会した結果は、医学的判断および技術を伴わない範囲の運動指導であるとして、医行為にあたらないという回答が得られました。法に詳しくなければ簡単に判断することが難しい内容のため、グレーゾーン解消制度により不明点を解消できた好例です。

WEB上での登記手続き書類作成サービス

Web上で登記手続き書類を自動で作成するサービスを提供する事業者により、当該サービスにおいて「司法書士法」に違反していないかを照会した事例です。司法書士法では、登記手続書類の作成を司法書士以外の人物が行うことはできません。

この法規制内容の規制所管省庁である法務省は、作成方法が限定されていることや個別に具体的なアドバイスをするものではないとして、当該サービスが司法書士法に違反するものではないという回答を行いました。計画しているサービスの範囲から解釈が明らかではなく、グレーゾーン解消制度が活かされた事例です。

まとめ

グレーゾーン解消制度は、事業における新しいサービスが法規制の適用に当たるかを確認できる制度です。確認できる法令に制限がなく、事業を管轄する省庁から適切なアドバイスが受けられるというメリットがあります。原則1か月以内に回答が得られるため、サービス開始に大きな影響を与えません。

申請する際は照会書の作成が必須であり、事業の概要や目標、具体的な流れ、スケジュールなども記載します。注意点として、提供するサービスがどの法規制についての解釈が明らかでないかを明確に記載する必要があり、自身の見解も必要です。一方、回答は記載した法令に限定されるため、ほかの法令についても照会したい場合は、別途手続きを行いましょう。

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