職業性ストレスモデル DCS(JDC)とは? 企業が知っておくべき社員の健康

 2021.03.24  2022.08.17

多くの労働者は職場においてさまざまなストレスに晒されています。そしてその職業性ストレスは労働生産性を低下させ、ときには心身の健康を阻害してしまうこともあります。本記事では、職場におけるストレスの原因を解説しつつ、企業が従業員にすべき心身のケア「ソーシャルサポートDCS」について紹介します。

職業性ストレスモデル DCS(JDC)とは? 企業が知っておくべき社員の健康

企業が知っておくべき職業性ストレスの定義

労働現場において、従業員はさまざまなストレスに直面しています。厚生労働省が2018年度に実施した「労働安全衛生調査」によると、仕事に関して高いストレスを抱えている従業員の割合は全体で58%とされており、ここ数年間一貫して過半数を超えていることが示されています。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h30-46-50_gaikyo.pdf

病気や借金、家庭内や友人関係におけるトラブルなど、プライベートにおいて受けるストレスと区別して、職場で受けるストレスのことを「職業性ストレス」といいます。ストレスを引き起こす原因は「ストレッサー」と呼ばれ、職業性ストレスのストレッサーとしては転勤、昇進、配属先の変更といった新しい環境への不適合に起因するストレスを始め、職場でのハラスメントや上司への不満、あるいは長時間労働を始めとする労働環境への不満が挙げられます。

また、職業性ストレスの定義の中には、職場で直接的に受けるストレスだけではなく、職場環境に起因して悪化した個人的なストレスも含まれます。例えば連日の残業によって家族との時間が持てずに不和になったという場合、そのストレスの大元はやはり職場にあると言えるでしょう。

強度のストレスが長く続くと心身の健康に異常が出る可能性もあるほか、ストレスの大きさと労働生産性の低下には相関性があることも知られています。企業は福利厚生の面でも業務効率化の面でも、社員のメンタルヘルスケアに積極的に取り組む必要があるのです。

職業性ストレスモデルDCS(JDC)とは?具体的な意味

職業性ストレスがどのようなストレッサーに起因して生じるのかを系統的に説明した「職業性ストレスモデル」というものがあります。職業性ストレスについて考えるにあたって、ここではまず、代表的な2つの職業性ストレスモデルについて紹介します。

職業性ストレスモデル1:JD-Cモデル(DCSモデル)

最初に紹介する職業性ストレスモデルは、スウェーデンで産業ストレスについて研究しているカラセック氏が1980年代に提唱したJD-Cモデルです。

JD-Cとは、“Job Demand-Control model”の略称で、日本語にすると「仕事の要求度-コントロールモデル」を意味します。その命名に示される通り、カラセック氏は、職業性ストレスは「仕事の要求度」と「仕事のコントロール」という2つのストレッサーの組み合わせによって構成されると考察しました。

簡単にいうと、「仕事の要求度」とは、仕事の量や質または納期などのストレッサーです。これが高ければ高いほど強いストレス反応を引き起こします。一方の「コントロール」とは、従業員がその仕事に対して行使できる知識や能力、そして自由裁量権を意味するものです。このコントロールに関しては先ほどとは逆に、高ければ高いほどストレスが低くなると考えられます。

つまりカラセックモデルにおいては、(1)「低要求度+高コントロール」、(2)「高要求度+高コントロール」、(3)「低要求度+低コントロール」、(4)「高要求度+低コントロール」という4つのストレス状況が存在することになり、(1)が最も職業性ストレスの低い状態、(4)が最も職業性ストレスが高い状態であると解釈できます。

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JD-Cは、職業性ストレスは単に労働量だけに起因するのではなく、従業員の裁量権の多寡によっても左右されることを指摘している点で、職業性ストレスについて重要な示唆を与えるものです。つまり、JD-Cに即して極論をいえば、経営者と末端の従業員が同じ分だけ働いたとしても、企業における最高の裁量権を持つ経営者と、指示される側の従業員とでは仕事において受けるストレスがまったく異なるということになります。

このJD-Cの発展形としては、DCSモデルという職業性ストレスモデルも存在します。DCSとは”Demand-control-support Model”の略で、日本語にすると「要求度-コントロール-社会的支援モデル」を意味します。DCSのひな型はJD-Cですが、そこにソーシャルサポートの有無をストレスの緩衝要因として追加し、社会的支援が少なければ少ないほど高いストレスや健康障害が発生しやすくなることを示しています。

職業性ストレスモデル2:NIOSHモデル

NIOSHモデルとは米国職業安全保健研究所(NIOSH)の提唱する職業性ストレスモデルで、先の2つのモデルよりもさらに複雑に職業性ストレスを分析したものです。下記のモデル図に見られるように、このNIOSHにおいては、仕事のストレス要因が具体的なストレス反応を引き起こし、疾病に至るまでには仕事のストレス以外にも、3つのストレッサー(個人的要因・仕事以外の要因・緩衝要因)が影響を与えていることが示されています。

まず、「個人的要因」の内実としては、年齢や性別、性格、自己評価、婚姻状況、勤続年数や職種など、個人に内属する特性が挙げられます。次に、「仕事以外の要因」としては、友人・恋人・家族との関係など、私的な生活環境が挙げられます。最後の緩衝要因とは、簡単にいえば周囲からの適切な援助を期待できる状況の有無です。

NIOSHにおいては、上記3つの要因が仕事のストレスと組み合わさることで、その人固有のストレス状況が生まれると捉えられます。このNIOSHは、人のメンタルヘルス状況が複合的な要因によって構成されていることを示し、同じ労働環境にあっても個人個人で感じている精神的負荷がさまざまに異なることを説明可能にしているのです。

第3のモデルJD-Rとワーク・エンゲイジメントについて

近年注目を集めている職業性ストレスモデルとして、上述のJD-CやNIOSHをさらに発展させたJD-Rモデルの名が挙げられます。以下では、JD-Rと、それに関連するワーク・エンゲイジメントについて解説していきます。

JD-Rモデルとは

JD-Rモデルは“Job Demands -Resource model”の略で、日本語にすると、「仕事の要求度-資源モデル」と訳せます。ここでいう「資源」とは、「仕事の資源」と「個人の資源」に分けられ、ストレスに対するさまざまな緩衝要因がここに含まれます。

例えば、前者の「仕事の資源」においては、JD-Cでも見た従業員に与えられた職務上の裁量権に加えて、上司からの肯定的評価や周囲からのサポートなどといった要素も含んでいます。さらに、「個人の資源」においては従業員が持つ楽観性やレジリエンス、自己肯定感などが考えられています。

JD-Rにおいても、要求度が長ければ高いほど従業員が大きなストレスを受けるという基本構造は変わっていません。特に、資源を活用できない状態で要求度の高い仕事をこなさなければならなくなった場合、従業員が心身のバランスを崩しやすいと言われています。

したがって、JD-CのコントロールやNIOSHの緩衝要因と同様に、にこのストレスを緩和するには資源を多くすればいいということになります。しかしJD-Rの中には、この2つのモデルにはないより積極的な側面が存在することを指摘せねばなりません。つまり、JD-Rにおいては、要求度の高い仕事を多くの資源を用いて遂行した場合、仕事に対する「ワーク・エンゲイジメント」が向上する可能性が指摘されているのです。

JD-Rとワーク・エンゲイジメントの関係

ワーク・エンゲイジメントとは簡単にいうと、従業員が仕事に対して持つやりがいや熱意を意味します。つまり、「要求度の高い仕事を多くの資源を用いて遂行するとワーク・エンゲイジメントが向上する」とは、平たく言えば、「困難な仕事を周囲のサポートを得ながら達成したとき、仕事にやりがいを感じる」ということを意味します。

JD-Rが主張するこの考えは、実経験に照らしてみたとき頷ける方も多いのではないでしょうか。JD-CやNIOSHにおいて、緩衝要因はあくまでもストレスというマイナスをゼロに近づけるような意味しか持っていませんでした。

しかし、JD-Rにおいては、適切なサポートが従業員に用意されていれば、従業員は困難な仕事においてもポジティブな感情を持つ、という積極的な意義が付与されているのです。

職業ストレスの改善に企業は何をすべきか!

上記のように、JD-Rモデルにおいては、要求度の高い仕事が必ずしも従業員にネガティブな影響を与えるばかりでないことが示されています。とはいえ、要求度と資源のバランスが不均衡になれば、やはりそこで職業性ストレスが重くのしかかってくることは変わりありません。すなわち、従業員が高い労働生産性と心身の健康を両立するためには、企業からの積極的なサポートが不可欠であることが示されています。

従業員が深刻な職業性ストレスを背負わないようにするためには、企業によるストレスマネージメントが非常に重要です。厚生労働省は従業員のこころの健康を守るため、2015年 に職場でのストレスチェック制度を創設し、企業に従業員のメンタルヘルスケアに積極的に取り組むように促しています。

引用元:https://www.mhlw.go.jp/content/000561005.pdf#page=2

そのために企業ができることとしてまずは、従業員と上司とで1on1面談を行うためのコミュニケーションの場を定期的に設けることが挙げられるでしょう。ほかにも、産業医や保健師、カウンセラーなどの専門家の協力を仰いで、ストレスの溜まりにくいような労働環境・労働体制を構築する努力を進める必要があります。

適切なストレスマネージメントは、従業員の心身の健康を守ると共にワーク・エンゲイジメントの向上を促します。これにより、仕事にやりがいを感じながら高い労働生産性を発揮するよう、従業員を助けていけるのです。

まとめ

本記事では職業性ストレスとは何かという基本的定義をはじめ、数種類の職業性ストレスモデルと企業が取り組むべきストレスマネージメントについて解説しました。各職業性ストレスモデルに示されているように、従業員の職業性ストレスは単純な労働量によってのみ決定されるわけではありません。適切な裁量権やサポートを与えることで、ストレスは大きく軽減されるばかりか、ワーク・エンゲイジメントを高めることもあるのです。

つまり重要なのは、従業員の抱える仕事の状況について、管理職をはじめとする周囲の人間が的確に把握し、必要に応じてサポートできるような体制を整えることです。

Asanaのワークマネージメントツールは、各従業員の抱えている仕事内容や進捗状況を「見える化」し、チームで問題を共有することを助けます。各従業員に必要なサポートを迅速に届けるために、ぜひAsanaのビジネスツールの導入をご検討ください。

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