何度でも挑戦し、小さな成功を積み重ねる
鹿島建設横浜支店、業務改善タスクフォースの挑戦

 2022.07.19  2022.08.04

最先端の建設技術でトンネル、橋などの交通インフラや超高層ビルなど、日本の社会基盤を担う数多くの事業を手がける鹿島建設では、建設業界全体でも課題になっている業務の効率化、生産性の向上に向けた数々の取り組みを行っています。中でも、横浜支店では、現場レベルで有志が集まり、施工管理における長年続いてきた古いプロセスや慣習の効率化をAsanaを活用し実現しました。

有志から変革が進んでいく道のりはどのようなものだったのか伺いました。

■企業情報

鹿島建設株式会社 横浜支店

■従業員数

131人(横浜支店の土木部門における従業員数)

■導入効果
  • 施工管理業務のペーパーレス化で、必要な情報をいつでもどこにいても確認可能に
  • 大規模な工事現場でも、作業履歴を含めた精度の高い進捗管理が可能になり、確認業務が大幅に効率化
  • 現場業務の管理をAsanaに一本化し、他のコミュニケーションツールとの使い分けを実現
  • 現場の安全指示事項や施工方法の相談などをAsanaで迅速に報告確認可能に

業務管理に課題を抱えた現場

建設業界では、人手不足への対応や工期の短縮、作業者の就労環境改善などのため、業務の効率化、生産性の向上が求められています。大手ゼネコンの鹿島建設は、最先端の建設技術でトンネル、橋などの交通インフラや超高層ビルなど、日本の社会基盤を担う数多くの事業を手がけてきました。その一方で、建設現場の施工管理や業務効率化については、デジタル技術の導入が進められているものの、長年使われてきたプロセスが多く残っており、改善に向けた努力が続けられています。

そんな中、全国12の支店の中で、いち早くデジタルによる業務管理を進めているのが、横浜支店の土木事業部門です。同支店では、横浜のトンネル工事や地下鉄工事を行う鹿島建設中心のJV(ジョイントベンチャー)などで、施工管理業務にワークマネジメントプラットフォームのAsanaを導入。それまでの紙のノートによる台帳管理から、スマートフォンなどで場所を選ばず工事の進捗を確認し、情報共有できる仕組みを確立しました。

Asanaの特徴と優位性
Asana Way of Change

「伝統のA3ノート」からの脱却

鹿島建設横浜支店では、現在16ほどの土木作業現場を運営・管理しています。その中でも横浜のトンネル工事は、最大で60名程度の施工管理者が常駐する大規模な現場です。現在は昼夜交替制で業務にあたっており、24時間トンネルを掘り進めています。

 施工管理者の役割は、前日に行われた作業がどこまで進んでいるかの確認と、その際の問題点などの情報を隈なく引き継ぎ、当日の作業者にそれを周知することです。横浜のトンネル工事事務所で次長を務める板橋信男氏は、その業務を次のように語ります。

「昼夜でトンネルを掘り進んだり道路を造成する土木作業の現場は、夜間作業の進み具合を常に目で見て確認することができません。そのため、作業の引き継ぎ事項を、記録を頼りに確認し、当日の作業分担を決めていきます」

板橋 信男氏板橋 信男氏

同社では従来、業務の引き継ぎに大判ノートを使っていました。毎日の作業終了時に、施工管理者が当日の作業を書き込み、現場を撮影した写真をプリントして、作業記録の横に貼って帰ります。この台帳が、作業の進捗を全て記録した、司令塔の役割を果たしていました。

過去20年以上、ノートを中心にした伝統的な施工管理が続けられてきました。現場の通常業務は朝8時から夕方17時までですが、施工管理者は朝7時ごろには現場事務所に入り、このノートを確認することが日課となっていました。毎朝、各担当者が1冊のノートを奪い合いながら前日の作業を確認し、必要なら紙のコピーをとってから現場に散っていく、という作業を繰り返していました」(板橋氏)

 ノートには書き込みだけでなく、引き継ぎを受けた人が「確認した」という署名も記入していました。メモを書き込んだり、資材のやりとりなども記録されており、紙の上で作業の進捗がわかるようにルールが決められていました。作業内容をメールで送る担当者もいましたが、それではノートの情報に漏れが生じてしまうため、メールと同じ内容をノートにも書くことが求められていました。ノートの存在は、絶対だったのです。

施工管理ノート

 情報がこのノートに集約されるほど、ノートが置いてある事務所へ通うことが避けられなくなり、事務所に縛られた業務を強いられることになりました。「施工管理の担当者は、現場を定時で動かすために、コアタイム前後の時間外業務が必ず発生する状況から逃れることができませんでした」(板橋氏)

 この状況をなんとかしたい。そう考える現場は横浜のトンネル工事だけではありませんでした。奥田一馬氏が所属する横浜の地下鉄工事の現場では、一時期ノートをやめて表計算ソフトによる運用をテストしました。ですが、それはうまくいきませんでした。ソフトのスキルが人によってばらついていて、日付の形式を間違えたり、画像の貼り付けに苦労する人が続出。メール添付による運用も混乱し、結局、ノートの運用に戻さざるを得ませんでした。

 次に試したのが、同社で全社導入していたコミュニケーションツールによる運用でした。社内の情報共有はなんとか可能でしたが、JV(ジョイントベンチャー)を構成する外部企業との連携には制約が多く、操作のレスポンスもよくありませんでした。同じく社内で利用できる状態になっていた別のツールも試しましたが、これも定着しませんでした。追加料金なしで使えた半面、人的なサポート契約がなく、ユーザーが使い方を自分で学ばなければ使うことができませんでした。これらの試行錯誤は、2020年の春に立て続けに行われましたが、どれも成功しませんでした。

なかなかいいツールを見つけることができずにいた土木チームでしたが、ついに、これは使えそうだというツールに出会います。それがAsanaでした。

 Asanaはなぜ支持され、どのような経緯で導入されたのでしょうか。それを知る時に欠かせないのが、横浜支店の有志メンバーが進める生産性向上タスクフォース」の活動です。ここからは、タスクフォースの活動内容と、その中で交わされた議論をご紹介し、同社の業務改善とAsanaの役割を明らかにしていきます。

業務改善タスクフォースの挑戦

横浜支店のタスクフォースがスタートしたのは2019年で、発足から丸2年になります。その原点は、5年ほど前から本社で行われていた鹿島建設土木部門としての生産性向上推進タスクフォースでした。全国の支店から問題意識を持った社員を本社に集め、業務の課題を挙げて議論する場です。横浜支店からは板橋氏と、現在横須賀の現場で工事課長代理を務める外山和仁氏の2名が参加していました。

「本社のタスクフォースは全社的なテーマが中心で、現場に近い個別の課題を共有する場ではありません。それなら、支店単位でもやってみようと思うようになりました」(外山氏)

 その考えを一気に進めたのが、板橋氏と外山氏が経験した、米国シリコンバレーでのイノベーション・ブート・キャンプ(研修体験)でした。「現地ではデザイン思考等、イノベーションに必要な様々なアクティビティを行いましたが、そこで衝撃を受けました。失敗しないための検討でなく、『いくつ失敗をしたか』が重要であることなど、多くを学びました。帰りの飛行機の中、2人で『日本に帰ったら自分たちもはじめよう』と盛り上がり、帰国後、すぐに企画書を作成し、支店幹部に直訴しにいきました」(外山氏)

外山和仁氏外山和仁氏

2人の提案に、支店幹部もすぐに反応しました。土木部生産計画グループ長の相沢旬氏は、「そのころ支店には、ITを使って生産性を改善せよという指令が本社から出されていました。RPAやチャットボットを使ってどうすれば業務改善ができるのか、一から勉強し、一部で実験を始めていたところでもあり、業務改善の機運はありました。そのため、支店版タスクフォースの提案があった時、まさに目指す方向性と一致していたため、すぐに採用しました」と話します。

土木部生産計画グループ長 相沢旬氏土木部生産計画グループ長 相沢旬氏

横浜支店のタスクフォースは、毎月1回の定例会議で、ワーキンググループごとに活動報告を行っています。さまざまな業務の改善、作業効率化が議論され、テーマはITに限りません。ですが、課題を検討していくと、最終的にITの課題に行き着くことが多いといいます。

またこの会議は、進行にも特徴があります。各メンバーの発表後、他のメンバーが意見や改善提案をコメントしていく時間を必ず設けています。「一般的な会議では、一方的で面白くないことが多いですが、我々の会議では、必ず意見交換の時間を入れます。この進め方もブートキャンプで学びました。そのため発表する方も聞く方も、楽しく前向きな話になりやすいと思います」(板橋氏)

「タスクフォースがスタートした時に、若手もベテランも、フラットに会話ができるようにしようと決めていました。それが今日まで続いているため、自由な意見のやりとりができているのだと思います」(外山氏)。

横浜支店のタスクフォース

2年間のタスクフォースの活動ではさまざまな課題解決の議論が交わされ、直近の1年間だけでも30近いテーマが取り上げられました。

その一つが、難航していた施工管理業務の効率化でした。それまでの取り組みが何度も失敗していたことは、会議で共有されていました。次のチャレンジとして、板橋氏がAsanaの導入を提案。まずは試してみようということになりました。そして、1カ月の無料トライアルを一部の現場で導入してみると、これならいけるのではないかということになり、本採用を決めました。

なぜ、これまでいくつかのツールでうまくいかなかった施工管理のデジタル化が、Asanaでは実現できたのでしょうか。担当者の声を聞きました。

マニュアルを見なくても直感的に使える

同社では、Asanaのどこに魅力を感じたのでしょうか。タスクフォースのメンバーでもあり、横浜のトンネル工事で導入を主導した、工事事務所所長の辻裕幸氏は振り返ります。

「第一に、画面のわかりやすさです。これまでのタスク管理ツールは、自分自身の備忘録的には使えても、人と共有するのは難しい印象がありました。Asanaは、メンバー間のタスク共有や引き渡しなどが非常にわかりやすく、積極的に使うメンバーを増やすことができました

辻氏は特に、タスクを後から確認できる機能が便利だといいます。「業務の進捗を管理することも楽ですし、自分がやるべきことも、漏れがなく確認することができるので、自分自身のタスクも、組織のタスクもしっかり管理ができると感じました。また、サポートにも満足しています。週に1回など、定期的に困りごとがないか連絡があり、話をする中で理解を深めることができました」

辻裕幸氏辻裕幸氏

奥田氏も、「初めてAsanaを触った時、マニュアルを見なくても使える直感的なインターフェースが印象的でした。これなら他の人もマニュアルを見なくても使えそうだと思いました」と語ります。

Asanaの導入は、それぞれの現場で可能なところから始まりました。「施工管理者は、タスクフォースのメンバーを中心に作業指示ノートの運用をAsanaに切り替え、工事の現場では、その日すべきことをAsanaにどんどん入力していきました」(板橋氏)。従来のノートと並行して運用すると、かえって現場が混乱すると考え、Asana導入と同時にノートの使用は中止したそうですが、切り替えはスムーズに進んだといいます。

スマートフォン版のAsanaの画面

「早朝に事務所に立ち寄る必要がなくなり、現場に向かうバスの中で前日の作業の進捗や申し送り事項が確認できるようになりました。現場の写真も、夜勤明けの担当者がヘトヘトになりながら現場から事務所に行って印刷していたものが、現場から直接Asanaに入れることができるようになったため、施工管理担当者の負担は大幅に軽減しました」(奥田氏)

奥田一馬氏奥田一馬氏

業務の情報は全てAsanaに集約、他のツールと使い分ける

テスト導入が成功し、Asanaは横浜支店の他の土木現場にも利用を広げています。「ある現場では、根っからのアナログ人間だった人が、Asanaを使い始めた途端、態度が急変。『さっきAsanaで送ったけど見た?』と言ってくることもあります。むしろ、これまで新しいツールに苦戦していた人ほど、反応がいい。それぐらいAsanaはとっつきやすいようです。現場への浸透は、想定以上に早いと感じています」(板橋氏)

課題の一つだった、複数の企業が集うJVの現場でも、Asanaの情報共有は威力を発揮しています。「横浜のトンネルの現場は、鹿島が20名、他社が40名ほどですが、社外のメンバーでも一瞬でつながることができるため、スムーズにコラボレーションを始められます。当社が有料プランを持っていれば、社外のメンバーは全て無料で使える料金体系であるため、業務で使うためのハードルが低いこともメリットです」(板橋氏)

このトンネル工事では、すでに施工管理に加えて安全管理、コスト管理などもAsanaによって運用しています。「現場の業務管理が、ほぼ全てAsana上に置き換えられました。複数のタスクを抱えていても、リマインドされるので忘れなくなったことが、一番ありがたいと思っています」(辻氏)。業務に関する連絡や情報共有は全てAsanaに集約することで、他のコミュニケーションツールとの役割分担が明確になり、情報の内容によってツールの使い分けが進みました。

小さな成功体験を積み重ねることが大事

板橋氏は、新しいツールの導入を成功させるには、小さな成功を積み重ね、横に広げていくことが非常に重要だと話します。「Asanaにはタスク完了時に 『ユニコーン、イエティ、イッカク、フェニックス』という4種類の架空の動物が祝福しながら画面を横切っていく仕掛けが仕込まれています。次にタスクを完了した時、何が出てくるかを楽しみにしている人が多いようです。こうした仕掛けを通じてモチベーションを上げて、次の仕事に臨むことができます」

また、従来は管理者が進捗を管理するために、現場の業務を中断させるようなことも起きていたそうですが、Asanaを使うことでその必要はなくなりました。現場にも負担をかけず、業務が見える化できていることが全体の効率化に寄与していると、辻氏は感じています。

Asanaを使って進捗管理を行う様子

必要な情報がオンラインで共有できるようになったため、対面のコミュニケーションをより有効に使うことできると板橋氏は言います。「今でも、現場でメンバーが集まって話した方がいい場合は、直接集合をかけます。ですが、リアルに集まるのは時間を取られますから、どうしても必要な時に限って行うようにして、それ以外はAsanaを使ってできる限り補完している形です」

今後は、現場での使用をさらに浸透させていきたいと辻氏は語ります。「例えば現場の担当者が、購入したい資材があった時、その情報をAsanaに入れてもらえば、管理者が検討して返信することができます。そうしたやりとりが全て見えるようになったのが、Asanaを入れた大きなメリットだと思います」。タスクフォースでは、こうしたメリット、ノウハウを共有し、横浜支店の他現場にもAsanaの利用拡大を呼びかけています。

長年使ってきた仕組みを壊し、新しいルールを作っていく作業は抵抗が大きいため、多少の問題があっても目をつぶる組織が多いはずです。鹿島建設横浜支店では、なぜ業務変革を成し遂げることができたのでしょうか。

板橋氏は、成功の要因を「一人称で考える」ことだと話します。自分は関係ないという人の意識を、いかにして自分事に変えられるかが重要だと言うのです。「横浜支店では、タスクフォースを中心に、同じ考えを持つ仲間が増えてきたので、組織のマインドもかなり変わってきたと思います。あとは、まだハードルが高いと思っている人に対して、親身になってフォローする体制作りが必要です。これは、小さな集団で進めたほうがいいと思っていて、今、その方策をメンバーで練っているところです」

鹿島建設横浜支店は、タスクフォースによる組織を越えたコラボレーションで、Asanaによる施工管理のデジタル化の足掛かりをつかむことができました。ですがここで止まることはありません。2021年度はさらにメンバーが増え、業務改善の議論が活発になりそうです。トンネルを掘り進むように、一歩ずつ前進していくことでしょう。

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