平準化とは何か? 業務改善の方法とヒントを解説

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2024年2月28日
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概要

「平準化」を適切に行うことで、プロジェクトを計画通りに進めたり、業務を改善できたりします。では、平準化とは何でしょうか?この記事では、平準化の意味とメリット、実践時のポイントを解説します。

更新: この記事は業務量平準化の原則に関するさらに詳しい記述を含めて 2024年 1月に改訂されました。

プロジェクトが計画通りに進まず、リソースの不足やタスクの遅延が発生した場合、成果物に影響が及ばないよう対策が必要になることがあります。そんな時に活躍するのが平準化です。平準化を実施すれば、タイムラインを調整しなおし、手持ちのリソースを有効活用してプロジェクトをゴールに導けます。この手法を使えば、プロジェクトの目的と目標を満たすために適宜にリソースを割り当てられます。

平準化には、確かなマネジメントスキルと個々のプロジェクトのニーズに関する深い理解が必要です。この記事では、リソース平準化と業務量の平準化のプロセスを実践例やベストプラクティスを交えて解説します。

平準化とは?

日本工業標準調査会 (JISC) によれば平準化 (標準化) とは「自由に放置すれば、多様化、複雑化、無秩序化する事柄を少数化、単純化、秩序化すること」と定義されています。(日本工業標準調査会「工業標準化について」より抜粋)

ここで言うところの「多様化」「複雑化」「無秩序化」の意味やその問題点を業務に置き換えて考えてみましょう。

① 多様化

同じような仕事であっても人、グループ、部門、拠点が各々やりやすい手順で遂行している状態のことを言います。

各々が独自のフォーマットや方法で情報を管理しており、メールや電話などでそれを後続に伝えることで業務が成立しているため、こうした状態で業務量が増えると、伝達漏れやミスが発生しやすくなります。

② 複雑化

各々がやりやすい独自の方法で仕事を進めていて、他者には理解できない業務プロセスが確立している状態です。

属人化が始まると特定の従業員しか業務を遂行できないため、辞職や異動のたびに多くの問題が発生します。

③ 無秩序化

状態が悪化すると仕事にルールが無くなり、やるべき事・やってはいけない事の線引きが曖昧になります。

場所、時期、人、グループ、部門、拠点によって「やったりやらなかったり」が起き、製品やサービスの品質の問題が生じる可能性が出てくる状態です。最終的には粗悪な製品やサービスを提供することになり、情報漏えいなど重大なセキュリティ事件も起きやすくなります。

こうして文面に起こしてみると、平準化できていない環境では実は様々な問題が発生しやすい状態になっています。以上の問題を回避するためにも早急な取り組みが必要です。

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業務平準化とは?

「業務平準化」とは、ある一定の時期や社員に集中して偏りが出ている業務を、できる限り均一にすることをいいます。業務および業務量が一点に集中している状態は、人的リソースを有効に活かしきれていないことを示すため、速やかな改善が求められます。業務平準化を行うことで、リソースを最適化し、会社全体の生産性の向上が期待できるでしょう。

ビジネスシーンでよく聞かれるこの「平準化」ですが、もともとは製造業において「さまざまな種類の製品を均等に生産すること」を指す用語として用いられていました。

製造業における平準化の代表が、トヨタ生産方式でお馴染みのジャストインタイムです。現在では製造業以外でも使用される言葉で、一般的には「業務の平準化」という使われ方をします。ここで言う業務の平準化とは、従業員の業務量を均等にするという意味で、すべての社員の作業やタスクの負担、労力やストレスも把握したうえで業務量を均一にしようとすることを言います。


業務の平準化は従業員の働き方改革にも通じるものがあり、結果的に仕事の効率化や生産性の向上が期待できます。また、業務の平準化を試みることで、チームの仕事量を見える化することも可能となります。

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業務平準化ができていない場合のデメリット

業務および業務量の平準化ができていない場合というのは、たとえば「〇〇に関する業務は、〇〇さんでないと進められない」「〇〇さんは業務量が多いのに、△△さんは手持ち無沙汰になっている」「顧客から問い合わせがあったが、担当でないため答えられない」といった状態です。このような状況には、さまざまなデメリットがあります。

まず、特定の社員しか業務を進められない状況を「業務の属人化」といいますが、この属人化が起こると、担当社員の不在時に業務が滞ってしまい、全体的な工程が遅れたり、現場が混乱したりするなどのトラブルが発生します。

当の担当社員も、「自分が休むと業務がまわらない」という責任感から休暇を取りにくくなり、長期的に不満を溜め込んでしまう可能性が高まるでしょう。「自分は忙しいのに、〇〇さんは余裕がありそうだ」といった具合に、社員同士の分断にもつながりかねません。人件費の観点からしても、特定の社員に集中して残業代が支払われるような状況は非合理的です。

また、特定の社員に業務が集中してしまうと、その業務がいわゆる「ブラックボックス」になるおそれもあります。誰も指摘しないまま非効率な作業が続けられたり、ミスを隠ぺいしてリーガル的な問題に発展したりする場合もあるので、業務のブラックボックス化には注意が必要です。

業務量を平準化するために必要な 6 つの原則

業務平準化の 6 つの原則

それでは業務量平準化を進めるために必要な具体的な原則について紹介していきます。

【はじめに】マニュアルの作成

業務平準化においては、まず一連の業務に関するマニュアルの作成が基本です。業務に関する一連の流れと手順を棚卸しして、誰にでもわかるように可視化しましょう。日々のルーチンワークはもちろん、イレギュラーな業務も同様です。考え得る限りすべての業務を洗い出し、その過程で各プロセスにて発生している「ムリ、ムダ、ムラ」を抽出すると、より洗練されたワークフローを構築できます。

その後、一連のマニュアルを作成して、それさえ見れば誰でも作業を行えるようにしておきましょう。そうして属人化を避けておけば、メインでその業務を担当している社員が不在や休暇などの場合、あるいは離職した場合でも、スムーズに引き継ぎを行えます。

また、日本では「人に仕事をつける」という方式が広く採用されていますが、「仕事に人をつける」という方式を採用するのも、属人化を避けるためには有効です。マニュアルを作成する過程で、特定の社員だけが多岐にわたる作業を行っていると判明した場合、その作業を特定の社員からいったん切り離し、別の社員にアサインするのがよいでしょう。そうすることで、業務量の偏りの是正につながります。

マニュアルの作成後は、それに沿って実際に作業を行い、マニュアルに不備がないか、マニュアルは補足なしでも機能するかなどをよくチェックしておきましょう。

原則① 小さく始めて大きくする (スモールスタート)

ビジネスや IT システム導入など、あらゆる面で基本なのが「スモールスタート」です。特に初めての取り組みではいきなり大規模に実施してしまうと失敗する可能性が高くなるため、最初は小さく始めることが肝要になります。

業務平準化においては、特定の部門と特定のグループを定め、まずは小さい範囲で業務平準化に取り組んでいきます。できればそうした取り組みに積極的な従業員を複数人集めて取り組むと、より高い効果を得られるでしょう。そこで得たノウハウを基に徐々に業務量平準化を拡大していくことで、最終的には組織全体に平準化を浸透させます。

原則② 業務量を調査する

業務平準化のためにはまず業務量を調査することが大切です。業務量調査とは「どんな業務が」「どの時点で」「どれくらい発生し」「どんな頻度か」を視覚的に表すことを意味します。この業務量調査で重要なのは可能な限り正確な情報を収集することです。そうすることで、作業配分や人員配置のどこにムリ、ムダ、ムラがあるのかを把握できます。

また業務量の調査は、それぞれの作業の適正な所要時間やコストを算出するうえでも役立ちます。一人ひとりの業務をしっかりと把握することは、特定社員への業務の偏りを解消する第一歩といえるでしょう。加えて繁忙期や閑散期の業務量も把握しておけば、人的リソースを最大限活かすことにもつながります。

業務量を可視化する方法としては、データ・数字などを直接的に観測する「実測法」、業務量を自己申告してもらう「実績記入法」、勤務時間から逆算して業務量を調べる「推定比率法」などがあります。どの調べ方が適しているかは作業によるため、場合によっては複数の方法を組み合わせるなどしながら、ベストな調べ方を検討してください。

原則③ 非定型業務を定型化する

非定型業務とは定量的に表しにくい業務のことで、生産計画や調達計画の立案、各部署との日程調整、営業担当者の商談などが挙げられます。こうした非定型業務は利益につながりやすい反面、平準化しづらいという側面を持つため、可能な限り定型化することが重要です。業務量が偏り過ぎているような企業では決まって非定型業務が多く存在し定型化に取り組んでいません。

原則④ 無くす、減らす、変えるの視点で考える

業務を平準化する上で大切なことが既存の業務プロセスに存在する「無駄」を排除することです。無駄が存在する状態で平準化しても効果は薄くなり、それまでの労力の半分は水に流れてしまいます。そこで「無くす」「減らす」「変える」という3つの視点で業務の無駄を排除していきます。 

  • 無くす: 業務そのものを無くす、やめる

  • 減らす: 業務の処理回数、処理量を減らす

  • 変える: 業務の一部、あるいは全部を変える

無くすことは一番簡単な方法です。歴史ある企業ほど「この業務って何のためにあるの?」と疑問に思うような業務が存在します。過去には必要だったが今では習慣的に行われているという原因が多いでしょう。

減らすことは処理回数や処理量を減少するために業務を統合したり、あるいはシステムで代用するなどの方法が考えらえます。

変えることは一番難しい方法ですが、場合によっては無くすこと以上に高い効果を得られることもあります。

原則⑤ 業務プロセス間のつながりに着目する

前述のように業務平準化に取り組むにあたっては、業務プロセス間の繋がりに注意しましょう。たとえば、一見独立している複数の業務プロセスも、意外な所でつながっている可能性があります。業務プロセス A を変更すると業務プロセス B に影響が出る、といったつながりを理解していないと、せっかくの平準化も無駄になってしまいます。

原則⑥ PDCA サイクルを回し継続的に平準化していく

最後に大切な原則が「PDCA サイクルを回すこと」です。PDCA サイクルとは「Plan (計画)」「Do (実行)」「Check (評価)」「Act (改善)」というプロセスで物事を改善していくという、ビジネスではお馴染みのフレームワークです。戦後の日本における製造業の発展は PDCA サイクルへの取り組みが支えたといっても過言ではないでしょう。

業務平準化においてもこの PDCA サイクルは非常に大切です。たった一度の取り組みだけではなく継続的に平準化を続けることで初めてその効果を引き出せると言ってよいでしょう。

ただし、PDCAは約 70 年前から存在する優れた手法ですが、一方でガラパゴス化しやすいという側面もあります。定期的に社員および顧客の意見を聞き取り、よりよい方法はないか、新たな偏りは生じていないかなどをチェックしながら進めてください。

業務平準化のヒント: IT ソリューションの活用

今日の業務実態は、DX 推進で見受けられるとおり、いかなる企業においても何らかの IT システムを活用しているのがほとんどです。そのため業務平準化にあたって IT システムへの入出力を業務手順として盛り込み、その上で平準化を図る必要があります。IT システム上でも様々な非効率が生まれている環境は少なくないでしょう。

業務平準化に取り組む際は、併せてワークマネジメントツール「Asana」の導入がおすすめです。Asana なら、一連の業務プロセスがすべて可視化されるため、業務の属人化を避けつつ最適なリソースの配分が可能です。仕事の生産性向上へのサポートにも役立ちます。

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リソース平準化とは?

平準化は「リソース平準化」という使われ方もします。リソース平準化とは、投入可能なリソースを超過せずにプロジェクトを完遂できるよう、過剰な割り当てやスケジュールの競合などが生じた際に用いられるプロジェクトマネジメントのテクニックです。業務の平準化とは人材の作業量の均一化を図る手法でしたが、リソース平準化は、プロジェクトを完了するために必要な時間、資材、ツールを調整する手法です。

リソース平準化とは?

リソース平準化の目的は、投入可能なリソースを最大限に有効活用しながら、プロジェクトの時間、費用、スコープの制約に対応することです。

リソース平準化では、同じリソースを要する複数のプロジェクトにおいてそれらのニーズのバランスをとることが求められるので、こういったケースではプロジェクトマネージャーの力が試されることとなります。

では、具体的にどのような場面でリソース平準化が必要になってくるのでしょうか。チームのニーズにより、以下のような状況が考えられます。

  • 締め切りを守ることが現在のプロジェクト目標である場合は、投入可能なリソースを増やす必要があるかもしれません。

  • プロジェクト目標が現在の手持ちのリソースの限度内でプロジェクトを遂行することである場合には、締め切りを延長する可能性を検討する必要があるかもしれません。

リソース平準化を行えば、過剰な負荷や偏りを防ぐために、リソースの割り当てプロジェクトのスケジュールを調整できます。そうすることで、プロジェクトの成果物の質を維持できます。

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リソース平準化とリソース円滑化の違い

リソース平準化と同様、「リソース円滑化」もビジネスシーンでよく用いられる言葉で、双方ともリソース管理のテクニックです。

リソース平準化とリソース円滑化の違い

この 2 つのテクニックの主な違いは、プロジェクトで最も重視される制約条件です。リソース円滑化では時間的な制約が重視されるのに対し、リソース平準化ではリソースの利用上限が焦点となります。

たとえば、あるタスクの作業を 5 日間連続で 1 日 8 時間行う予定が入っているとします。しかし実際のところ、そのタスクを完了するために必要な時間は 30 時間のみなので、スケジュールを 1 日 6 時間に変更します。これがリソース円滑化です。円滑化したことで、プロジェクトの締め切りに影響を及ぼさずに他の作業を行う余裕が生まれます。

リソース平準化は、リソースへの過剰な割り当てが生じた際に使用するのに対し、リソース円滑化はリソースの不均等な割り当てが生じた場合に使用します。リソース平準化ではプロジェクトの開始日や終了日を柔軟に調整できますが、リソース円滑化ではプロジェクトの日付を変更できません。

過剰な割り当てによる競合を解決するためにリソース平準化を使用したら、それに続いてプロジェクトのスケジュールを均等化するためにリソース円滑化を行うとさらに効果的でしょう。

記事: ビギナーズガイド: 制約理論

リソース平準化のメリットは?

リソース平準化は、リソースへの過剰な負荷を避けながらも、プロジェクトの要件にしっかり対応できるための手法です。このテクニックは、プロジェクトマネジメントだけでなく、チームのワークライフバランスを維持するためにも役立ちます。では、リソース平準化によるメリットとは?以下にまとめます。

メリット① リソースを最適化する

リソース平準化を行えば、手持ちのリソースを最大限に有効活用できます。また、プロジェクトの中でリソースの追加が必要なものはどれで、締め切りが調整可能なものはどれかを判断できます。

メリット② 予算超過を最小限に減らす

リソース平準化を行えば、プロジェクトの大幅な遅延を防げるため、プロジェクト費用や人件費の損失を最小限に抑えられます。このテクニックを使えば、リソースのニーズに対応しながらも、会社の現在のキャパシティや財務資源を超過する事態を防げます。リソース平準化を効率的に進めるには、こういったサービスの利用もおすすめです。

メリット③ タスクの過剰な割り当てを防ぐ

人材リソースへの過剰な割り当ては働きすぎにつながり、チームメンバーのストレスの原因となります。リソース平準化を行えば、過剰な割り当てによる問題を解決し、チームメンバーのキャパシティを配慮した締め切りの調整を行えます。

メリット④ プロジェクト成果物の品質を守る

平準化を行えば、プロジェクトの成果物の品質を同じ水準に保つことにより、リソースと顧客の期待内容の双方を管理できます。総じて、リソース平準化は、予算の問題、リソースへの過剰な割り当て、プロジェクトの遅延などを解決するために役立つテクニックです。

記事: チームの仕事の効率を向上させる 9 つの方法

リソース平準化の実践例

リソース平準化を実際に活用する方法を分かりやすくするために、以下に具体例を紹介します。

実践例 1: プロジェクトの開始日を遅らせる

状況: とあるプロジェクト用に、デザイナーにプロトタイプを作成してもらう必要がありますが、デザイナーのダブルブッキングが生じ、デザインチームも予定に空きがありません。

リソース平準化を活用した解決策: プロジェクトの開始日をデザイナーの予定が空く 2 日後に変更します。デザイナーの仕事のペースは速いので、プロジェクトの終了日はそのままに保ちます。

実践例 2: 追加リソースを確保する

状況: IT チームでは、会社のコンピューターが感染したウイルスに対処するため、大量のIT リクエストに対応していますが、会社の既存のウイルス対策ソフトはその強力なウイルスを撃退する能力が不十分です。

リソース平準化を活用した解決策: チームはコンピューターを修復するために、新しいウイルス対策ソフトへの投資を決定しました。

実践例 3: プロジェクトの終了日を延期する

状況: マーケティングチームでは、新しい SNS キャンペーンをローンチするため、担当者からの承認を待っていますが、その担当者は現在体調を崩して欠勤中です。

リソース平準化を活用した解決策: 緊急性が低いキャンペーンなので、キャンペーンのローンチを数日延期し、マネージャーがレビューする時間を確保します。

平準化は、マーケティング、営業、IT チームなど、あらゆるチームの管理において、リソース利用の競合を解決する手段となります。解決策を決定したら、チーム全体にその計画を伝えましょう。ミーティングのテンプレートを使えば、議題も簡単に計画できます。

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リソースの平準化戦略 4 選

プロジェクトリソースの平準化をスキルのレパートリーに加えれば、より効果的なリーダーとしてチームに貢献できます。チームで活用できるリソース平準化戦略を以下に紹介するので、参考にしてみてください。

リソース平準化戦略

1. クリティカルパス法 (CPM)

プロジェクトクリティカルパス法は、リソースの制約を考慮せずにプロジェクト期間を算出するために、広く用いられている平準化テクニックです。

この手法では、プロジェクトにおいて依存関係がある活動を合理的な順序でつなげ、各活動の開始と終了の最も早い日と最も遅い日を算出します。「クリティカルパス」とは、プロジェクトを完遂するために完了を要する活動の内、所要時間が最長である一連のタスクを指します。

クリティカルパス (最長経路上) の一連の活動を特定したら、「フロート」(余裕時間) と呼ばれるスケジュール調整の柔軟性を判断できます。

トータルフロート (最大余裕時間) とは、プロジェクトの終了日に影響を与えることなく、タスクを最も早い開始日からどれだけ遅らせることができるかを指します。

  • 計算法: (最遅終了日) – (最早終了日) または (最遅開始日) - (最早開始日)

フリーフロート (自由余裕時間) とは、後続の活動の開始日に影響を与えずに遅らせることのできる日数を指します。

  • 計算法: (後続タスクの最早開始日) – (現行タスクの最早終了日)

クリティカルパス上のタスクのフロート (余裕時間) は 0 です。それはつまりそのタスクの 1 つに遅れが生じた場合、プロジェクト全体が遅れることを意味します。

たとえば、IT チームが既存のセキュリティシステムを新しいシステムと交換する際に、2 つのクリティカルタスクと 2 つの非クリティカルタスクを特定したと想定しましょう。

クリティカル:

  • 全社において既存のセキュリティソフトウェアの使用を 2 日以内に中止する

  • 会社の全デバイスおいて新しいソフトウェアのインストールとテストを 4 日以内に完了する

非クリティカル:

  • ソフトウェア業者との購買取引の詳細を 1 日以内に締結する

  • 新しいソフトウェアのユーザーガイドを 2 日以内に作成する

クリティカルパス上の活動はプロジェクトを完了するために不可欠ですが、非クリティカルなタスクは任意のオプションであるため、この例におけるプロジェクト期間は最短で 6 日間です。

2. ファストトラッキング

顧客の要件を満たすために、プロジェクトを締め切り以前に納品する必要がある場合もあります。そういった場合には、複数のタスクを並行して実施するファストトラッキングを使用すれば、プロジェクトを加速させられます。ファストトラッキングは、活動をある程度同時進行できる場合にのみ使用できるスケジュール短縮のテクニックです。

たとえば、依存関係がある活動はずらし、依存関係がない活動は並行して進められます。

ファストトラッキングの例として、ソフトウェア開発チームがウェブサイトのバックエンドを構築し始め、その間にデザインチームがウェブサイトのプロトタイプを完了させる場合などがあります。ファストトラッキングのテクニックを使えば、期限内かつ予算内に仕事を完了できる一方で、後に修正が必要となる可能性も高くなるので注意が必要です。

3. クラッシング

ファストトラッキングを適用できない場合、またはその効果が不十分な場合には、クラッシングというテクニックを実施できます。クラッシングは、プロジェクトに追加のリソースを投入してタイムラインを短縮する手法です。これを行う場合には、高優先度タスクのニーズを見極めた上で、最も高価値かつ低コストのリソースの選択肢を探す必要があります。

たとえばマーケティングチームで、とあるプロジェクトの締め切りが 2 日早くなったため、ライターを 2 名追加する必要があるとします。予備のチームメンバーはいないので、プロジェクトマネージャーは、新しいライターを探す代わりに、過去に提携したことがあるフリーランスのライターを 2 名採用することを決めます。

プロジェクトのスケジュールを短縮するためにクラッシングを使用する場合は、追加リソースを取得することについて、必ずマネージャーまたは顧客から承認を得ましょう。

4. クリティカルチェーン法

クリティカルチェーン法は、クリティカルパス法をアップデートした手法です。クリティカルパス法とは違い、クリティカルチェーン法では、リソースの制約を考慮します。ここで言う「クリティカルチェーン」は、タスクとリソース両方の依存関係を考慮した上でのタスクの最長経路を指します。リソースは 1 度に 1 つのタスクのみに割り当てられます。

この手法を使ったプロジェクトのスケジューリングでは、タスク用に必要なリソースの一覧を作成し、必要に応じてそれらのリソースの利用状況を再評価します。

クリティカルチェーン法では、クリティカルチェーン上の活動で不測の事態が生じた場合に備え、最後のタスクとプロジェクト終了日の間に「バッファー」と呼ばれる期間を挟みます。タスクを早く完了した場合には、その分バッファーが増します。逆に、クリティカルチェーン上の活動に遅れが生じた場合には、そのバッファー期間を使うことになりますが、プロジェクト完了日には影響が及びません。

たとえば、コンテンツ記事を期限内に公開するために、マネージャーは必要なリソース (ライター、デザイナー、開発者など) を判断します。そして、コンテンツレビューやデザインレビューの間の工程で遅れが生じた場合に備え、5 日間のバッファーを設けます。

クリティカルチェーン法は、リソースに過剰な負荷をかけずにプロジェクトを期限内に完了するため、プロジェクト期間とリソースの現実的な予測を目指す手法です。

記事: 最も大切な仕事を優先する方法

リソース平準化を実践するときのポイントは?

リソース平準化は経験を積むにつれてスムーズに進めやすくなりますが、慣れないうちは効率的に進行できないかもしれません。実践する際に活用できるヒントとポイントをこちらに紹介するので、参考にしてみてください。

ポイント① ガントチャートの使用

ガントチャートとはプロジェクトのスケジュールを視覚化した横棒グラフで、クリティカルパスを特定し、計画するために用いられるツールです。ガントチャートを使えば、タスクの依存関係、開始日と終了日、プロジェクト期間の全体像を簡単に俯瞰できます。また、プロジェクトを進行させながら、必要に応じてチャートをアレンジし直したり、日付を調整したりできます。

ガントチャートテンプレートを作成

ポイント② プロジェクト管理ソフトウェアの活用

一部のプロジェクト管理ソフトウェアには、過剰な割り当てによる競合の解決に役立つリソース平準化のアルゴリズムが備わっています。また、プロジェクト管理ソフトウェアを使えば、チームメンバーのスケジュールを可視化しやすくなるため、スケジュールの競合やダブルブッキングを未然に防げます。

ポイント③ ネットワーク図の作成

ネットワーク図も、プロジェクトのスケジュールを視覚化するためのツールの一種です。タスクの順序を示す一連のボックスと矢印から成る図として表されます。スケジュール計画の他、プロジェクトの進捗を追跡するためにも使用できます。それぞれがタスクと期間を表す一連のボックスをつなげることにより、非クリティカルパスとクリティカルパスを特定できます。

ポイント④ 過去のプロジェクトを参照用に使用

過去のプロジェクトプランやスケジュールをアーカイブに保存していれば、類似するプロジェクトを実施する際により的確なプロジェクト計画を策定することができます。その際、成功したプロジェクトだけでなく不成功に終わったプロジェクトも参照すれば、各タスクにどれほどの余裕を設けるべきか、どんなリソースが必要になるかをより正確に予測でき、プロジェクト開始前に投入可能なリソースを把握できます。

ポイント⑤ リソースのニーズを現実的に予測

リソース平準化は、まずプロジェクトスコープを明確に定義し、それからリソースのニーズを現実的に予測した場合に成功の確率が高まります。より的確に予測するためには、以下の秘訣を試してみてください。

  • チームで予測を行い、個人的なバイアスを減らす

  • プロジェクトの潜在リスクを予測プロセスに含める

  • より幅広い可能性を対象に含めるために、特定の値ではなく範囲を予測する

  • より一貫性のある予測を行うために、毎回同じ予測テクニックを使用する

最初のリソース予測が正確であるほど、後で問題が発生してリソース平準化を実施する場合に大きな変更や見直しを行う必要がなくなります。

リソース平準化はツールを使用して効率的に進める

平準化の意味、また業務平準化とリソース平準化について、その定義とメリット、実践例、取り組み時のヒントを解説しました。平準化はプロジェクト管理手法のひとつとして、プロジェクトを期限内に完了するために役立ちます。

平準化のためには、まず人員配置と作業配分のどこにムリ、ムラ、ムダがあるのかを調べ、業務に関する一連の流れを可視化し、適切なマニュアルを作成しましょう。そして PDCA サイクルを回しながら、スモールスタートで少しずつ平準化を進めていくことが大切です。ただし、PDCA サイクルを回すことに固執するのはあまりよくありません。社員や顧客の声を聞きながら、新たな偏りが出ないかを常に探り、偏りの芽を見つけ次第摘んでいきましょう。

業務平準化にもリソース平準化にも、確かな管理スキルが必要ですが、ワークマネジメントソフトウェアを使えば、プロジェクトの調整スキルを新たなレベルへと高められます。リソース平準化を用いて決定した過去の戦略は、IT テンプレートマーケティングテンプレートなど、チーム用にカスタマイズされたテンプレートと組み合わせ、今後のプロジェクト計画やスケジュールの策定に使用しましょう。

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