モチベーション理論とは? 組織運営に役立つ理論を解説

 2021.04.12  2023.03.30

WORK INNOVATION SUMMIT 24

モチベーション理論とは、「人は何によってやる気が高まるのか」「何を動機づけにして行動を起こすのか」を研究した学問のことです。会社などの組織では、日々の仕事に意欲的に取り組んでいる人もいれば、なかなか自発的に仕事ができず実績が出せない人もいます。当記事では、モチベーション理論の概要に触れながら、組織運営に役立つヒントを紹介します。

モチベーション理論とは? 組織運営に役立つ理論を解説

モチベーション理論は内容理論と過程理論に分類される

そもそもモチベーションとは、「何かをやろうとする意欲・やる気・行動のための原動力」のことで、動機づけとも呼ばれます。モチベーション理論は、これらはどのようにして生まれるのか、やる気を高めるにはどのような要因があるのかなどを研究した理論です。

モチベーションは、それがどのように生まれるかによって大きく2つに分類できます。1つ目は、自分自身の興味や好奇心、達成感など、内面の感情の働きがきっかけとなる「内発的動機づけ」。2つ目は、報酬アップや昇格、社会的地位の向上など、外部からの働きかけがきっかけとなる「外発的動機づけ」です。

これらはどちらか1つが満たされればよいというわけでなく、人によって重視する側面も異なります。「ボーナスはアップしているものの、仕事にやりがいを感じない」「自分のやりたい仕事ができているが、頑張りが給料に反映されない」といった仕事の不満を耳にする人も多いのではないでしょうか。やる気を向上させるには、内発的動機づけと外発的動機づけのバランスをうまく取ることが大事なのです。

このように、人が動機づけられるときはさまざまな要因が関係しています。モチベーション理論は、「内容理論」と「過程理論」に分けられます。それぞれ扱う動機づけの要因が異なるので注意しましょう。内容理論は、先ほど説明した内発的動機づけのように、人の内なる欲求に焦点を当てて論じていきます。一方で、過程理論は、「どのように働きかければモチベーションが向上するのか」に着目し、人が動機づけられるプロセスに焦点を当てる理論です。

内容理論と過程理論を考えるとき、知っておくべき基礎的な理論がいくつか存在します。内容理論は、マズローの欲求5段階説、ハーズバーグの動機づけ・衛生理論などが有名です。過程理論なら、期待理論、アダムスミスの公平理論など。ここからは、内容理論、過程理論の体系となる考え方をより詳しく説明していきます。

マズローの5段階欲求説とは

マズローの5段階欲求説とは、アブラハム・マズローが提唱した論文で、組織運営だけでなくマーケティングなどの分野、さらには教育現場などでも活用されています。マズローは人間の欲求を5つの階層に分類しました。

マズローが提唱した5つの欲求は、「生理的欲求」、「安全欲求」、「社会的欲求」、「承認欲求」、「自己実現欲求」です。これらはピラミッドのように階層が決まっており、生理的欲求が満たされたら安全欲求を求めるといったように、段階を踏みながら上の次元の欲求を求める性質があります。

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人は職場でどのように時間を使っているのか

生理的欲求とは、人が生きていく上で基盤となる欲求で、食欲や睡眠欲など本能的なものを指します。3大欲求だけでなく、水分を摂りたい、息を吐き出したいなど、生命を維持するために必要な欲求は、生理的欲求に該当します。安全欲求は、より安心して過ごせる環境を求める欲求のことです。「生活に困らないだけのお金を稼ぎたい」「体調管理をしっかり行いたい」など、まわりの環境だけでなく経済的な安定や、健康状態の維持なども含まれます。社会的欲求とは、企業や学校、家族など、何らかの集団に帰属して愛着を得たいと思う欲求のことです。「本心を打ち明けられる人がおらず孤独を感じる」「話し相手がいなくて寂しい」などは、社会的欲求が満たされていない状態だと言えるでしょう。これらの3つの欲求は、外的な要因によってもたらされる、低次の欲求と呼ばれています。

承認欲求とは、周囲から認められたい、集団の中でより尊重されたいと思う欲求のことです。まわりから思うような評価が得られなかったり、自分の行いが無意味だと感じたりすると、承認欲求が満たされず劣等感を感じることも。自己実現欲求は、最も次元の高い欲求で、思い描く理想の自分になりたいと思う欲求のことです。たとえ企業の中で評価されたとしても、「自分の会社を設立したい」という夢がある人は、それだけでは満足しないものです。承認欲求と自己実現欲求は高次の欲求と呼ばれ、内的な要因によってもたらされます。

組織を運営する上で大切なのは、人の欲求は同じでなく、何を動機にして行動するかはそれぞれ異なるということです。例えば、新人社員は「早く仕事を覚えて同期と差をつけたい」「経験を積んで、できる業務を増やしたい」などを仕事のモチベーションとするかもしれません。しかし、ベテラン社員ともなると、また違う夢や欲求が出てくるはずです。欲求にはさまざまな種類があることを知れば、社員一人ひとりのやる気を引き出すことにつながるでしょう。

ハーズバーグの二要因理論とは

臨床心理学者であるハーズバーグは、200人の技術者と経理担当者を対象に実験を行い、メンタルヘルスとモチベーションの関係について研究しました。それによりハーズバーグが発表した二要因理論は、「仕事の内容からもたらさられる満足感(動機づけ要因)」「仕事の環境からもたらされる不満(衛生要因)」の2つが、従業員のモチベーションに影響を及ぼすと明示しています。

ハーズバーグは、実験の中で被験者に対して2つの質問を行いました。1つ目は、「仕事をするとき、どんなことが幸福だと感じ、また満足感を得たか」という質問です。その結果、仕事の動機づけ要因となるのは、昇進・昇格、承認されること、達成することなど、仕事内容に関わることだとわかりました。2つ目の質問は、「どんなことによって不幸や不満を感じたか」というものです。これらは衛生要因と呼ばれ、職場の環境に関わる問題が多く見られました。具体的な要因は、給与、管理方法、対人関係、作業条件などです。

ハーズバーグの二要因理論で重要なのは、動機づけ要因が満たされなくても不満を引き起こすことはないものの、衛生要因が満たされないと職務上の不満を引き起こすということです。例えば、「職場の対人関係は良好だが、昇進や昇格はあまりない」という状態は不満につながりにくいが、「仕事の達成感はあるものの、給料に納得がいかない」という状態は不満に感じやすいのです。衛生要因は、マズローの5段階欲求説で言及されている生理的欲求や安全欲求などにあたります。これらは基本的な欲求であるため、欠けていると不満感につながりやすくなります。会社の離職率を減らしたいときや組織の不満をなくしたいときは、休暇の取りやすいシステムを作る、リフレッシュできるオフィスにするなど、衛生要因に目を向けるとよいでしょう。

しかし、衛生要因を必要以上に改善しても、モチベーションの向上につながるわけではありません。快適な環境が当たり前になると、それによってやる気が出る傾向も薄れてしまいます。効果的に従業員のモチベーションを引き出すには、動機づけ要因と衛生要因の両方を改善し、それらをバランスよく取り入れることが大事です。

職場で実際に使われている目標設定理論とは

目標設定理論は、エドウィン・ロックとゲイリー・レイサムが1984年に提唱した理論です。現在でも、月々の新規顧客数や売上など、達成するべき目標値を設定している会社は多いでしょう。目標設定理論の研究により、目標の内容が従業員のモチベーションに影響することがわかりました。

目標設定理論では、「自己効力感」と呼ばれる、目標に向かって自分自身を高める感情が大きなポイントです。例えば、営業成績の目標値を決めたとき、「こういう手法を取り入れればこれだけ売り上げを伸ばせる」と強い確信があれば、たとえ困難な状況でもくじけずに努力を続けられます。目標を決めるときは、自分自身にどれだけ自己効力感を与えられるかが重要です。

自己効力感を高める要件は、「目標の困難度」、「目標の具体性」、「目標の受容 」、「フィードバック」の4つです。これらを実践で意識すれば、企業において適切な目標設定が行えるでしょう。人は簡単に達成できる目標だと、途中でやる気を失ってしまいます。困難ではあるものの、努力すれば実現できる値を目安に目標を決めるとよいでしょう。

内容を決めるときは、なるべく数値や時間を用いるなど、具体性を持たせることが大事です。また、目標を設定するとき、人に指示されたものに従うのでは、たとえ達成しても自己効力感を発揮しないため、従業員自身がそれぞれの目標を決定するようにしてください。

もし達成し得なかったとしても、必ずフィードバックを行い、どの程度達成できたのか、問題点は何かなどを洗い出します。目標を設定しただけで放置せず、毎回きちんと進捗を確認することが、長くモチベーションを維持することにつながります。

現代を代表する理論の一つ、期待理論とは

期待理論は、近代のモチベーション理論を代表するものの1つです。1964年にビクター・ブルームによって提唱され、その後ステファン・ロビンスによって広められた考え方で、モチベーションは「成果への期待値」と「報酬の魅力」の掛け算で強さが決まると論じました。

ロビンスが広めた期待理論は、目標設定理論の影響を受けたと言われており、モチベーションは「努力」×「成果」×「魅力」で決まると主張しました。努力は、目標を達成するまでに必要な努力の程度を表します。目標設定理論と同じように、目標達成の見込みがなかったり、努力するまでもなく達成できる目標だったりすると、モチベーションは上がりにくく、成果は、報酬を得られる可能性のことです。仕事のレベルや業務の内容が、報酬獲得に必要なプロセスでなければやる気を感じにくいでしょう。魅力は、貰える報酬が魅力的かどうかを表します。たとえ報酬を得られるとしても、あまり欲しくないものであれば仕事の意欲は上がりにくいと言われています。

したがって、従業員のモチベーションを高めるには、「努力が成果に結びつくと期待できる」「成果が報酬に結びつくと期待できる」「報酬が魅力的である」などの条件が必要です。どれか1つだけを改善するのではなく、それらすべてを掛け合わせたときに、従業員にとってプラスに作用することが重要です。

まとめ

モチベーション理論を組織運営に取り入れれば、従業員のやる気を上手に引き出せるはずです。モチベーションは、内的・外的要因のさまざまな要素が関係しています。環境やメンタル、設定している目標など、人それぞれ効果的な改善法は異なるため、従業員一人ひとりの心理状態にも目を向けることが大切です。ハーズバーグの二要因理論では、仕事の管理方法や作業条件といった衛生要因の改善が、不満感をなくすポイントだと述べています。衛生要因を改善するには、同僚や上司などとのコミュニケーションやタスク管理などに役立つ「Asana」などのビジネスツールを導入するのもよいでしょう。より便利なビジネスツールをお探しの方は、ぜひご検討ください。

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