AI(人工知能)で仕事がなくなる?AIは働き方をどのように変えるのか?

 2020.05.15  2022.08.17

AIの活用が進み、今までの生活や働き方が変化しつつあります。特に働き方においては「AIで仕事がなくなる」という予測もされ、将来自分の仕事がなくなってしまうのではないかと心配する人も少なくないでしょう。本記事では、AIを正しく理解するために知っておきたい基礎知識や、AIによって起こる社会的変化について解説します。

AI(人工知能)で仕事がなくなる?AIは働き方をどのように変えるのか?

知っているようで知らないAI(人工知能)の基礎知識

AIとは「Artificial Intelligence」の略で、日本語では「人工知能」と訳されています。テレビや新聞などで耳にする機会が多いものの、各メディアによってAIが表しているレベル感や内容に差があり、理解しにくいと感じる方もいるようです。これは、AIという言葉が示す範囲が一定でないことが背景にあります。

意外なようですが、AIには明確な定義はなく、専門家や研究者の間でも定義は統一されていません。

AI(人工知能)の定義

そもそも知能自体を定義することが難しいため、「人工的な知能」を定義することも困難だといわれています。AI研究の第一人者でもある東京大学大学院教授・松尾豊氏は、自著でAIを『人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術。人間のように知的であるとは、「気づくことのできる」コンピュータ、つまり、データの中から特徴量を生成し現象をモデル化することのできるコンピュータという意味である』と定義しています。

(引用元:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc142110.html

松尾氏のほかにも「人工的につくられた、知能を持つ実態。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野」「知能を持つメカ、ないし心を持つメカ」、「人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム」などさまざまな定義がされていますが、共通するのは「人工的につくられた」ものであり、知能を持ち人間のような(人間を模倣した)振る舞いをするコンピュータ(システム)ということです。

AI(人工知能)で仕事がなくなるのか

AIの発達によって失われる仕事があるという話をしばしば耳にしますが、その詳細を知るためには、まずAIには何ができるのかを理解する必要があります。AIにできることは主に、「画像認識」「音声認識」「自然言語処理」の3つに大別されます。

画像認識とは、画像内に何の画像が存在するかを識別する技術です。2000年代から現在まで続く第三次AIブームが起きたきっかけも、2012年に行われた画像認識コンテストでカナダのチームが深層学習(ディープラーニング)を用いた画像認識で、2位に大差をつけて優勝したことでした。深層学習によって画像認識の分野は格段に進化したといえます。

画像認識で用いられるモデルが「CNN(畳み込みニューラルネットワーク)」と呼ばれるものです。CNNでは、画像を細分化して分析して特徴量を学習していきます。畳み込み(Convolution)とプーリング(Pooling)という作業を繰り返すのが特徴です。

画像認識は車の自動運転や、今まで人手で計測していた交通量測定の自動化、白黒画像の自動着色、早期がんの検出などに活用されています。リクルートグループが開発した「カーセンサー中古車検索アプリ」のように、スマホで撮影した車の画像から車種を特定する機能をサービス化した事例もあります。

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音声認識とは、音声データをテキストに変換する技術で、取り上げた3つの中で最も精度が高く、また最も実用化されている技術です。精度は95%以上で、人間と同程度にまで達しており、Appleの「Siri」やGoogleの「Googleアシスタント」のように、スマホ上で身近に利用されている技術です。音声認識は議事録の自動生成や、テレビのリアルタイム字幕生成などに活用されています。

自然言語処理とは、言葉を認識して何について述べているかを理解する技術です。ここで用いられている技術が「RNN(再帰型ニューラルネットワーク)」です。これは文章を形態素解析により細分化し、意味や文脈を解析していきます。スマートスピーカーで人間の発話に対してリアクションを行えるのは、音声認識で音声データをテキストに変換してから、自然言語処理で意味内容を理解しているからです。マイクロソフトが開発した「りんな」のように、高度な自然言語処理機能を持ったチャットボットの事例もあります。

今後なくなる可能性がある仕事

AIの進化は著しく、大学や研究機関からAIが仕事を代替する趣旨の論文が発表されています。中でも2015年末に、コンサルティング企業の野村総合研究所が英オックスフォード大学との共同研究として公表した研究結果は、「AIが人間の仕事を奪うのか」として各ニュースで取り上げられました。

これは、国内601種類の職業のうち約半数が、10~20年後にはAIやロボットによって代替されるというもので、ビル清掃員・データ入力係・レジ係・受付係・タクシー運転者などが代替される職業例として挙げられています。

ビル清掃であれば自動掃除ロボットが開発されており、データ入力に関してもAI-OCRとRPAの組み合わせで、すでに自動化が進んでいる分野です。また、接客ロボットが導入され始めている受付係や、セルフレジの導入が広がるレジ係、そして自動運転技術の開発によってタクシー運転者も、近い将来に代替される可能性が高いと予測されています。

これらに共通しているのは「マニュアル化できる(個別判断が少ない)業務」「労働集約型の業務で、自動化したほうが生産性が高い」「必ずしも特別の知識・スキルは要さない」という特性です。

(引用元:日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に

今後も人間が活躍する仕事

前述の研究結果では、逆にAI・ロボットによる代替可能性が低い職業として、100種類(アートディレクター・歯科医師・小学校教員など)の職業も例に挙げられています。これらに共通しているのは「高いコミュニケーション能力が求められる」「マニュアル化できず、個別に対応が必要」「創造力が必要」という特性です。人と接して何らかの対応をする職業は、将来的にも人間が活躍する可能性が高いと考えられます。

なお、野村総研のレポートは「日本の労働人口の約半分がAI・ロボットに仕事を奪われる」という意図で捉えられがちですが、実際は「技術的には代替できるようになる可能性が高い」という推計であり、決して人間の仕事がなくなるという趣旨ではありません。コストや労働需給などの要因は考慮しておらず、さらに業務の一部を代替する確率も含まれていません。

AI(人工知能)で変わる今後の働き方

AIが進化し普及することで、人間の仕事を奪うという予測もある一方で、AIによって人間の働き方そのものが変化する可能性があることも指摘されています。

IT技術の進展によって、今までのように毎日会社へ出社して働くというスタイルから、好きな時間・場所で仕事をするというワークスタイルが可能になりました。Web会議やVPN、ビジネスチャットなどを利用して自宅で仕事を行う「リモートワーク」が徐々に広がりつつあり、今後AIの活用によって、この流れがさらに加速すると見られています。

フリーランスや複業の方の一部は、会社に雇用されて時間分の労働力を提供する従来の雇用型オフィスワークから、時間ではなく成果を提供する自営型のリモートワークへと変化し始めています。今では、地方で自然に囲まれた生活を送りながら、週に3日ほど働いて収入を得る人も登場しています。このような柔軟な働き方が、今後は一般の企業でも当たり前になっていく可能性があります。

これから求められるスキルとは

人手不足や働き方改革を背景に、AIによる省人化・自動化の流れは一層進むと考えられます。今後はAIの活用を前提とした働き方にシフトすると共に、企業からもそれに対応できる人材・スキルが求められるようになると考えられます。

まず、前述のAIによる代替可能性が低い職業からも見えてくるように、今以上にコミュニケーションスキルが重視される可能性があります。具体的には、顧客ニーズを的確に把握できる営業や、クライアントの意図を汲み取れるエンジニアなどです。また、自営型のリモートワークが増えるに伴い、クライアントからの要望に柔軟に対応できるスキルの重要度が高まると思われます。

さらに、人手不足によって一人で複数の業務を行う機会が増えると予想され、それに対応できるよう、複数の仕事を行いつつ並行して経験やスキルを磨く「パラレルキャリア」という働き方が、今以上に評価されると予測されます。

特に今後は、コミュニケーションスキルや柔軟な対応など、人間ならではの能力が企業から求められ、その重要性も高まっていくでしょう。

まとめ

AIとは「人工的につくられた、人間のような知能を持ったコンピュータ」のことです。AIの発展により、人間の仕事が奪われるもいわれますが、それ以上にAIによって人間の働き方が変化し、新しいワークスタイルが生まれています。

これからはAIを前提にしたスキルアップや、人間ならではの能力を身に付けることが重要になります。

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