横断的な組織が企業経営にもたらすメリット

 2022.04.21  2022.09.05

縦割り構造の組織形態が主流である日本企業では、部門間調整の難しさから、しばしば組織課題の解決に向けた取り組みが硬直状態に陥りがちです。そこで注目されているのが、組織の垣根を越えたコミュニケーションを可能にする「横断的組織」です。本記事では、横断的組織の特徴やメリット、注意点などについてご紹介します。

横断的な組織が企業経営にもたらすメリット

横断的組織とはどのような組織なのか

横断的組織とは、全社的な課題と向き合うべく複数部門をまたいで結成される組織のことで、基本的には縦割り組織の補完として位置づけられます。この組織では各部門の代表者らが集まり、一定期間または永続的に組織・チームを結成し、課題の解決を図ります。参加メンバーは「経営者目線」で自社を俯瞰できるため、人材育成にもつながります。

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横断的組織とCFTの違いとは?

「CFT」とは「Cross Functional Team(クロス・ファンクショナル・チーム)」の略称で、複雑な経営課題に対して解決するための特別チームを意味します。この特別組織のメンバーは、役職や経歴はもちろん、社内・社外の人間かどうかも問わずに選出されます。硬直化した縦割り企業においては、こうした現在の組織形態に依存しない方法で企業課題を解決していこうという動きがあります。

横断的組織とCFTとのあいだには、目的や考え方に大きな違いはありません。強いていえば組織編成の方法が若干異なり、前者は社内からメンバーを募りますが、後者は必要に応じて外部からも有識者などのメンバーを選出します。その点では、CFTはより専門的な知見を有するメンバーが加わり、組織課題を横断的に解決できるチームともいえます。いずれにせよ、横断的組織のメリット・デメリットを理解したうえで運用することが大切です。

横断的な組織を導入するメリット

では、横断的組織を導入することで、企業にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。以下では、主なメリットを3つピックアップしてご紹介します。

縦割り組織の活性化や再生が見込める

縦割り組織は高い生産性を実現する反面、とても閉じた組織構造であるため、部門間の壁や対立を生むことが間々あります。「隣の部門が何を行っているのかよく知らない」ということも決して珍しい話ではありません。

横断的組織で編成されたメンバーたちは、こうした縦割り組織の弊害から解放されます。普段は関わりのない他部門のメンバーとも交流が深まり、お互いの持っている知恵・アイデアを遠慮なく出し合うようになります。その結果、お互いにとってよい刺激となり、個々の能力やモチベーションの向上が期待できます。また、所属部門を越えてアイデアを出し合う中で自ら積極的に発言・行動し、また相手の意見にも耳を傾けるようになれば、複数の視点が養われ、より多角的・全社的な課題解決を図れるようになります。

そうしてメンバーたちが成長することで、もとの縦割り組織に戻ったときにも横断的組織で培った経験が活かされるため、組織の活性化や課題解決による再生につながります。

全体の最適化や協働、高度な課題の解決を図れる

部門間で長らく放置されていて誰も手をつけようとしない課題でも、横断的な組織であれば解決を図ったうえで、企業全体に最適化させられます。

また、通常は役職者を通じて役職者同士で課題解決しなければならないところを、この組織では役職や立場を越えて解決を図れます。そのため、個々のメンバーの能力を活かし、パフォーマンスを最大化できる強みがあります。

さらに、専門性の高いメンバーが選出されることで、高度な課題をスピーディーに解決できるのもメリットです。

新規アイデアの自由度が高い

各部門から専門的な知見を持ったメンバーが集まる都合、メンバー同士の何気ない会話などからでも、普段の業務では出てこないような新しいアイデアやイノベーションが生まれる可能性があります。従来の自分が置かれたポジションからだけでなく、さまざまな角度で課題と向き合えるため、アイデアの自由度も高くなります。

また、CFTのように外部から知見のある人材を招聘する場合、より高度で専門的な知識が集まるため、社内のメンバーの知見が深まる点もメリットです。

横断的な組織を導入、運用する際の注意点

このようにさまざまなメリットがありますが、導入・運用に際しては注意点もあります。横断的な組織を成果あるものとするためには、以下の3点を押さえておきましょう。

バランスの取れたチーム構成にする

まず重要なのが、バランスの取れたチームを編成することです。会社での役職・勤務年数に偏りがあってはいけません。編成が不均衡だと、自由で新しい視点が生まれにくくなるため要注意です。選出部門についても同様で、同じ部門のメンバーが多いと普段の縦割り部門と変わらず、積極的な意見も出にくくなりがちです。どの部門から何人、誰を選出するのかについて、しっかりと考えなければなりません。

また、意見を出しやすい面子を揃えることも大切です。ある一定の年齢帯に集中した選出だと、ほかの年齢帯のメンバーから意見が出にくくなることもあります。フラットで誰からも積極的に意見が出やすいメンバーを選出し、最適なチーム編成に努めましょう。

メンバーのモチベーション対策を行う

横断的組織のメンバーに選出されても、通常業務がなくなることはあまりありません。多くのメンバーは通常業務との兼務となるため、業務過多にならないようタスクを配分する、モチベーションを損ねないよう必要に応じてインセンティブを付与する、といった配慮が大切です。

また、通常の所属部門に戻って業務を行う際、現場のメンバーとの温度差が生まれやすい点にも注意しましょう。適宜コミュニケーションの機会を設け、横断的組織で選出されたメンバーがどんな課題に取り組んでいるのかなど、現場のメンバーに共有することで、周りの理解が得られ応援してもらえるようになるでしょう。

管理能力の高い人材をリーダーに据える

メンバーたちのまとめ役となるリーダーを選出することも大切です。メンバーの考えをしっかりと理解し尊重できるのはもちろん、プロジェクト全体を管理できる能力に長けた人材を選ぶ必要があります。

リーダーはこうした全体感をチェックするような立ち位置ですが、横断的組織に与えられた課題についてリーダー自身が大きく関わりすぎると、メンバーたちの協調性がなくなったり、反発を生んだりしかねません。一方で、リーダーの関与が少なすぎるとメンバー間の意見がまとまらず、課題整理すらできない状況となるおそれがあります。

このように、リーダーの課題への介入は塩梅が難しい問題であるため、メンバーの意見の出方を見て適宜調整できる、バランス感覚に優れた人材が適格でしょう。

横断的組織による課題解決を成功させるには

横断的組織の導入により課題解決を実現するためには、大きく分けて「設計」「立ち上げ」「運営」の3ステップに沿って実行していく必要があります。以下、それぞれのステップのポイントについて解説します。

1.横断的組織の設計

まずは、経営陣によって目的やミッション、会社での位置づけなどを明確にした設計を行います。具体的には、「どこまでの権限で何ができるのか」という権限付与の範囲と期間、必要コストなどのフレームを設計します。さらに、経営陣が横断的組織の管理者を選出し、その管理者によって組織のリーダーとメンバーが選出されます。

2.横断的組織の立ち上げ

横断的組織の立ち上げに必要となるのが、チームマニュアルです。これはチームメンバー全員の行動規範となるものであり、まだ未策定の場合は運営しながら作り上げる必要があります。このマニュアルによって割り振られた役割を着実に果たすことが重要です。

3.横断的組織の運営

実際の運営にあたっては、メンバー同士が信頼関係を深め、そのスキルの多様性を認め合えるようにしながら、目的である課題の解決に取り組んでいきます。

経営陣から選出された管理者は、メンバーの求めや必要に応じて適宜支援を行ってください。ただし、チーム自体の主体性に任せて、新しい視点でこれまでになかったアイデアを出すためにも、こうしたトップクラスの介入は極力抑えなければなりません。

また、正しくメンバーの活動を評価するためにも、課題を解決するまでの目標や成果を数値化しておく必要があります。数値化しておくことで目標が可視化され、チーム内での方向性や認識を共通化しつつ、メンバーのモチベーションを維持する効果も期待できます。

まとめ

横断的組織で全社的な問題解決にあたることは、社員同士の連帯感を高め、かつ組織間の壁を取り払うことにもつながります。また、経営的な視点も育成されるため、次の幹部メンバー育成においても有効です。ただし、通常業務との兼ね合いから、効率的に運営しなければ業務フローの複雑化やメンバーの負荷増大などを招くおそれもあります。それゆえ横断的組織の運営と併せて、プロジェクト管理に長けたツールの導入も検討することが経営陣の役割といえます。

そこでおすすめなのが、タスク・プロジェクトの一元管理を実現する業務管理ツール「Asana」です。プロジェクト全体が可視化されるため、業務のどこにボトルネックがあるのかなど、メンバー全員で把握・共有できます。Asanaの導入はメンバーの連携を深め、チーム全体の質の向上に寄与します。

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