ホラクラシー型組織のメリットとデメリットについて

 2021.09.21  2022.09.02

従来の組織形態とは異なる「ホラクラシー型組織」について解説した記事です。導入のメリット・デメリットや、日本企業で導入して成功させた事例をご紹介しています。変化の多い時代に適応する手段として、ホラクラシー型組織に注目されている方は、ぜひ参考にしてください。

ホラクラシー型組織のメリットとデメリットについて

ホラクラシーとは

「ホラクラシー」とは、上司や部下のように決まった上下関係が一切ない組織形態のことを指します。社員それぞれが対等の関係で仕事を遂行しますが、すべてが自由な組織になるわけではありません。

明文化された「ロール」という役割を社員個人が担当し、自分の意思決定でロールに応じた仕事を進めていくという形が採られます。たとえば、マーケティング・人事評価・予算管理などのロールがある場合、マーケティングのロールを担当しているなら、そのロールで求められる仕事を自分で考えこなしていくということです。ロールは1つだけでなく、多くの場合は個人ができる範囲で複数抱えます。

ホラクラシー型には管理職がおらず、部署単位・チーム単位・個人単位のいずれかで決定権を持ちます。指示を下す上司がいないため、社員それぞれが自分で仕事を見つけて、主体的に行動する必要があります。

「この組織形態だと無秩序になるのでは」と思う方もいるかもしれませんが、ホラクラシーにもルールがあります。ルールは組織のメンバーが考えて定義するものです。定義したルールに沿って個人が動くため、行き過ぎた自由で組織が崩壊することはありません。上下関係がないため、社員同士で感じる窮屈さも出にくいです。

ホラクラシー型で組織を上手に運営していくには、社員個人が自分の役割と責任を自覚して、自主的に意思決定を行いながら仕事をこなしていく姿勢が求められます。

ホラクラシー型組織とヒエラルキー型組織の違い

ホラクラシー型の対義語にあたるのが「ヒエラルキー型」です。ヒエラルキー型の組織形態とは、よく見られる上下関係に基づいた組織形態のことをいいます。「ピラミッド構造」「トップダウン」「中央集権」「階層型」などとも呼ばれます。

日本のほとんどの企業は、部長や課長といった役職が存在するヒエラルキー型の組織形態にて運営されています。決定権や管理責任は上司が持ち、下の社員が指示に従う形で業務を進めていくさまは、日本企業でよく見られる一般的な形といえます。

両形態の違いとしては、階層型か非階層型か、上下関係と対等関係、情報共有の対称性などがあります。ホラクラシー型は全員が横並びで対等関係にあり、組織内の情報はすべて共有されるのが特徴です。一方、ヒエラルキー型では上下関係が基本で、組織にある情報は権限の大きい人物に集中し、必ずしもすべての社員に共有されるとは限りません。

ホラクラシーが注目される背景

なぜ今ホラクラシーが注目されているのかというと、変化の激しい時代においてメリットが多い組織の在り方だからです。そもそもホラクラシーは、アメリカの会社「ホラクラシー・ワン」の創設者ブライアン・J・ロバートソン氏が提唱した組織形態です。

従来のヒエラルキー型では、外部環境の変化や時代の流れに疎くなり、生き残るうえで必要な変化をするのが遅くなりがちです。「こうするほうが絶対よい」とわかりつつも、現状維持をして実現は後回しになったり、変革を提案しても理解されなかったりした経験はないでしょうか。

それに、社員同士でも価値観はさまざまで、世代が違えば考え方や意見も違います。特に、AIやIoTといった先端技術の活用が一般化した現代ではなおさらです。そんな時代ゆえ、変革に消極的だったり、意思決定が遅かったりする組織には停滞感が生まれ、社員のモチベーションが低下する問題も出てきます。一部の役職に意思決定を集中させるスタイルでは、何事も後れを取りがちなのです。

ホラクラシー型なら、こうした従来の組織形態の問題点を解決できます。フラットな社内環境は社員のアイデアを創出しやすく、また上下関係のやり取りがない分、業務改善に社員のアイデアを迅速に取り入れやすくなります。結果、組織としても成長しやすい土壌ができ、変化への柔軟な対応力が得られるでしょう。

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ホラクラシー型組織のメリット・デメリット

以下では、ホラクラシー型のメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。

ホラクラシー型組織のメリット

明文化されたロールに基づいて業務が進められ、仕事における意思決定や権限は個人単位やチーム単位で与えられます。これにより、個人が担っている役割ややるべきことが明確になり、主体性の強化につながります。社員一人ひとりが、自分が受け持つ役割と関わる業務への意識を強く持つため、社員同士の助言や意見交換などのコミュニケーションも促されます。

また、ヒエラルキー型のような上下関係がないため、毎回上司に確認を取りに行くプロセスがなくなり、物事を進めるスピードが向上します。管理者のマネジメント能力や負担を考慮する必要がなくなるため、そのリソースをより重要な業務に割けるようになり、生産性の向上も期待できます。社内情報が偏りなく全体に公開されるため、余計な社内政治も発生しません。

ロールの仕組みやフラットな組織形態により、時代の変化や経営状況に合わせた柔軟な組織運営がしやすいでしょう。

ホラクラシー型組織のデメリット

上記のメリットが、逆にデメリットとして働く場合もあります。たとえば、管理者がいない組織構造ゆえ、トラブル発生時は社員一人ひとりに負担がかかります。

さらに、ロールという明確な役割分担により自主性が強化される一方、社員全員が何をしているのか、すべての動向を把握するのが難しくなります。管理者が組織全体を制御するというやり方ができないため、社員を信頼して任せるという意思がなければ、ホラクラシー型は成立しません。社内の情報は社員全員に公開されるため、機密情報の管理が困難になり、情報漏洩の可能性も高まります。

また、ヒエラルキー型に慣れていた組織がホラクラシー型に移行する場合、新しい在り方に馴染むまで時間やコストがかかるのもネックといえます。あくまで目安ではありますが、半年~1年はかかると見ておきましょう。

もちろん、導入後も工夫が必要です。アメリカ発祥の組織形態ゆえ、そのまま導入したのでは合わないと感じる部分が出てくることもあります。組織独自の雰囲気や文化に合わせて改良していくことも視野に入れておきましょう。

ホラクラシーを導入している日本企業

最後に、ホラクラシーを実際に導入し、組織運営を成功させている日本企業の事例を2社ご紹介します。

ダイヤモンドメディア株式会社

ダイヤモンドメディア株式会社は、日本で最も早くホラクラシーを導入したとされる企業です。不動産業界を中心に活動しており、仲介業者や不動産オーナー向けのサービスを提供しています。2007年の創業時からホラクラシー型の組織運営を行っており、国内におけるパイオニアといっても過言ではありません。

同社の取り組みで注目したい点としては、給料を話し合いで決めるという仕組みがあります。マーケットバリューや客観的なデータなどを基準に、客観的に相場を整えることを重視し、全体的に見て違和感のない金額に決めます。給与のガイドラインに基づいて適正ではないと判断される場合、給与が下がることもあります。モチベーションなどは個人の問題として考えており、考慮はしない形で運用されています。

創業者の武井氏は、「自然の摂理に則った経営をすれば自然とよくなる」という理念を持ち、ホラクラシー型がその経営に適しているとして採用しています。同社は2021年現在、株式会社UPDATAに変わっており、不動産向けサービスのほか法人向けDXソリューションの提供にも着手し、今なお精力的に活動中です。

株式会社アトラエ

株式会社アトラエは、求人メディア「Green」やAIビジネスマッチングアプリ「yenta」を運営するHR Techベンチャーです。初期の頃からフラットな組織形態を採っており、役員・マネージャー・社員の三階層で経営していましたが、リーマンショックに伴いマネージャーをなしにしたという経緯があります。その結果、さらにフラットな組織となり、取締役と社員しか会社にいない状態で活動が行われています。

役職という形態がある組織から見れば、「重要なポジションをなくしてしまうのはどうなのか」という疑問が出てくるでしょう。しかし、同社では役職をなくした結果、社員が辞めてしまったということは起きていません。社会に対して何の価値を提供できるのか、という視点を大切にし、在籍する社員にもその考えが浸透していたため、役職の有無は大した問題にならなかったという見方ができます。

同社ではほかにも、上下関係や役員の人事権の撤廃、服装や出勤時間の自由化、個人のライフスタイルに合わせた働き方の促進といった取り組みを行っています。また、全社員経営者主義を目指しているため、特定譲渡制限付株式を経営陣だけで独占せず、全社員に付与しているのも特徴です。自主性・当事者意識の強い社員が多く、会社としても社員一人ひとりの意見を尊重して変化できる組織であることを大切にしています。

まとめ

ホラクラシー型組織は、ヒエラルキー型のような上下関係をなくし、明文化したロールを基本にして運営を行う組織形態です。ロールに紐付いた役割を社員それぞれが担当し、自主的に意思決定を行いながら業務を遂行していくのが特徴です。管理者がいない組織形態ゆえ、社員の自主的な働きがそのまま組織活動として反映されます。これにより、トップダウンの手法では難しかった柔軟かつ迅速な組織運営を実現できます。

反面、ホラクラシーを導入すると、社員一人ひとりの行動把握や情報管理が難しくなります。また、ヒエラルキー型からの移行となると、慣れるまで時間や学習コストがかかったり、組織に合うよう手法を改良する期間が必要だったりすることも押さえておかなければなりません。

ホラクラシー型導入の第一歩として、社員同士の自主的な業務連携と仕事の効率化に役立つビジネスツール「Asana」の導入もおすすめです。大手企業での豊富な導入実績があり、組織のムダを最適化するのに役立ちます。

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