成果主義とは?浸透させるポイントや年功序列との違いについて解説

 2021.09.17  2022.06.07

働き方改革の実施や新型コロナウイルスの影響により、テレワークの導入が社会的に進む近年、「成果主義」に再び注目が集まっています。そこで本記事では、成果主義の概要やメリット・デメリット、その効果的な運用におけるポイントについて解説します。

成果主義とは?浸透させるポイントや年功序列との違いについて解説

成果主義とは

「成果主義」とは人事評価制度における基本的な評価方法のひとつで、評価期間内に達成した仕事の成果・実績のみに基づき、従業員の人事査定を行います。能力や業績にかかわらず、年齢や勤続年数に応じて賃金が決まる年功序列制度とは対照的な方針です。

成果主義に基づく人事評価制度では、年齢・学歴・勤続年数・経験などは一切考慮されず、ただ結果だけが求められます。成果主義は営業職をはじめ、結果を数値的指標で示しやすい職種に対して、特に有用な評価方法といえます。

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国内でも成果主義が注目されるようになった背景

成果主義は海外でこそ一般的な評価方法でしたが、日本で本格的に注目されだしたのは1990年代に入ってからです。当時の日本はバブル崩壊をきっかけに、多くの企業が業績を悪化させていました。

これにより終身雇用制度は実質的に崩壊し、年功序列制度を見直す企業が次々と出てきました。つまり成果主義は、年功序列制度において無駄に発生していた人件費を削減する方法として、日本企業に導入され始めたのです。

また、バブル崩壊は契約社員や派遣社員など、労働形態の多様化も引き起こしました。こうした非正規社員の雇用サイクルは比較的短期間で切り替わるため、終身雇用を前提とした年功序列制度は適用しづらく、こうした点から成果主義を導入する企業も存在しました。

さらに2019年、政府が少子高齢化による労働者人口の低下に備え、「働き方改革」の推進を本格的に開始しました。それと同時に、企業には長時間労働の是正が要請され、業務効率化や生産性の向上など、「いかに効率的に成果を産出するか」が社会的に重視されるようになりました。

そして2020年から2021年現在にかけては、新型コロナウイルスの感染予防対策としてテレワークを導入する企業が急増しています。社員それぞれが各自の自宅から勤務するテレワークでは、これまで主な評価軸だった勤怠態度や勤務時間などが、従来通りの仕方ではチェックできません。そこで、プロセスよりも結果重視の成果主義に注目する企業が再び増え始めたのです。

このように成果主義は、日本において「バブル崩壊」「少子高齢化」「新型コロナウイルスのパンデミック」という3つの社会問題を背景に広がったといえます。

年功序列との違い

成果主義としばしば対比される評価方法として、年功序列制度が挙げられます。先述した通り、年功序列制度は従業員の勤続年数や年齢を評価基準とする考え方です。

年功序列制度では、成果主義のように成果と評価が連動しないため、「貢献度は低いのに高給の年配社員」や「貢献度が高いのに薄給の若手社員」などが生じやすく、貢献度の高い若手社員が不公平感を抱きやすいという欠点がありました。

年功序列制度はその性質上、従業員の離職防止効果が高いという利点はあるものの、人件費におけるコストパフォーマンスの最適化という面ではやはり問題が大きく、企業に重い財政負担を強いるものといえます。

ジョブ型雇用との違い

成果主義と混同されやすい人事関係の概念として、「ジョブ型雇用」が挙げられます。ジョブ型雇用とは、職務内容を明確に規定したうえで労働者を採用する雇用契約方法です。その性質上、企業は最初に定めた職務範囲外の業務を従業員に強要できない一方、該当の職務の必要性が薄れた場合は、その従業員を解雇しやすいという特徴があります。

ジョブ型雇用は、業務内容に給与や役職などの待遇が直結しているという点で、成果主義と似た考え方であるといえます。ただし、ジョブ型雇用はあくまでも「採用手法」として実施されるものであり、給与や役職なども雇用段階ですでに定められています。

他方、成果主義は従業員が実際に達成した成果にフォーカスし、その人の働きぶりを査定する「評価方法」です。それゆえ、雇用契約制度の一種であるジョブ型雇用と、人事評価制度の一種である制度主義では、そもそも属する制度区分が異なります。

成果主義のメリット

成果主義の導入には、企業にとって主に以下のようなメリットがあります。

仕事への意欲を向上できる

成果主義は勤続年数などに左右されず、成果を上げれば上げるほど高い評価を受けられる制度なので、従業員の仕事への意欲を向上できます。たとえば、年功序列制度では不利になっていた若く有能な社員でも、頑張って努力すれば昇給や昇進が可能です。そのため、成果主義が適切に運用されている場合、社員はより高い評価を求め、さらに企業へ貢献しようと奮起する好循環が生まれます。また、成果主義は社員間の競争意識を高め、お互いによい刺激を与え合うことが期待できます。

生産性が上がる

成果主義には、従業員の生産性が上がりやすいという利点もあります。年功序列制度では、成果を上げなくても勤続年数の経過とともに高い給与が望めるため、生産性が向上しにくいという側面がありました。その点、成果主義では成果が会社からの評価や報酬に直結するため、作業の効率性を重視する社員が増え、生産性の向上が期待できます。

日本企業は先進諸国と比べて労働生産性が低いことで知られますが、将来的に少子高齢化が深刻化していく状況を鑑みれば、人海戦術でそれをカバーすることは今後難しくなってくるでしょう。それを踏まえると、労働生産性の向上に寄与する成果主義の導入は、企業にとってメリットが大きいものといえます。

人件費の適正化を図れる

成果主義における給与基準は基本的に、能力や成果に見合った設定となるため、人件費の適正化をしやすいというメリットもあります。人件費の適正化によって、より生産性の高い分野に資金を再分配できるため、業績改善にも効果的です。

人材育成・確保につながる

能力や成果が評価や報酬に直結する成果主義は、従業員の向上心を高めやすく、社員自らがスキルアップに励む土壌を構築できるため、人材育成効果も見込めます。また、成果主義は生産性の高い人材ほど恩恵を受ける制度ゆえ、求人募集などで成果主義の導入をアピールすることで、生産性や労働意欲の高い人材を呼び込みやすい利点もあります。

成果主義のデメリット

このように、成果主義には数多くのメリットがある一方、いくつかデメリットもあります。

個人主義が強まる

成果主義を導入することによって、従業員は目に見える成果に固執しやすくなってしまい、裏方の評価につながりにくい仕事を避けたり、ほかの同僚のフォローを怠ったりと、悪い意味で個人主義が強まる可能性があります。成果主義は従業員間の競争意識を刺激しやすい方法ですが、それが裏目に出るとチームより自分の業績を優先したり、有用なノウハウを他メンバーと共有しなかったりするなど、従業員を利己的な行動に走らせてしまう場合もあるかもしれません。

常にプレッシャーを感じる

成果主義において、従業員は常に一定の成果を出していかなければならないので、プレッシャーを感じやすいというデメリットもあります。競争についていけず疲弊する人や、スランプに陥って意欲が下がってしまう人なども出てくる可能性があるでしょう。

また、過度の成果主義に陥った職場は雰囲気もギスギスしやすく、職場に居心地の悪さを感じる従業員が出てきてしまうかもしれません。成果主義に疲れた人材や、成果主義が肌に合わない人材は最悪の場合、離職してしまう可能性もあります。

仕事内容によっては評価基準を設定しづらい

仕事内容によっては評価基準を設定しづらいことも、成果主義を導入するうえで注意すべきポイントです。たとえば営業職の場合、「売上額」や「契約件数」など比較的短期間で定量的な成果を示しやすいため、成果主義との相性は良好といえます。しかし、研究職のように結果が出るまで長期間を要する仕事や、成果を数字などで表しにくいバックオフィス業務などの場合は、かえって正当な評価ができなくなるおそれもあります。

成果主義をうまく浸透させるポイント

前述したように、成果主義を導入することで、かえって職場に大きな副作用をもたらしてしまうケースもあります。こうした事態を避け、成果主義を社内でうまく運用していくためには、以下の点に注意する必要があります。

評価基準を明確にする

成果主義を導入する際は、どのような項目でどの程度達成すると、どういう評価が得られるのかについて、客観的な指標を作成する必要があります。特に気をつけるべきは、評価の難易度が適切かどうかです。どうやっても達成できないような数字を目標値にすると、評価方法としての公正性を欠き、従業員はかえってモチベーションを落としてしまうでしょう。

また、前項で挙げたように、組織の中には成果主義を適用しづらい職務内容や役職も存在します。それらも適切に評価できるよう、場合によっては部署や役職ごとに評価基準をカスタマイズする必要があります。その際は、「なるべく評価基準を定量化すること」「定量化できない場合でも、誰が見ても公平性を担保できるような基準を慎重に検討すること」が大切です。たとえばバックオフィス系の部署では、業務遂行の「正確さ」「迅速さ」「対応力」などが評価基準として考えられるでしょう。

評価基準を社員にも共有する

評価基準を設定したら、その内容は社員にも周知・共有しなくてはいけません。どのような成果を上げれば評価してもらえるのかを確認することで、従業員は取り組むべき業務内容や努力の方向性を明確化でき、実際に下された評価にも納得感を持ちやすくなります。

目標達成状況やプロセスも評価する

成果主義といえども、目標達成状況やプロセスを評価項目に入れる余地を一定量残しておくことも大切です。先述したように、成果主義の導入によって従業員が個人プレーに走ったり、情報共有を避けたりする可能性もあります。そうしたリスクを軽減するために、上司が部下の目標達成状況を適宜チェックしたり、数字としては見えにくいプロセスなどもある程度評価に組み込んだりしたほうがベターです。その際のマネジメント方法としては、組織・チーム・個人の目標をリンクさせる目標管理方法「OKR」の活用がおすすめです。

まとめ

成果主義は達成した成果に応じて評価を行うため、従業員の生産性を上げられるほか、実力のある社員に対して納得感を与えやすいなどのメリットがあります。しかし、その反面、極端に成果主義を運用してしまうと個人プレーが横行してしまうリスクもあり、仕事内容によっては従業員を適正に評価できない場合もあります。それゆえ成果主義を導入する場合であっても、プロセス評価も一定量残したほうが賢明です。

社員一人ひとりの仕事状況を「見える化」し、チームの連携を助けるマネジメントツール「Asana」を使えば、テレワーク環境であっても、個々の社員の業務プロセスを管理できます。テレワークにおける従業員のマネジメント方法にお悩みの方は、人事評価方法の見直しと併せてAsanaの導入もご検討ください。

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