従業員エンゲージメントとは?その概要や指標について解説

 2021.08.24  2022.09.05

「従業員エンゲージメント」とは、従業員が自社に愛着を持ち、自ら積極的に職務に従事する意欲を持った状態を指す言葉です。終身雇用制度が崩壊し、転職も当たり前になった現在、優秀な人材を企業に引き留めるために従業員エンゲージメントを高める取り組みが注目されています。そこで本記事では、従業員エンゲージメントの概要や指標について解説します。

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従業員エンゲージメントとは

「従業員エンゲージメント」とは、従業員が自分の仕事に対して感じる熱意や献身の度合いを表すビジネスマネジメント用語です。

従業員エンゲージメントが高い従業員は、職場や職務、同僚、自社の企業文化などに対してポジティブな感情的つながりを持ち、強いモチベーションを持って仕事に取り組みます。そして、会社の成功と自分の幸福感がコミットするような、高い共感性を会社に対して抱いています。多少古びた言葉に置き換えれば、「愛社精神」ともいえるでしょう。

従業員満足度との違い

従業員エンゲージメントと混同しやすい概念として、「従業員満足度」が挙げられます。従業員満足度とは、従業員が自社や現在の仕事、待遇、人間関係などに、どの程度満足しているかを示す指標です。これは一見すると従業員エンゲージメントと同じように感じるかもしれませんが、厳密には似て非なるものです。

というのも、従業員満足度はあくまで「従業員がどれだけ幸せか、満足しているか」を示すだけです。たとえば、仕事に対する満足度でいうと、人によっては「できる限り楽をして給料をもらうこと」を意味する場合もあるでしょう。それゆえ従業員満足度は、自社に対して積極的に貢献したいというモチベーションも含んだ概念である従業員エンゲージメントと同一視できるものではありません。惰性で仕事をするのではなく、自発的にトップパフォーマンスを発揮してもらうために、従業員エンゲージメントを高める必要があるのです。

従業員エンゲージメントが注目される背景

従業員エンゲージメントが注目されている理由は、主に「人材の流動化」と「価値観の多様化」の2つの観点から論じられます。

まず、現在の日本はバブル崩壊以来、実質的に終身雇用制度が崩壊し、年功序列的な評価方法から成果主義ないしは実力主義へと移行する企業が増えています。こうした流れに従って、労働者側の傾向としても、「生涯1つの企業で働き続けるのが当然」という従来の考え方も廃れつつあるといえるでしょう。現在の労働者は、よりよい待遇や環境を手に入れるためのキャリアアップの手段として、転職も当然視野に入れるようになっており、人材が流動化しています。

また、上記とも関連して、若い世代を中心に働き方に対する価値観が多様化してきていることも、従業員エンゲージメントが重要視されている大きな要因です。現代の労働者の傾向として、昇給や出世よりも、自分が働くことの意義や働きがいを重視する人が増えてきています。逆にいえば、そうしたモチベーションを自社に対して感じてもらえない場合、入社した会社の組織風土や仕事の内容が自分に合わないと感じたら、すぐに辞められてしまうことも少なくありません。

企業社会において従業員エンゲージメントへの関心が高まっているのは、上記のような社会状況を反映し、自社の優秀なトップパフォーマーの流出を防ぐとともに、新たに優秀な人材の流入を促進するためといえるでしょう。

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従業員エンゲージメント向上で得られる効果

では、従業員エンゲージメントを向上させることによって、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。以下では、従業員エンゲージメントの向上によって得られる効果について解説していきます。

業績の向上

従業員エンゲージメントの向上が従業員のパフォーマンスに好影響を与えることは、さまざまな研究によって明らかとなっています。従業員エンゲージメントの高い従業員は、自社の事業課題に対して強い関心を持ち、主体的に仕事に取り組みます。それゆえ従業員エンゲージメントの向上は、自然と企業の業績の向上にもつながり、企業が成長とイノベーションを実現していくための重要な要因になり得ます。

離職率の低下

従業員エンゲージメントの向上は、離職率を低下させる効果も期待されています。先述したように、現在多くの企業では、社員の転職や早期離職が課題になっています。こうした状況下において、待遇面の改善など会社への愛着や働きがいを高める施策は、従業員を引き留める手段として多くのメリットをもたらします。実際、従業員エンゲージメントが高い組織は、そうではない組織と比べて離職率が87%も減少するという海外のデータもあります。

顧客エンゲージメントの向上

従業員エンゲージメントの向上は、顧客エンゲージメント(顧客満足度)の向上にも寄与します。従業員エンゲージメントの高い社員は自分の仕事にやりがいを感じて、熱心に業務を行います。その結果、仕事やサービスは自然とクオリティの高いものになり、顧客エンゲージメントの向上につながるのです。

日本企業の従業員エンゲージメントの現状

上記のようなメリットがあるにも関わらず、他国に比べて日本の企業では、従業員エンゲージメントの効果が適切に理解され、十分に重視されているとはいえません。現に、米国のギャラップ社が2017年に実施した調査によると、日本企業の従業員エンゲージメントは139カ国中132位と、最下位レベルの成績となっています。

先述のように従業員エンゲージメントは、従業員ひいては企業の生産性にも関わっているため、従業員エンゲージメントの軽視は個人や一企業の問題を超え、日本の国際競争力の低下さえ引き起こしかねないリスクを抱えているといえるでしょう。

従業員エンゲージメントを高めないとどうなる?

では、従業員エンゲージメントの低い企業は、どのような事態を招くことになるのでしょうか。

従業員エンゲージメントの低下が引き起こす第一の問題は、従業員のモチベーションがコントロールできないことです。従業員エンゲージメントの低い従業員にとって、仕事は「やらされていること」に過ぎないため、最低限のパフォーマンスしか発揮しようとしません。その結果、職場全体の士気の低下や業績悪化なども危惧されます。

また、従業員エンゲージメントは自社への愛着などにも関わるため、低下すると新入社員の早期退職も含めた離職率の向上につながるリスクがあります。すなわち、従業員エンゲージメントの低下は、会社の成長や安定的持続を阻害する要因になりかねません。

従業員エンゲージメントを高めるには

このように従業員エンゲージメントの低下は、企業にとってさまざまなリスクを孕むものです。それでは逆に、そうした事態を避けるべく従業員エンゲージメントを高めるには、一体どのようなことに取り組めばよいのでしょうか。

ビジョンを共有する

従業員エンゲージメントを高めるための第一の方法は、企業と従業員の間で企業理念などのビジョンを共有することです。すでに触れたように、従業員エンゲージメントは会社に対する共感度なども含めた概念です。しかし、「自社がそもそもどのような理念を持った企業なのか」「自社の事業にはどういった意義があるのか」などについて基本的な理解がなければ、従業員は会社や仕事に対して共感性を持ちようがありません。

従業員エンゲージメントを高めるためには、新入社員の研修段階や入社前研修などの段階から、自社がどのような方向を目指しているのかを従業員に発信することが大切です。また、人事評価の評価項目を明確にするなどして、自社がどのような人材を求めているのかを明らかにすることも、効果が見込めます。これにより、従業員は目的意識を持って業務に当たりやすくなり、自然と従業員エンゲージメントを高めることにもなるでしょう。

働きやすい環境をつくる

職場において良好な人間関係を築いたり、悩みなどを相談しやすい環境を作ったりするのも効果的です。職場の雰囲気が悪い状況では、気持ちよく働けません。必要なときに素早くフォローし合えるような体制を作るためにも、日頃から職場全体のコミュニケーションをとりやすい状態にしておくことが大切です。

また、テレワークやフレックスタイムの導入などによるワークライフバランスの改善や、従業員一人ひとりのライフスタイルに合わせた多様な働き方を可能にする「働き方改革」の実施も、効果的といえるでしょう。

適切な人材配置・人材評価を行う

従業員エンゲージメントの向上のためには、適切な評価や報酬も欠かせません。いくらやりがいのある仕事でも、賃金や福利厚生などの基本的な労働条件が劣悪では、従業員の不満は避けられないでしょう。また、従業員が自分の能力や適性を活かせないと感じるような人材配置を行うことも、従業員エンゲージメントの低下を引き起こします。

もし労働環境や人材配置などに不備があるような場合は、まずはそこから改善に取り組む必要があります。さらに成果や能力に応じて、適切に昇給・昇進といった措置を取れるようにすることも、従業員エンゲージメントを高めるためには重要です。

従業員エンゲージメントを測る方法

従業員エンゲージメントを高めるためには、まず現状把握から始めるのが大切です。従業員エンゲージメントを客観的に調べる方法としては、「エンゲージメントサーベイ」が挙げられます。

エンゲージメントサーベイとは、従業員と企業間のエンゲージメント状態を数値化し、現状を把握する社内調査のことです。エンゲージメントサーベイは、たとえば「会社の使命や目的に共感している」「職場で自分が何を期待されているか知っている」「成長機会を与えられている」などの質問項目によって構成されており、従業員の現状について詳しく把握することが可能です。

従業員エンゲージメントを継続的に向上させていくためには、エンゲージメントサーベイによる現状調査から始め、次いで効果的な施策を検討・実施するという仕方で、PCDAサイクルを回していくことが大切です。

まとめ

従業員エンゲージメントの向上は、従業員の生産性を高めるだけでなく、企業で長く活躍してもらうためにも重要です。従業員エンゲージメントを向上させるためには、ビジョンの共有や働きやすい職場づくりのほか、適材適所の人材配置や適切な人事評価の実施が必須です。

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