日本の建築業における現状と課題とは?今後進めるべき対策

 2023.04.19  ワークマネジメント オンライン編集部

現在、日本の建設業にはどのような課題があるのでしょうか。本記事では、日本の建設業が抱える複数の課題や、建設業界が今後進めるべき対策について解説します。課題と対策のポイントを押さえて、具体的な取り組みを行いましょう。

日本の建築業における現状と課題とは?今後進めるべき対策

日本の建設業における現状と課題

現在、日本の建設業には、総実労働時間、年間の出勤日数、就業者の年齢構成、就業者数など、多くの課題があります。

労働時間

課題のひとつとして挙げられるのが労働時間の長さです。国土交通省による「建設業の働き方改革の現状と課題」では、建設業における2020年度の年間総実労働時間は1,985時間です。これは、製造業の1,838時間に比べて147時間、調査対象全産業平均の1,621時間に比べて364時間も長く、全産業平均とは約2割も労働時間が異なります。

さらに2007年度の労働時間と比較すると、全産業平均が1,807時間から2020年度には186時間減少しているのに対し、建設業では2,065時間であり、減少幅は80時間にとどまっています。建設業における長時間労働の問題は、長年解決されていないことがわかります。

年間出勤日数

労働時間に加えて、年間出勤日数の多さも問題です。「建設業の働き方改革の現状と課題」によると、2020年度の建設業の年間出勤日数は244日です。224日の製造業よりも20日、212日の全産業平均に比べて32日も多くなっています。

全産業平均の年間出勤日数は2007年度の233日から2020年度には21日減少しているのに対し、建設業では244日から12日しか減少していません。

建設工事全体では、技術者の4割以上が4週4休以下で働いており、4週8休(完全週休2日)で働く技術者は、15%以下にとどまっています。

就業者の年齢層

就業者の高齢化問題はほぼすべての産業に該当しますが、建設業ではより深刻です。「建設業の働き方改革の現状と課題」が示す建設業就業者の割合は、2020年度で55歳以上が約36.0%、29歳以下は約11.8%です。早急に若年層の就業者を確保し、次世代に技術を継承していく必要があります。

就業者数

就業者の高齢化だけではありません。就業者数が年々減少していることも大きな問題です。「建設業の働き方改革の現状と課題」が示す就業者数の推移を見れば明らかです。

建設業の就業者は、1997年度がピークで685万人でしたが、2010年度には498万人、2020年度には492万人にまで落ち込んでいます。技能者(建設工事の直接的作業を行う労働者)では、ピークの1997年度が455万人だったのに対し、2010年度は331万人、2020年度には318万人となっています。就業者数の少ない技術者(施工管理を行う者で、基本的に直接的な作業は行わない)では、1997年度の41万人に対して2010年度には31万人と25%近く減少しています。2018年度以降は多少、回復傾向を見せており、2020年度には37万人となっています。

国土交通省「建設産業の現状と課題(建設産業を取り巻く現状)」が示す試算によると、2025年度に必要な技能労働者数が333万人~379万人であるのに対して、就業者数は286万で、47万人~93万人が不足すると予測されています。

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日本の建設業界が今後進めるべき対策

日本の建設業界が抱える課題を解決するには、どのような対策が有効でしょうか。これまでに行われてきた取り組みや制度、今後さらに進めるべき対策について解説します。

人材確保

人材不足を解消するには、人材確保のための取り組みや制度を策定し、実施することが必要です。

例えば、2020年10月に施行された改正建設業法により、2021年度からの技術検定試験の構成や受験資格などが見直されました。従来の技術検定制度では、技士になるために学科試験と実地試験の両方に合格しなければなりませんでしたが、今回の見直しで技士補制度が創設されたことにより、状況が変わりました。以降は、第1次検定に合格すれば技士補の資格が、第2次試験に合格すれば技士の資格が得られるようになりました。

受験資格も見直されました。技士補1級を受験するには1級相当の実務経験が必要でしたが、2級第2次検定に合格すれば、1級第1次検定を受験できるように変更されました。

さらに元請では、技士補を配置すれば監理技術者が複数の現場を兼任できるようになりました。一方、下請では、一定の要件を満たせば主任技術者の配置が不要になりました。

改正労働基準法適用への準備

就業者の確保・増加のためには、長時間労働の是正は不可欠です。2024年4月1日から、建設業にも改正労働基準法の時間外労働の上限規制が適用されます。

時間外労働の上限規制とは、時間外・休日労働をさせるならば、36協定の締結や監督署への届出を必要とするものです。法律が規定する労働時間の限度は、1日8時間、1週40時間です。さらに、毎週少なくとも1日は休日を取らなければなりません。

これまで建設業は時間外労働の上限基準の適用から除外されていましたが、2024年4月以降は、時間外労働の上限が原則、月に45時間、年間360時間となります。違反した場合には罰則が科されます。

週休2日の実施

建築業の課題を解決するには、働き方改革を実施して、就業者の待遇・環境を改善することが必要です。前述の改正労働基準法の適用に備え、建設業界では週休2日を推進しています。直轄工事(国が実施する公共事業)では、週休2日を確保するために無理のない工期を設定し、経費補正も行われています。

就業者が交代で週休2日を確保する「週休2日取得モデル工事(交代制)」の取り組みは、今後はより大規模に行われるでしょう。

社会保険の加入徹底

社会保険に加入することで、けがや病気をした際の経費や、老後の生活を支える年金を受けられます。しかし、建設業では社会保険未加入の企業・就労者が多く存在し、人手不足の原因にもなっています。

改正建設業法では、建設業の許可・更新には社会保険への加入が要件となりました。本改正では、特に下請就業者の社会保険加入を徹底させることが狙いのひとつになっています。社会保険に未加入の建設企業には許可・更新が認められず、行政からの指導が入ります。

労働者の賃金引き上げ

「建設業の働き方改革の現状と課題」では、技能労働者の賃金水準を継続的に引き上げる必要があると提言されています。全国建設業協会の「令和3年度事業計画」では、技能者の賃金を2%以上引き上げることを目標としています。建設業界の各団体も賃金水準の上昇を目指しています。

賃金の継続的な引き上げのためには、業務の効率化が欠かせません。煩雑な建設業のプロジェクト管理(建築プロセスの管理や監督)には、Asanaのワークマネジメントプラットフォームがおすすめです。Asanaを導入すれば、タスクの所要時間や複数タスクの関係の可視化、予算の追跡、コミュニケーションなどを一元管理できます。

ICT施工の普及

ICT施工が普及することにより、生産性の大幅な向上が期待できます。ICT施工とは、建築現場にICT(情報通信技術)を導入することです。国土交通省によれば、直轄工事におけるICT施工の実施率は8割に上りますが、地方自治体では3割以下にとどまっています。さらなる普及が望まれますが、中小企業では、ICT施工のための人材や経費の捻出が難しいことがネックです。

中小企業でもICT施工を普及させるには、現場の状況に応じてICT機器を使い分け、コスト削減と生産性の向上を両立させる必要があります。「建設業の働き方改革の現状と課題」では、2025年度までに生産性を2割向上させることが目標だと謳われています。

今後の建設業のあり方を左右するのはIT技術の導入

現在、日本の建設業は長時間労働や就業者の減少・高齢化など、多くの課題を抱えています。

課題解決のためには、就業者の待遇改善や業務の効率化が必須です。就業者を取り巻く環境の改善に向けて、制度の整備や取り組みが進められています。建設業全体で、人材確保や週休2日の実施、社会保険の加入徹底などの対策が大切です。

まとめ

日本の建設業が発展を続けていくためには、人材確保や改正労働基準法適用などの問題に対して迅速かつ適切に対策していく必要があります。なかでもIT技術の導入は建設業発展の大きな鍵となります。ワークマネジメントプラットフォーム「Asana」などの有用なツールを活用すれば、業務を大幅に効率化できます。課題解決のために導入の検討をおすすめします。

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