日本の労働生産性は低い?働き方の観点から考える原因

 2020.06.19  2022.09.07

労働生産性は労働者1人当たりが生み出す産出量や産出額などの形で表され、労働の成果を示す指標として使われます。日本における労働生産性はICT活用の遅れや働き方の慣習などの事情もあり、残念ながら世界各国と比較して伸び悩んでいると言わざるを得ない部分もあります。日本で労働生産性がなかなか改善しない理由を「働き方」の観点から考察します。

日本の労働生産性は低い?働き方の観点から考える原因

労働生産性とは

企業や組織に属していると「生産性を上げる」というフレーズを耳にしない日はないくらいでしょう。生産性とは投入した資源とその資源から産出したものの比率を意味しており、資源の投入量に対して産出量が多ければ「生産性が高い」といえます。

つまり、「労働生産性」とは、投入した労働量に対して産み出した成果がどの程度であるかを示す指標です。すなわち、労働生産性が「高い」「低い」といった状態は、労働者1人当たり、あるいは労働1時間当たりの単位で生み出す生産量が「多い」「少ない」ことを示しています。

数式で表すと、

「アウトプット(生産量・付加価値の額)÷インプット(労働者数×労働時間)=労働生産性」

という形になります。

つまり、労働生産性を上げるためには、労働量が同じならば生産量や付加価値を増やす、生産量が同じならば投入する労働の量を減らす、どちらかが必要です。

この労働生産性は、業務効率化や人事評価を行う上でも欠かせない指標になっています。

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国際的な比較で低いといえる日本の労働生産性

では、日本と諸外国を労働生産性で比較した場合、どのような状況にあるのでしょうか。公益財団法人の日本生産性本部が公表している「労働生産性の国際比較2019」によると、「国民1人当たりの国内総生産(GDP)」を「就業者数」で割った就業者1人当たりの年間労働生産性は、日本では8万1258ドル(824万円)で、2018年時点のOECD加盟36ヶ国中で21位にとどまっています。また、この数値を労働1時間当たりに換算すると46.8ドル(4744円)であり、こちらも加盟36ヶ国中21位に留まっています。さらに、米、英、ドイツ、フランス、カナダ、イタリアの主要先進7ヶ国で比べると1970年から2018年まで48年間の全期間で日本は最下位となっています。

これらの状況を見るに、日本の労働生産性は他国と比較して大きく改善する余地があると言えます。

日本の労働生産性の低さが問題視される理由

いわゆる「働き方改革」に関する法案にも、生産性の改善が重要課題として盛り込まれているように、日本の労働生産性の低さは問題視されています。

「仕事の解剖学」指数に見る日本の働き方の特徴と考察
人は職場でどのように時間を使っているのか

その理由の一つに近い将来に生産年齢人口が大きく減少することがあります。

内閣府が公表した「令和元年版高齢社会白書」によると、日本の人口は2053年には1億人を割って9924万人となり、さらに2065年には9000万人を割り込んで8808万人に減少することが予測されています。うち、15歳から65歳未満の生産年齢人口を見ると、2018年時点の7545万人から2050年には5275万人に減少し、さらに2065年には4529万人まで減少すると予測されています。

生産年齢人口の総数が減少すれば、労働力の総量も低下して生産量が減少することは疑いの余地がありません。このような条件下で、現状の経済水準や生活水準を維持するには、労働者一人当たり、労働時間1時間当たりの労働生産性を高めることが有効な解決方法となります。

出典:内閣府「令和元年版高齢社会白書 高齢化の現状と将来像」

日本の労働生産性が低い原因とは?働き方の観点から考えられること

働き方の観点から日本の労働生産性が他国と比べて低い理由を考察すると、次の3点が原因として挙げられます。

労働時間の問題

日本の従業員の労働時間は長いと言われていますが、実際にはどのようになっているのでしょうか?

プロジェクト管理ツールを提供している「Asana Japan(アサナ ジャパン)」が世界6ヶ国の知識労働者(ナレッジワーカー)1万223人を対象として働き方に関する調査を行った「仕事の解剖学」の結果によると、日本ではナレッジワーカーの労働時間が週に38時間32分と最も長く、残業時間は1日平均1時間11分で、残業するナレッジワーカーの割合も他国に比べて非常に高くなっています。

他にも、日本では効率的な仕事ができていると回答した割合が6カ国平均の70%に対し54%と開きがあり、自分の専門スキルを生かして業務に集中できていると回答した割合はわずか40%に留まっています。

これらの効率性を欠いた仕事の進め方も、日本の働き方の大きな課題である長時間労働やサービス残業がなくならない根本的な原因の一つであると言えるでしょう。

仕事へのICT活用の問題

業務においてICT(情報通信技術)の活用が進んでいないことも日本の労働環境の課題の一つに挙げられます。

総務省が発表した「平成30年版情報通信白書」によると、日本、米、英、ドイツの4か国で情報通信ネットワークなどの基本的なICT基盤を「導入済み」と回答した割合は70.2%で、他の3か国と比較して10~25ポイント低い水準に留まっています。特に英国とドイツは、は導入率が90%以上と高い水準にあり、日本も導入率を同等まで引き上げることが期待されています。

また、導入済みのICTの活用状況を具体的に見てみると社外も含めたネットワークの構築、BYOD(私的デバイスの業務利用)が可能な環境の整備、ECサイトやSNSの活用といった点で後れを取っていることも明らかになっており、ICTの活用が進んでいないことも労働生産性が上がらない要因の一つになっていると指摘する声もあります。

出典:総務省「平成30年版情報通信白書」各国企業のICT導入状況

非効率・無駄ともいえる慣習の問題

また、Asana Japanの「仕事の解剖学」では、日本のナレッジワーカーはいわゆる「仕事のための仕事」と認識される業務が多いことが報告されています。これら「仕事のための仕事」は調査対象6か国の平均では28%であるのに対し、日本では59%と他国の2倍以上で、これらの業務の存在が生産性の低下を招いているにもかかわらず、それが正確に認識されていないことも指摘しています。

加えて、日本ではルーティーンワークに週3時間以上費やしているにもかかわらず、5人に2はタスクの配分や管理を行っていないと回答しています。また、タスク管理ソフトの使用率が低く、手書きのタスクリストの使用率が高いなど非効率な労働状況も多く存在しています。これらの慣習もまた、労働生産性の向上を阻害している原因になっていると言えます。

働き方改革と日本における労働生産性の今後

日本国内でも働き方改革関連法案の成立を受け、リモートワークなども増加しつつあり働き方が変わろうとしています。働き方改革は労働生産性を向上させて国際競争力を増すことを目的とした施策です。ICTの導入を進め、労働時間に関する制度の整備と意識改革が適切に進めば、長時間労働などマイナスの要因を撤廃して、労働生産性を高められる可能性は十分にあります。

もちろん、法案が整備され労働時間の短縮が実現しても、労働生産性を実際に高めるための具体的な手法についてはまだまだ手探りの状態が続いています。また、労働時間が短くなることで、完了しないまま放り出されてしまうプロジェクトや事業が発生し、本来ならば発生するはずだった利益を失ってしまうという懸念もあります。

一方で、2020年に入り、新型コロナウイルスに関連した感染症対策の一環としてリモートワーク(テレワーク)と在宅勤務が推奨され、採用に踏み切る企業が急増しました。日本生産性本部が緊急事態宣言発令から1か月後の5月中旬に実施した「新型コロナウイルスの感染拡大が働く人の意識に及ぼす調査」によると「コロナ禍収束後もテレワークを行いたいか」の問いに対し、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と答えた人は60%以上に上っており、今後も定着していくとみられています。

直接顔を合わせずに作業を進めるリモートワークや在宅勤務では、コミュニケーションを円滑にするチャット・ビデオ会議システムなどのICTツール抜きには実現が難しいとも言えます。リモートワークの実施なども含め、現代において労働生産性を向上させるためにはICTツールを効率よく活用できるかどうかが成否を握る大きなカギとなっています。

まとめ

今回は「働き方」の観点から、労働が生み出す成果を示す指標である労働生産性について考察してきました。今後、日本の各企業がグローバルな舞台で競争力を発揮するためには労働生産性の向上が必須であることには疑いがありません。タスク管理などのICTツールを積極的に活用して、働きやすく成果を生み出しやすい環境を整え、さらなる生産性の向上を目指していくことが求められています。

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