従業員の幸福度と生産性の関係について

 2022.08.05  ワークマネジメント オンライン編集部

WORK INNOVATION SUMMIT 24

幸福度については世界的にも調査が行われるなど関心が高まっています。そのため、従業員の幸福度と生産性の関係を知りたいと考えている経営者も多いのではないでしょうか。

幸福度やウェルビーイングの意味をまず理解した上で、どのように幸福度が生産性につながるのか、幸福度を高めるために会社には何ができるかについて考えていきましょう。

従業員の幸福度と生産性の関係について

「幸福度」の定義とは

幸福度とは、経済的な豊かさに限らず、家族や社会との関わり合いを含めた総合的な豊かさを示すものです。従来は国の豊かさを表す指標として、経済的な豊かさを表すGDPが用いられてきましたが、経済的なもの以外の要素も含まれた豊かさを測るために、幸福度という指標が登場しました。

SDSNの2022年度幸福度ランキングによると、146カ国中、日本は54位でした。GDPと健康寿命のスコアは高い水準であり、前年の56位からランキングは上昇したものの、他者への寛容度(慈善団体への寄付をスコア化したもの)が低い結果となっています。

幸福度に関連して「ウェルビーイング(well-being)」という言葉も用いられます。

「Happiness」が一時的な幸せを指すことが多いのに対し、ウェルビーイングは持続的な幸せを意味する言葉です。また心身も社会的にも満たされた健康な状態を指します。

幸福度を示すウェルビーイングの5つの要素

アメリカの心理学者セリングマンは、ウェルビーイングを「PERMAの法則」という数値化できるものとして提唱しました。PERMAの法則は、幸福な状態に貢献する以下の5つの要素の頭文字から名付けられています。

  • ポジティブな感情(Positive Emotion):うれしいや楽しいといったポジティブな感情
  • 没頭した時間(Engagement):何かに没頭して積極的に取り組めること
  • ポジティブな人間関係(Relationship):他人との協力関係があること
  • 生きる意味や目的(Meaning and Purpose):生きる意味や目的があること
  • 達成(Achievement/ Accomplish):達成感があること
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従業員の幸福度は生産性につながる

従業員の幸福度が上がることで得られる効果として、以下の4つが挙げられます。

  • 出勤状況の改善
  • 離職率の低下
  • 企業魅力度の向上
  • 業務効率化
これらの効果により、自社の生産性を高められるでしょう。

出勤状況がよくなる

健康状態は幸福度と密接に関係しており、出勤状況にも直接影響するものです。心身の健康状態が悪く幸福度が低い従業員は、欠勤や遅刻・早退も多くなります。出社したとしても十分なパフォーマンスが発揮できずに、生産性が落ちてしまいます。

一方、健康状態が良く幸福度が高い従業員は出勤状況が良好で、高い生産性を保ちやすいでしょう。

離職率が低くなる

会社からの給与や評価、労働時間、将来性、人間関係なども幸福度に関わる重要な要素です。これらの要素で問題が生じると、離職の原因となります。

評価制度が適正か、子育てや介護と両立できる多様な働き方を認めているか、健康を損ねるような長時間労働になっていないか、といった点を今一度確認しましょう。適切な労務管理をすることで従業員の定着率が上がるなら、採用や教育にかかるコストを削減できます。

企業魅力度が上がる

従業員の幸福度が高い会社は、社会的にも高く評価されやすく、企業イメージも上がります。いわゆるホワイト企業として評価されている企業は、求職者にとっても魅力的なため優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。

また、幸福度が高い従業員は、取引先や顧客とも良好な関係を築きやすいものです。従業員の態度や行動によって、企業への評価がさらに高まることを期待できます。

業務効率化につながる

従業員の幸福度が高いほど、高いパフォーマンスが期待でき、業務効率も向上します。

短期的な利益のために従業員をないがしろにして、長時間労働を強いたり、達成が困難なノルマを課したりすることは非効率です。従業員の幸福度が下がるとパフォーマンスの低下や離職率の上昇につながり、企業にとっては業務効率の低下や採用コストの上昇を招くでしょう。

企業の業務効率化を図るには、従業員個人の幸福度を上げる対策を実行するのが近道です。

従業員の幸福度向上のために会社ができること

従業員の幸福度向上のためには、ウェルビーイングの5つの要素であるPhysical、Career、Community、Social、Financialを満たす必要があります。これらを満たすためには、健康管理やモチベーション維持、エンゲージメントの向上、よい人間関係の構築、報酬を見直すことが必要です。自社に改善点はないか、チェックしてみてはいかがでしょうか。

従業員の健康管理が大事:Physical

Physical(フィジカル)とは、従業員の健康を指します。従業員の健康管理を行い、健康の基礎となる適度な運動や睡眠習慣、バランスの取れた食生活を社内でも促進することが大切です。

会社ができる従業員の健康増進の方法として、福利厚生の充実やストレスチェック制度の導入が挙げられます。

福利厚生として、人間ドックの受診補助やマッサージの割引、弁当の配送や社員食堂などを検討できるでしょう。お弁当や社員食堂で健康的な食事を安価に提供するなら、多くの従業員の健康の助けになります。

ストレスチェックにより従業員のメンタル状態を確認します。高ストレス者に医師による指導を受けさせ、配置転換や休職、労働時間短縮といった措置を取ることで、問題の悪化を防げるでしょう。

従業員のモチベーション維持のために:Career

Career(キャリア)に関する幸福度も満たされる必要があります。従業員のモチベーションを高めるためには、好きなことや必要なことに取り組む時間の確保が必要です。

時間を確保するために会社ができることとして、労働条件の見直しなどが挙げられます。フレックスタイム制やリモートワークを導入し、ワークライフバランスを実現しやすい環境作りをしましょう。

仕事のモチベーションを高めるために、社員教育やマネジメント教育の充実、経営ビジョンの共有を推進できます。

従業員エンゲージメントの向上:Community

従業員のエンゲージメント(仕事へ前向きに取り組む意欲)が高まるなら、チームとしての結束が強まり、職場が心地よいCommunity(コミュニティ)になります。

エンゲージメントは、経営ビジョンへの共感やリーダーシップによりもたらされるため、経営ビジョンを浸透させ、リーダーは従業員の力を発揮できるように配慮することが重要です。

会社組織人事評価制度も、経営ビジョンに沿った一貫性のあるものにするなら、従業員の信頼を得られるでしょう。自分の働きや能力が正当に評価されていることを感じられるなら、意欲的に業務に取り組むようになります。

よい人間関係:Social

人間関係でより良い関係を築くことで、Social(ソーシャル)面の必要を満たせます。社内における良い人間関係の形成によってチームワークが高まり、生産性が向上するとともに、チームに貢献したいという想いが強くなることで、従業員のエンゲージメントも向上します。

良い人間関係を築くために会社ができることとして、誰もが働きやすいと思えるようにダイバーシティへ取り組むことや、仕事終わりに従業員が交流できるようにノー残業デーを設けることができます。人間関係において適度な距離が取れるように、リモートワークやリフレッシュ休暇を導入するのもよいでしょう。

金銭報酬と非金銭報酬:Financial

経済的な幸福度であるFinancial(ファイナンシャル)を会社で高めるために、成果に応じて報酬を与えるなど、金銭的な報酬で従業員に報いることが必要です。ただし、金銭的な報酬だけで幸福度を満たすのは、経営面で現実的ではありません。また、金銭的な報酬は一時的な幸福度に留まりやすく、持続しにくいものです。

金銭報酬の頻度を調整し、非金銭報酬である賞賛や表彰、重要プロジェクトへの参画などによって、従業員の承認欲求を満たすことでカバーすることもひとつの方法でしょう。

まとめ

従業員の幸福度を高めることは生産性の向上につながるため、社員の幸福度を上げる取り組みを積極的に行う必要があります。幸福度を高めるために会社ができることとして、フレックスタイム制やリモートワークの導入による多様な働き方の実現、福利厚生の充実、人事評価制度の改善などが挙げられます。

仕事を一元管理できるツール「Asana」の導入で、リモートワークなどで離れた環境にいても、業務やコミュニケーションを円滑化でき、幸福度を高める一助となるでしょう。

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