プロジェクトには期日があります。プロジェクトリーダーや管理者は、全てのタスクを洗い出し、納期に間に合うように全容を把握しながら進捗を管理しなければなりません。その際に重要なのが「タスクの依存関係」と「後工程に大きく影響するタスク」を把握するためのクリティカルパスです。しかし、進捗管理を行うポジションについている人でもクリティカルパスがよくわからないという人も少なくありません。そこで本コラムでは、そもそもクリティカルパスとは何なのか、クリティカルパスを理解するメリットから、その書き方と求め方の手順を解説します。
クリティカルパスとは
クリティカルパスとは、プロジェクトをタスクに細分化して経路化したときに「重大な影響がでる経路」のことです。
クリティカルパスを知るには、工数がかかるタスクや、タスク同士の依存関係を把握する必要があります。工数がかかるタスクとは、複雑な仕組みのプログラム作成や、多くのエビデンス調査を必要とするタスクなどです。また、タスク同士の依存関係とは、タスクAが終わらなければタスクBを始められないなど、順番に進めなければならないタスクのことを指します。
例えば家を建てる場合を考えてみましょう。家を建てるためには、土地の確保や基礎工事、柱や屋根、窓や玄関の部材などを決定して集めなければなりません。これら、必要な作業の一つひとつがタスクです。また、家を建てる順番としては、土地に基礎工事をして柱を立てて、屋根や壁を作った後に窓や玄関などを設置します。このとき、基礎工事が完了するまでは柱が立てられませんし、壁が完成しなければ窓は設置できません。このように、「これ」をしないと「あれ」ができないという作業工程の関係が依存関係です。
そして、基礎工事が遅れれば柱を立てるのが遅れる、壁を作るのが遅れれば窓の設置が遅れるなど、前のタスクが遅れると後のタスクに大きな影響がでてしまう経路(順番)をクリティカルパスといいます。
クリティカルパスを把握しておくことで、納期までにプロジェクトを完了させるための重要なポイントが見えてくるため、前のタスクが遅れそうな場合には作業員を増員したり、後のタスク日程を調整したりするなどの臨機応変な対応が可能となるのです。
クリティカルパスを理解するメリット
クリティカルパスを理解することで、プロジェクトの進行に重大な影響がでそうなタスクの予測や、遅延がでたときのリカバリー手段の検討などができるようになるメリットがあります。
ここでは、3つのメリットを見ていきましょう。
遅延原因の事前予測ができる
クリティカルパスを把握することで、工数のかかるタスクや依存関係が可視化されるので、遅延原因となりうるタスクが事前にわかります。重いタスクの部分には、軽いタスクのメンバーをフォローに回すなどの施策を、事前にシミュレーションしておくことも可能です。
例えば、システムを構築する場合です。機能ごとにタスクをメンバーに割り振りますが、中には複雑な機能を担当するメンバーもでてきます。このとき、クリティカルパスを事前に把握しておけば、複雑な機能を作る際に予想よりも工数がかかるかもしれないという予測が立てられますので、あらかじめスキルの高いメンバーを配置するなどの対策が立てられます。
遅延原因となりうるタスクの事前予測ができるということは、プロジェクト全体の遅延を回避するための施策を事前に検討できるということです。
リカバリー手段の検討ができる
事前にクリティカルパスを把握しておけば、万が一のタスク遅延に対しても、冷静にリカバリー手段を検討できます。
プロジェクトが進行する中、やはりクリティカルパスの部分で遅延がでるようであれば、事前シミュレーションした通りにタスクをメンバー同士でフォローしたり、プロジェクト日程の調整をしたりできるのです。
例えば、上述したシステムを構築する場合です。複雑な機能を作る際に予想よりも工数がかかるかもしれないという予測が立ちますので、ほかのメンバーをそのタスクのヘルプへ回す体制を整えておくことも可能でしょう。
プロジェクト全体の効率的なスケジュール管理ができる
プロジェクト全体の流れとクリティカルパスの把握により、クリティカルパス以外のタスクで納期あるいは工数を調整するなど、効率的なスケジュール管理ができます。
例えば、クリティカルパスを把握しておけば、スケジュール短縮のための最短工数を知ることもできるのです。
クリティカルパスから導き出せるものとして、以下タスクの開始・終了があります。
- ES(Early Start):最短でタスクを開始できる期間
- EF(Early Finish):最短でタスクを完了できる期間
- LS(Late Start):最遅でタスクを開始する期間
- LF(Late Finish):最遅でタスクが終了する期間
これらを把握することで、プロジェクトの完了が前倒しにできる可能性や遅延する可能性の要因を導き出せます。
クリティカルパスの書き方・求め方・使い方の手順
それでは、クリティカルパスの書き方と求め方について、手順を追って見ていきましょう。
1.プロジェクトタスクの洗い出し
まずは、プロジェクトを完了させるために必要なタスクを洗い出します。クリティカルパスのためには、この工程が最も重要です。プロジェクト全体を把握してタスクを細分化することで、各タスクで必要な工数(日数)が把握できます。
以下、タスクを細分化して、それぞれのタスクが完了するまでの日数を洗い出した例です。
例)
タスク |
タスクが完了するまでの日数 |
タスク1 |
1日 |
タスク2 |
3日 |
タスク3 |
4日 |
タスク4 |
7日 |
タスク5 |
8日 |
完了 |
9日 |
2.PERT図の作成
洗い出したタスクはPERT図にて可視化します。PERT図とはプロジェクトマネジメント手法に活用されるものです。
PERT図を作成することで、プロジェクトに必要なタスクの処理順序を、ネットワーク図やフローチャート図として可視化できます。タスクが図として可視化されることで、プロジェクトが開始されてから完了するまでのタスクの流れや依存関係が図式化されるため、とても見やすくなるのです。
PERT図の書き方は以下のようになります。例として、上述の表のタスク日程でタスクが完了するまでの日数を示した図としています。
3.クリティカルパスの特定
PERT図が完成すると、タスクの順序や依存関係が明確化しますので、それぞれのタスクの重み(工数・日数)を考慮してクリティカルパスを特定します。
例えば、上述のPERT図からクリティカルパスを特定するならば、最も完了日数を要する「タスク2→タスク4→タスク5→タスク6」の経路がクリティカルパスであると判断できるのです。
このクリティカルパスは、以下のような判断材料として使えます。
- タスク5を開始できるのは、タスク2・タスク3・タスク4が完了してからである
- タスク5を開始できるのは、最短でも8日後である
- タスク2は、比較的工数に余裕をもたせることができる
- タスク3およびタスク4でトラブルが発生した場合、プロジェクトが遅延する可能性がある
- タスク2の完了後、タスク3およびタスク4のヘルプとして人材を配置できる可能性がある
などです。
このようにクリティカルパスを使って全体を見渡し、プロジェクトを進行していくことでリスク管理や効率化に役立ちます。
クリティカルパスを導き出せるツール
クリティカルパスは、手書きやスプレッドシートでも容易に作成できますが、プロジェクト全体をツールで管理するならば、クリティカルパスも導き出せるツールを利用すると効率的です。
プロジェクト管理ツールは多くの選択肢がありますが、例えばAsanaは、プロジェクト管理ができるクラウドサービスで、リストビューやタイムライン、ボードなどさまざまな形式でタスク管理が行えます。プロジェクトのグリッドビューレイアウトでは、チームでプロジェクトのタイムラインやクリティカルパス、タスクの期間や依存関係などが確認できるなど、プロジェクト管理に必要な機能を簡単な操作で効率的に行える特徴をもっています。
プロジェクト管理を効率的に、かつ視覚的にもわかりやすく行うためにも、タスク管理はもちろん、タスク同士の依存関係やクリティカルパスを簡単に可視化できるツールを利用することをおすすめします。
まとめ
クリティカルパスは、プロジェクト管理において重要なものです。細かなタスクの把握や進捗管理は、クリティカルパスを把握することでさらに効率的な管理が可能になります。また、プロジェクト管理の要所で臨機応変なリソースの差配やフォローをするためには、プロジェクト全体における「重大な影響がでる経路」を事前に把握しておくことが大切です。
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