ナレッジマネジメントとは?暗黙知を形式知化するSECIモデルも解説

 2021.10.04  2022.09.05

WORK INNOVATION SUMMIT 24

企業の持続的成長を実現するうえで重要なのが、各従業員の知識を共有し、継承・発展させていく「ナレッジマネジメント」です。本記事では、ナレッジマネジメントの概要やメリット、ナレッジマネジメントを可能にするフレームワーク「SECIモデル」について解説します。

ナレッジマネジメントとは?暗黙知を形式知化するSECIモデルも解説

ナレッジマネジメントの意味

「ナレッジマネジメント」とは、組織やその構成員が持っている知識・経験・ノウハウなどを、企業内で共有するためのマネジメント手法を意味します。

ナレッジマネジメントにおける「ナレッジ」は、「暗黙知(tacit knowledge)」「形式知(explicit knowledge)」という2つの知に大別されます。暗黙知とは、簡単にいえば、制度やマニュアルに落とし込まれていない知識のことです。たとえば経験則や勘、職人技のような言語化されづらい知識がこれに当たります。あるいは、個人に内在する知識だけでなく、現場における「暗黙の了解」など、何となくでしか共有されていない集団の知を含む場合もあります。他方、形式知は逆に、すでにマニュアルや制度として明文化され、組織内で共有可能となっている知識を指します。

ナレッジマネジメントにおいて要点となるのは、いかにして組織内に隠れた暗黙知を明らかにし、それを形式知に変えていくかという点です。暗黙知は個人に依存していることが多く、その存在すら認識されていないこともあるため、それを身につけた従業員が退職するとともに、企業から消えてしまうおそれがあります。しかし、組織が成功を収めたり、普段の業務を円滑に進めたりするためには、暗黙知が隠れたキーファクターとなることも少なくありません。それゆえ、その存在を発見してマニュアルなどに落とし込んで共有し、組織内で継承していく方法が大きなテーマとなるのです。

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ナレッジマネジメントの効果・メリット

前項で述べたように、ナレッジマネジメントを実施することで、企業はこれまで明文化されていなかった暗黙知を広く社内で共有し、組織の改善に役立てることが可能です。

たとえばマニュアルには、「何をやるのか」は書かれているものの、それを「どのようにやるのか」は十分に記載されておらず、業務の進め方や効率が人によってばらばらになっていることがあります。極端な例をいえば、「Wordで文書を作成したら誤字脱字のチェックをすること」というルールがあっても、「それをするには校閲機能を使えばいい」という知識が共有されていなければ、PCスキルの乏しい人は手作業で逐一チェック作業をしてしまうかもしれません。あるいは、取引先の気難しい担当者の機嫌を見抜くちょっとしたコツを営業部内で共有しておくことで、自分が転属や退職したあとでも、後任がスムーズに取引を継続できるかもしれません。

本人にとっては些細なこと、いうまでもないことでも、他者にとってそうでない場合は往々にしてあります。そうした各従業員が自分なりにしている工夫やノウハウ(暗黙知)を、改めて組織内で共有することで、職場全体のスキルアップや業務効率化の実現が期待できます。つまり、暗黙知を形式知化し、「個人の知」を「組織の知」とすることで、企業はこれまで各人に属人化していた業務を標準化し、組織力の強化につなげられるのです。

ナレッジマネジメントにおけるSECIモデルとは

このようにナレッジマネジメントは、組織の知を創造・発展させていく手法です。しかし、個人に内在する暗黙知を誰もが共有できる形式知に変えることは、決して容易ではありません。そこで、その方法を理解するのに役立つのが、日本の著名な経済学者・野中郁次郎氏が提唱したフレームワーク「SECIモデル」です。SECIモデルでは、暗黙知を形式知化するための各シーンを「場」と称し、下記の手順で組織の知の創造が進行すると説いています。

  • Socialization(共同化)
  • Externalization(表出化)
  • Combination(連結化)
  • Internalization(内面化)

続いては、それぞれの詳細について解説していきます。

Socialization

Socialization(共同化)は、他者の暗黙知を自分のものとして身につけたり、他者との関係の中で一緒に暗黙知をつくったりする段階です。この段階では、同じ時間や場所を他者とともにし、体験を共有することが重要とされています。共同化では他者への共感が鍵となるため、これを進行させるには五感を働かせたり、文脈やシチュエーションを共有したりといった直接的な体験が有効です。暗黙知の共同化が発生するこうしたシーンを、野中氏は「創造場」と呼んでいます。

Externalization

Externalization(表出化)は、「共同化」で身につけた暗黙知を言語や数字、図などで形式知化する段階です。共同化は直接体験を共有する人々の間でのみ通用する知の形態ですが、それを言葉に変換しようと試みる中で、暗黙知の概念化や理論化が進み、組織全体で共有できる知へと変貌していきます。表出化は、他者に暗黙知を説明しようとする場面(対話場)において行われるとされます。

Combination

Combination(連結化)は、形式知同士を連結することによって、体系的な形式知をつくる段階です。この段階で初めて暗黙知は、組織の知として現実に利用可能になります。表出化によって概念化された知は、さらにほかの概念と結びつけたり、概念的に操作されたりすることで体系的な理論となり、組織レベルでビジネスに活用できるようになります。

たとえば、新製品の開発において製品コンセプトを具体的な製品仕様に落とし込んでいく設計段階や、それぞれのインスピレーションを組み合わせて具体的な戦略(物語)を組み立てていくなどが、この段階に当たります。企業において、この連結化をどんどん進行させていった先にあるのが、いわゆる「ビジネスモデル」です。知の体系化(システム化)が行われることから、この場面は「システム場」と呼ばれます。

Internalization

Internalization(内面化)は、共有化された体系的な形式知から、再び個人的な暗黙知が生まれてくることを指します。たとえば、新しい業務マニュアルができた当初は、マニュアルを読みながらしか作業が進められない場合が多いでしょう。つまり、形式知を形式知としてしか扱えていない状態、いちいち考えながらしか業務を進められない状態がこれに当たります。

しかし、実践を繰り返していく中で、いつしかマニュアルは必要なくなり、状況に応じて自分自身の工夫をしたり、より効率的な方法を発見したりするようになります。つまり、暗黙知を土台に形式知が生まれ、その形式知を土台にしてさらに洗練された暗黙知が生まれるのです。SECIモデルにおいては、暗黙知と形式知がこのようにスパイラル的に循環することで、組織の知が継続的に発展していくと提唱されています。

ナレッジマネジメント推進のために押さえたいこと

ナレッジマネジメントを推進するには、どのような点に気をつければよいのでしょうか。まず取り組みたいのは、ナレッジマネジメントの意義について、従業員にしっかり理解してもらうことです。暗黙知は本来、個人の中に内面化された知識なので、各従業員の協力なくして実現はできません。それゆえ「業務上役立つ知識は企業にとって貴重な知的財産である」という意識を従業員に根付かせ、知識やノウハウを出し惜しみしないようにする必要があります。

また、ナレッジマネジメントを進めるためには、膨大な知識を洗い出し、それを体系化することが必要です。この作業には大きな手間がかかるので、一部の部門から段階的に始め、時間をかけて行っていくつもりでいたほうがよいでしょう。

なお、暗黙知の形式知化・体系化においては、ITツールの活用が有効です。たとえば、社内SNSなどを使ってコミュニケーションを活性化できれば、暗黙知の共有が進むことが期待できます。さらに、Excelやファイルサーバーなどに知識を取りまとめれば、情報にアクセスしやすくなります。ナレッジマネジメントを実施する際は、こうしたITツールの導入も検討してみましょう。

まとめ

ナレッジマネジメントとは、従業員個人が持っている暗黙知を形式知に変え、組織の知を創造・発展させていく手法です。

SECIモデルによると、暗黙知はまず他者との共同体験の中で生まれ、それを言語化・体系化していく中で組織の知へと変わっていきます。SECIモデルにおいて重要なのは、形式知化された暗黙知は、さらに洗練された新しい暗黙知の土台となり、スパイラル的に知が発展していくことです。

ナレッジマネジメントを実践する際は、組織内の知を共有するITツールの活用が有効です。プロジェクト管理ツールAsana」は、チーム全体の仕事状況を可視化し、組織の情報共有を促進します。ナレッジマネジメントを実施するために、ぜひ導入をご検討ください。

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