QCDとは?管理方法や改善の具体的な手順、成功のポイントを解説

 2022.01.13  2023.09.27

製造業などのプロジェクト管理において、成果物の品質やコスト効率、納期管理は不可欠な要素です。これら3つの要素を合わせた「QCD」の概念は、プロジェクトの成功にとって重要な指標となっています。本記事では、QCDとは何か、その概要や優先順位をはじめ、QCDを適切に管理し、最善の結果を出すための方法やポイントを解説します。

プロジェクト管理者が知っておきたいQCDとは?その基本を解説

QCDの意味とは

「QCD」とは、ビジネスにおいて特に重視すべき3要素の頭文字を並べた言葉で、それぞれ「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」を意味します。もともとは製造業で用いられていた言葉ですが、現在ではさまざまな業界で使われています。ソフトウェア開発のプロジェクトなど、プロジェクト管理においても重要視されていて、管理者が押さえておきたい言葉のひとつです。

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QCDの意味とは

「QCD」とは、ビジネスにおいて特に重視すべき3要素の頭文字を並べた言葉で、それぞれ「Quality(品質)」「Cost(コスト)」「Delivery(納期)」を意味します。もともとは製造業で用いられていた言葉ですが、現在ではさまざまな業界で使われています。ソフトウェア開発のプロジェクトなど、プロジェクト管理においても重要視されていて、管理者が押さえておきたい言葉のひとつです。

QCDの管理・改善の考え方

QCDは、3つの要素がそれぞれ互いに関連し合っているため、ひとつずつ個別に改善させることができません。すべてのバランスを取りながら管理・改善させる考え方が大切です。合格ラインを設けたうえで「品質」管理に努め、品質と納期への影響を考えながら「予算(コスト)」を設定し、工程を明確化しつつ適切な「スケジュール(納期)」を立てることによって、それぞれ業務改善につながります。

以下では、その前提に立ったうえで、品質・コスト・納期それぞれの管理・改善の考え方を解説します。

品質(Quality)

QCDで最も優先順位が高いのが、品質です。顧客のニーズに応えつつ売上を維持・向上するためには、製品の品質の高さが重要となります。品質を一定以上に保つには、あらかじめ合格ラインを決めておき、それに基づいたチェックを行うことが大切です。

高品質な製品づくりのために設備投資などを行うと、費用の増加につながります。また、製品のチェック項目を増やすなど品質維持のための作業を追加すると、納品までの時間が延びる場合もあるため、コスト・納期との兼ね合いに注意が必要です。

コスト(Cost)

コストを決定する際には、品質維持と納期までの余裕を考慮する必要があります。品質を落とすことなく納期までに製作するためには、どの程度のコストがかかるのか、ほかの要素とのバランスも保ちながら検討することが大切です。多少価格が高くなっても納期を優先しなければならないといったケースでは、コストの優先度は下がります。

なお、コストには原材料費などの金銭的なコストのほか、人件費などの人的コストもあります。どちらも計算に加えて予算を立てる必要があります。品質・納期や、原材料費をはじめとする市場価格などに変動があった際には、予算をオーバーしないように調整しなければなりません。

納期(Delivery)

スケジュールを立てて納期までに納品することも、プロジェクトの重要なポイントです。最初にプロジェクト開始から納品に至るまでの各工程を書き出します。そして、それぞれの工数とかかる時間を試算してから、納期までのスケジュールを立てましょう。併せて、スケジュールが遅れた際の対処方法も考えておくと安心です。

また、スケジュールの進行中も予定通りに進んでいるかどうかをこまめに確認し、納期に遅れないよう早めに調整しなければなりません。ただし、納期を優先してムリに作業スピードを上げると、品質低下につながることもあるため要注意です。

QCD管理が製造業でも必要な理由

QCD管理は、さまざまな業界で活用されていますが、とりわけ製造業において重要視されています。それはQCD管理を適切に実施することが、品質や利益率、生産プロセスの改善につながり、結果として競争力向上のカギとなるからです。以下では、製造業におけるQCD管理の重要性やメリットを解説します。

品質・利益率の向上につながる

製造業でQCD管理を行う第一の理由は、製品の品質向上と利益率の向上に直結するからです。QCD管理の目的を一言でいえば、「高品質な製品をより安価かつ迅速に生産・提供できるようにすること」です。そしてこれは、顧客から支持を受けるとともに、利益率を最大化することにつながります。そのため、QCDの考え方をもとにした管理方法は、コスト削減と高品質な商品提供を両立させ、売上や利益率の向上を実現するために重要です。

納品までの生産プロセスの最適化できる

QCDの考え方を取り入れることで、製造業における生産プロセスを最適化できるというメリットもあります。QCD管理では、品質・コスト・納期の観点から生産プロセスを多角的に見直すことで、ボトルネックになっていた問題の特定や改善を効率的に実施可能です。具体的には、これまで属人化していた作業や無駄の多かった作業の標準化・効率化を行うことで、作業品質の均一化や業務負担の軽減、納期の短縮などが期待できます。原材料の見直しや、新しい生産設備やITツールの導入を検討する際にも、QCDの観点からその有効性を評価することは非常に重要です。

他社との差別化を実現できる

製造業において競争優位性を確保するためには、競合他社との差別化は極めて重要な課題です。その点、QCD管理を通じて、自社が品質・コスト・納期のどれを重視すべきか明確化することは、市場において自社の強みをどのように打ち出していくかにつながります。

たとえば、同種の製品を提供する複数の企業が存在する場合、「どこよりも安い」「コストパフォーマンスがよい」などの特性は、大きな差別化要因になります。このように、QCDの取り組みを通じて得られた強みをアピールポイントとして明確にし、それをマーケティング戦略に取り入れることで、集客力やブランド力の強化が期待できます。

なお、競合との差別化を図るうえでは、ターゲットとする顧客のニーズを正確に把握することも欠かせません。

QCDにおける要素の優先順位

企業の方針などにもよりますが、QCDの3要素にはある程度の優先順位が決まっています。最初に優先度が高いものから設定し、ほかの要素も順に決めていくのが効率的です。ただし、どの要素も大きく関係し合っています。この点を見落としていると、どれかひとつを決めたり変えたりした結果、思わぬ形でほかの要素に影響が生じかねません。プロジェクトの計画を立てる際は、それぞれの要素のバランスを取りながら、優先度の高い要素を中心に設定していきましょう。

品質が最も優先される

QCDにおいて、品質は特に重視される要素です。というのも、不良品と気づかずに出荷してしまうと、場合によってはユーザーに危険が及ぶ事態が発生することもあるからです。質の悪い製品のために、ほかの製品や企業のイメージまで悪化する可能性も否めません。

また、大きな製品不良ではなくても、品質の悪化は購入した顧客の満足度に影響し、売上の低下につながります。そのため、たとえコストや納期に自社の強みを見出すとしても、最低限の品質は必ず維持しなければいけません。自社と顧客の双方に不利益が生じる可能性があるため、徹底した品質管理が求められます。

他の2要素は優先順位が変化

価格と納期の優先順位は、その時々の状況によって変化するため、十分な確認が必要です。たとえば、顧客が納品を急いでいるときなど、通常よりも短い納期を希望されたケースでは納期が優先されます。その場合、材料を早急にそろえたり、人員を多めに確保したりすることで、通常よりも多くのコストがかかる可能性があります。

また、予算がすでに決まっているなどコストを変更できないケースでは、納期よりもコストのほうが優先順位は高くなります。その場合、人件費を下げたり、納期を延ばしたりといった、コストの代わりにほかの要素を下げるなどしてバランスを取り、品質や利益を維持する必要があります。

QCDの管理方法

QCDのバランスをどうするにせよ、適切な管理を実施するためには、各要素の管理方法や管理基準を明確に設定し、運用することが求められます。以下では、各要素の管理方法のポイントを解説します。

品質(Quality)の管理方法

品質を管理するためには、まず何をもって品質の合格ラインとするのか、そのチェック項目や基準値を明確に設定しなければいけません。その後、その設定に基づいて製品を検証する方法を確立することが大切です。さらに、作業精度を上げるための新しい設備への投資や、人材の教育、不良品の発生を早期に発見・修正する仕組みの整備などが必要になります。

コスト(Cost)の管理方法

コスト管理は、製造業において重要な業務のひとつです。特に、人件費や原材料費は大きなコスト要因となるため、これらの調整がカギになります。人材の確保や教育にどれだけ費用を投じるか、原材料はどれを採用するのがよいか、多様な選択肢を考慮して比較検討することが重要です。ただし、コスト低減だけを追求してしまうと、品質や納期、安全性などに重大な悪影響を与える恐れもあるので、そのバランスには常に注意しなければいけません。

納期(Delivery)の管理方法

納期の適正管理を実現するには、生産工程を細部に至るまでしっかり把握することが基本です。必要な工数を計算したうえで生産スケジュールを作成し、実際の進捗状況がそれに沿っているか常に確認することで、納期遅れのリスクを低減できます。

また、納期を設定する際には、さまざまな要因による遅延のリスクを考慮し、あらかじめ余裕を持ったスケジューリングを心掛けることが大切です。

QCD改善の具体的な手順

QCDの改善を行うには、まず課題を発見しなければなりません。注意すべき課題が見つかったら、改善のための施策を実施して、その効果を検証します。施策の結果から見直すべき点を見つけ、今後の改善につなげていくことが大切です。以下では、これらの各手順について具体的に解説します。

課題を発見する

QCDの改善を行う前には、現在の状態を把握する必要があります。現状把握のためには、実際に商品を利用している顧客や、作業に携わっている従業員にヒアリングを行うのが効果的です。課題を身近に感じられる人からヒアリングすることにより、周りが気づきにくい課題も発見できます。

施策を実施する

発見した課題から、問題解決のための改善施策を立案・実施します。改善施策の実施に大きな予算を組み込むことが難しい場合もあるので、改善すべき課題を絞り込んで効果的に実施することが重要です。

製造業では主に、業務効率化のために産業用ロボットを導入して、一部業務を自動化させる方法が取り入れられています。また、現在製作している製品の不良品率を下げるためには、作業員の技術力をアップさせる改善方法が適しています。

改善案を出す際は、具体的にチェックできる指標を立てることが大切です。顧客満足度や不良品率、事故率などを指標に設定し、何をどの程度改善できるのか、設備投資はどれだけかかるのかなどを検討したうえで施策を実施します。

効果を検証する

施策を実際に行ったあとは、どれだけの効果が出たか、また失敗だった場合はその要因について検証します。効果がわかりやすいように、製造原価やリードタイムなどの指標を活用してさまざまな側面から検証し、今後の改善に活かしましょう。

また、改善策が当初の目的に合った内容で行われていたかどうかも重要なポイントです。PDCAサイクルを回して、継続的に改善に努めることが大切です。

QCD改善を成功させるポイント

QCDの改善を成功させるためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。以下では、QCDの改善を成功させるための重要なポイントを解説します。

現場の意見も取り入れる

改善策を考える際、上層部や管理者の意見だけでなく、現場の意見も取り入れることが重要です。現場のスタッフは日々の作業を通して、実際に作業を行う際に発生しがちな問題やボトルネックを熟知しています。その生の声を取り入れることで、より実践的で効果的な施策を策定しやすくなります。

計測可能な指標を用いる

施策の効果検証や改善を適切に行うためには、具体的な数値指標を設定・計測し、それをもとにアクションを起こすことが必要です。たとえば、生産効率や不良品の発生率、顧客のクレーム件数など、数値で測れるKPIを用いることで、施策の効果を客観的に判断できます。

改善と効果検証を継続する

改善の取り組みは、一度きりで終わるものではありません。一度の施策で期待通りの効果が出なかったとしても、それをベースにさらなる施策を続けていくことが大切です。施策の実施後には必ず効果検証を行い、次へのステップに活かしていくことで、継続的な改善を実現できます。

QCDに関係する派生語

近年では、QCDにさらなる要素を組み込んだ概念が増えてきています。「QCDF」や「QCDS」のように、特定の業種の特性やニーズに応じて新しい要素を加えることで、自社が重視すべき方針をより明確に定めることが可能です。

QCDF(柔軟性)

QCDFは、基本のQCDに「Flexibility(柔軟性)」の概念を取り入れたものです。この「F」の追加は、製造業やサービス業においては、顧客の多様な要求へ応える必要が高いことが反映されています。また、変化の激しい現代のビジネス環境へ適応するための要素、という意味合いで使われる場合もあります。

QCDS(安全)

QCDSとは、QCDに「Service(顧客対応)」「Safety(安全性)」などの意味をもつ「S」を追加した派生語です。Serviceは顧客対応やサポートの充実、Safetyは主に建設業で安全な作業を重視する目的で追加されています。プロジェクト管理では「Scope(範囲)」の意味で「S」が追加され、綿密な計画を重視する目的で使われています。

QCDE(環境)

「QCDE」は、「Environment(環境)」の視点を組み込んだ概念です。近年、環境保護などSDGsの重要性や社会的関心が高まる中で、製造業においても環境への悪影響を最小限に抑える生産プロセスや製品の開発が求められています。自然環境に配慮することは、自社のブランドイメージの向上にも資する取り組みです。

QCDRS(リスク・セールス)

「QCDRS」は、「Risk(リスク)」と「Sales(売上)」の2つの要素をQCDに組み合わせた考え方です。生産計画を立てる際には、ヒューマンエラーや生産設備の故障、販売後の不良品対応など、さまざまなリスクを考慮する必要があります。また、いかに売るかを考えたうえでQCDのバランスなどを考えることで、QCD管理をより実際の利益に結びつけやすくすることが可能です。

そのほかでは、QCDS(安全)に天候などの環境に気をつけるといった意味の「Environment(環境)」を追加した、「QCDSE」という派生語もあります。このように、自社の状況や価値観に応じてQCDに別の要素を加えることで、より効果的な管理が行えます。

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まとめ

本記事では、QCDの基本概念やその優先順位、管理方法、そして成功のためのポイントを解説しました。品質・コスト・納期の重要性と関係性を深く理解し、それぞれ適切に管理することは、プロジェクトの成功を大きく左右します。

効率的なプロジェクト管理を実現するためには、プロジェクト管理ツール「Asana」の導入がおすすめです。Asanaは、個々のタスク単位でプロジェクトを一元管理できます。Asanaでは、個々のタスクの進捗状況やタスク間の関係性、期日などを一目で把握可能です。これによって管理者は、タスク・スケジュール管理やメンバー間のコミュニケーションを効率化し、結果としてQCDを改善できます。

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