ビジネスシーンにAIを導入することで、業務効率化を図れると期待されています。ただし、日本は海外に比べてAIの活用が進んでいないため、AI導入によって業務効率化を進めることでどのようなメリットが得られるのかを理解しにくいのが現状です。本記事では、AIによる業務効率化が生み出すメリットについて解説します。部門別の導入事例やAI導入時の注意点も説明したうえで、おすすめのAIツールもご紹介するため、参考にしてください。
AIによる業務効率化が注目を集める背景と現状
業務効率化を推進する日本企業がAIに注目するケースは、決して少なくありません。海外ではAIの導入によって業務効率化を実現した事例が多く存在することもあり、日本でもAIの導入を検討している企業はあります。しかし、現状では日本で業務へのAI活用が進んでいるとはいえません。まずは、AIによる業務効率化が注目を集める背景や、データからわかる日本のAI導入の現状について解説します。
背景:労働力人口の減少と働き方改革
少子高齢化の進行に伴い、日本では労働力人口の減少が深刻な問題となっています。その一方で、働き方改革では長時間労働の上限規制と有給休暇の取得義務化が推進されているため、長時間働くことで利益を出すことはできません。企業では、今後どのように労働力を確保し、生産性を高めていくかが課題となっています。このような状況の中で注目を集めているのが、AIを活用した業務効率化です。
現状:日本企業のAI導入率=18%程度
日本企業のAI導入率を知るために、現在AIとして最も広く認知され普及している生成AIに関するデータを確認します。
ICT市場調査コンサルティングを行っている株式会社MM総研が企業1,599社を対象に実施した調査によると、日本の生成AI導入率は19%でした。このうち、本格的に導入している企業はわずか6%で、導入済みの企業も多くはAIを試している段階です。導入準備中または導入を検討している企業は24%のため、今後は生成AIをビジネスに取り入れる企業が増えると期待されます。
参照元:株式会社MM総研「生成AI/LLMの国内利活用動向調査2024」
また、野村総合研究所グループの情報セキュリティ専門会社であるNRIセキュアテクノロジーズ株式会社が日本、アメリカ、オーストラリアにある企業2,783社を対象におこなった調査の結果では、日本で生成AIを導入している企業は18.0%であるとわかりました。アメリカでは73.5%、オーストラリアでは66.2%の企業が生成AIを導入しているという結果だったため、日本は生成AIの活用が遅れていると判断できます。
参照元:NRIセキュアテクノロジーズ株式会社「企業における情報セキュリティ実態調査2023」
業務効率化に役立つAIの種類
AI(Artificial Intelligence)とは、人間の知的活動を模倣するコンピュータシステムの総称です。日本語で人工知能と呼ばれることは多くの人がご存知のことと思います。システムが既存データを学習し、パターンに基づいてタスクを実行します。AIの活用によって業務効率化が期待されていますが、AIはさまざまな分野で活用されています。ここでは具体的な活用例として、画像認識、音声認識、生成AIの三つを紹介します。
画像認識
画像認識の分野において、AI技術が活用されています。画像認識とは、画像に写っているものを把握し、分析することをいいます。
ディープラーニング技術の発展により、大量の画像データを学習させることで、AIが画像の特徴を認識し検知できるようになりました。現在では画像認識精度が高まり、写っているものが何であるかだけでなく、物の個数や状態、人物の性別や年齢なども高い確率で正確に判断できるようになっています。
高精度の判断が可能になった画像認識AIは、顔認証システムや検品時の外観検査、画像に記載されている文字の翻訳などに活用されています。
音声認識
音声認識もAI技術が活用されている分野です。音声認識は、人間の発した言葉を認識し、解析する技術を指します。認識した内容をテキストに変換する作業までを含めて、音声認識と呼ぶ場合もあります。
音声認識も画像認識と同様、ディープラーニングの発展により精度が向上しました。以前は聞き取りにくい発音や明確でない表現をテキストに起こすのが難しいとされていましたが、現在ではAIが複雑な情報を学習し、的確に出力できるようになっています。
音声認識は、スマートフォンの音声入力機能や自動翻訳機能、スマートスピーカーなどに使われているため、日常的に触れる機会が多い技術です。会議の議事録を自動で作成する、商談記録をリアルタイムでテキスト化するなど、ビジネスシーンでも役立っています。
生成AI
日本でAIの認知度を高めたのが、新たなコンテンツを生成できる生成AIです。決まった行為を自動化するという従来のAIが得意としていた分野とは異なり、生成AIはデータを学習して条件に応じたコンテンツを生み出せます。
入力したプロンプトと呼ばれる指示に従い、文章や画像、音声、動画などを生成できます。すでにさまざまな生成AIが発表され、実際に利用されていますが、最もよく知られている生成AIのひとつが米・OpenAI社が2022年11月に公開したChatGPTです。
生成AIを用いれば、手作業や経験則などで遂行していた属人的な業務を、AIに代行させることが可能です。データの分析やレポートの要約、資料作成などの業務を効率化できます。
AIによる業務効率化が生み出す6つのメリット
職場へのAI導入は業務効率化を実現しますが、それによって得られる具体的なメリットとしては、
- 労働力不足の解消
- 生産性の向上
- 安全性の向上
- コスト削減
- データに基づく判断の実現
- 顧客満足度の上昇
が挙げられます。
1.労働力不足の解消
AIを業務に導入することで、企業の人手不足問題を解消できます。AIは24時間365日絶え間なく作業をおこなうため、労働者に働いてもらう場合と比べ、作業量が体調や勤務時間の制約に左右されません。また、AIは、量の多い業務でも短時間で処理を完了させることが可能です。
働き方改革で長時間労働の上限規制が求められるなか、AI導入により業務の効率化が図れます。自動化できる作業をAIに任せ、人手が必要な個別対応業務に従業員をあてることで、人員配置の見直しも可能です。
2.生産性の向上
AIは人間と違い、疲労による影響を受けません。一定のクオリティを維持して作業をおこなうため、ミスによる作業の無駄や遅延が発生しないのが大きなメリットです。またAIが作業を代替することで従業員一人ひとりの業務負荷が軽減します。その結果、生産性向上と労働環境の改善につながります。
大量のデータを分析するAIを活用すれば、効果的なマーケティングや最適な人材配置を導き出すことも可能です。これにより企業運営の効率化と収益性向上が期待できます。
3.安全性の向上
危険な業務や立ち入り困難な場所での業務にAIを活用すると、職場の安全性強化が図れます。例えば、製造現場などでは衝突事故や落下事故といった人為的事故が発生することがあります。この場合は自動運転システムを導入することにより、事故を未然に防ぐことが可能です。
また、AIの画像認識や音声解析を用いれば、機械設備の異常検知が高度化でき、機械の故障による事故も減らせます。気温や室温などをAIでモニタリングすれば、過酷な労働環境から従業員を守ることも可能です。このような職場の安全性の確保は、企業にとって重要な課題のひとつです。
4.コスト削減
コスト削減もAI導入の魅力的なメリットのひとつです。AIに業務を代替させることで、従業員雇用にかかる人件費を抑えられます。例えば、業務に関する質問への対応や顧客からの問い合わせなどの対人コミュニケーションが作業時間を圧迫し、残業や休日出勤につながるケースは少なくありません。チャットボットを導入すれば、応対時間が削減でき、人件費の削減が図れます。
また、AIによって設備点検業務を自動化すれば、故障の早期検知によって不要な修理費用の支出を抑制でき、メンテナンス費用の削減が可能です。加えてAIによる職場環境の安全管理強化で、事故防止が期待でき、事故関連コストも削減が見込めます。
5.データに基づく判断の実現
AIを活用すれば、分析データをもとに経営判断を下すことができるのも大きなメリットです。AIは一度に大量のデータを処理できるため、企業の会計データや顧客行動データの解析をおこなえます。過去の販売実績や市場調査結果データをAIに分析させれば、効率的な経営戦略や費用対効果の高い販売戦略を立案可能です。
人間の判断には製品への思い入れなどの主観が入りがちですが、AIはデータに基づいて客観的な顧客ニーズを導き出します。AIをうまく活用すれば企業の意思決定はもちろん、新規事業やサービス開発にも役立てることが可能です。
6.顧客満足度の上昇
AI導入による生産性向上とコストダウンは、最終的に製品の値上げ防止やサービスの充実につながり、顧客満足度の向上が期待できます。
また、AIに過去の問い合わせデータを学習させることで、製品・サービスの改良やマニュアル作成にも役立てられます。製品やサービスに音声認識技術を取り入れれば、利便性と新規顧客獲得につながります。
顧客満足度は企業イメージを左右する大きな要因です。顧客満足度を高めることで、企業価値の向上につなげましょう。
【部門別】AIによる業務効率化の事例
AIの導入により、幅広い部門で業務効率化を図れます。部門別の事例として、
- 問い合わせ対応部門:AIチャットボットでの自動対応
- 営業部門:顧客分析・営業手法の考察
- 製造部門:需要予想・生産計画の立案
- 人事部門:人材管理の効率化
- 物流部門:入出庫、配送ルートの最適化
の五つを紹介します。
問い合わせ対応部門:AIチャットボットでの自動対応
問い合わせ対応部門では、基本的にはメールや電話を通して対応します。しかし、電話では個別対応をしなくてはならず、効率がよくありません。そこでチャットボットを活用すれば、一般的な問い合わせはAIが対応し、特殊なケースのみ担当者が対応することが可能です。迅速な対応が可能になるため、電話がつながらないことに起因する顧客の不満を解消し、利用者からの評価向上にもつながります。
AIの回答精度はディープラーニングにより向上していくので、対応回数が増すごとにAIが対応できることも増えていきます。また、チャットボットは顧客対応だけでなく、社内対応にも利用可能です。
さらに、音声認識や自然言語処理を活用すれば、音声データのテキスト変換や分析が可能です。AIを使った対応効率化は、人件費の削減や従業員の業務負担軽減に向けた有効な手段となります。
営業部門:顧客分析・営業手法の考察
営業部門では、顧客ニーズを正しく把握し、それに応じた製品やサービスを提案することが重要です。AIを活用すれば、顧客の購入履歴や行動履歴からニーズを割り出し、効果的なアプローチを考えることが可能です。
また、営業事務においても、データ分析に基づく見込み客の抽出や営業スケジュールの割り当て、売り上げ予測の可視化、メール作成支援といった活用ができます。AIは蓄積されたデータから新しいアイデアを生み出せるので、営業に行き詰まった場合の打開策や、チーム営業の手法の考察など、新しい視点からの営業活動に寄与します。
製造部門:需要予想・生産計画の立案
製造部門では、AIを需要予測に活用できます。人間では難しい将来の予測も、AIなら膨大な過去データから需要を予測し、それに基づいた在庫管理をおこなうことが可能です。これにより過剰在庫を防ぎ、コストを抑制できます。
また、現場の生産能力と稼働状況を考慮して、最適な生産計画を立てることも可能です。適正な生産計画により無駄をなくし、人員配置も過不足なくおこなうことにより、生産ラインの滞りを解消できます。
これまで熟練工の技術は継承が難しいと考えられてきましたが、画像認識や音声認識などでAIに学習させ、マニュアル化する動きも広がっています。AI導入により属人化を防ぐことで生産体制の自由度が上がり、製造現場の生産性向上に大きく貢献すると期待されています。
人事部門:人材管理の効率化
人事部門においては、AIを活用することで人材管理や勤怠管理を効率化できます。従業員のスキルや経験をデータとして管理すれば、客観的な評価と適材適所の人材配置が可能です。また、採用活動においてもAIによって求める人材を選別しやすくなり、人事担当者は面接などの本質的業務に集中できるようになります。
さらに、入退室管理にAIを導入すれば、勤怠管理だけでなく、いつ・だれが・どのくらい滞在したかを把握でき、セキュリティ強化が可能です。人事部門は従業員とのやりとりが多くなりがちですが、AI導入により業務効率化が図れ、対面での業務時間を確保できます。
物流部門:入出庫、配送ルートの最適化
物流部門では慢性的な人手不足が続く一方、スピーディな対応が求められています。働き方改革による残業時間規制もあり、作業効率化への取り組みは必須です。AIの導入により、人材不足をカバーできます。
AIの画像認識を活用すれば、自動検知により入出庫作業を効率化できます。また、複雑な荷物の仕分けも、AIに学習させることで自動化が可能です。
ドライバーの負担軽減には、AIによる渋滞予測が有効です。渋滞予測機能を活かし配送ルートを最適化すれば、ドライバーの作業効率が向上し、負担を軽減できます。時間的制約の多い物流部門では、AIの導入こそが生産性と競争力向上の切り札となります。
AIを導入する際の注意点
AI導入には魅力的なメリットが多くありますが、導入にあたっては注意事項もあります。
- AIは万能ではないことを意識する
- 導入意図を明確にする
- 自社に合ったツールを用いる
といったことです。それぞれについて解説します。
AIは万能ではないことを意識する
AIの情報処理能力は圧倒的ですが、万能ではありません。業務内容によっては、AI導入が難しいこともあります。
AIを活用するにあたって、まずはAIの性能と限界を正しく知らなくてはなりません。未だ発展途上の技術であるため、特殊な要求に対応できないことや、情報量の不足により正確な分析ができないことがあります。
特に、人の感情の理解や臨機応変な判断は、AIの苦手とするところです。導入目的を達成するためには、AIの長所を活かしつつ、人の柔軟な判断力も取り入れる必要があります。AIは万能であるという思い込みを捨て、AIについて正しく認識しておきましょう。
導入意図を明確にする
AI導入を検討する際は、まず自社の課題と目標を明確にする必要があります。どの業務を効率化したいのか、コストが高い作業は何かを把握し、改善の優先順位を決めましょう。そしてAI導入自体が目的とならないように、導入した後に何が達成できるのかを設定します。導入コストとそれにより見込めるリターンを比較し、分析することも大切です。
また、数字では測れない従業員満足度や働き方改革への影響も考慮します。AI導入前に導入意図と求める効果を明確にすることで、AIによる目的達成の可能性や導入効果をより高められます。
自社に合ったツールを用いる
AIをどの部署と業務に導入するか、きちんと絞り込むことが重要です。AIには得意分野と不得意分野があるため、自社が求める業務に対応できるかを見極めましょう。導入後のトラブルを防ぐためにも、事前に業務内容を選定することが重要です。
また、AI導入や維持管理にかかるコストも考慮しましょう。AI導入は、長期的な活用を視野に入れて体制を整える必要があります。社内にAIに精通した人材がいない場合には、実績や知見がある専門業者から適切なサポートを受けられるよう、信頼できるパートナー企業を選ぶことが大切です。
AIでの業務効率化ならAsana「AI チームメイト」
AIによって業務効率化を図るなら、効率化を求める業務に対応しているツールを導入することが大切です。Asana「AIチームメイト」は、従業員が注力すべき仕事に集中できるようAIがサポートすることで、チーム全体の業務効率化を促進します。
AIチームメイトの特徴について、詳しくご紹介します。
ツールの特徴
Asana「AIチームメイト」は、Asana独自のデータモデルである「Work Graph」を基盤としたAIツールです。
AIチームメイトの主な機能として、まず注力ポイントへのアドバイスが挙げられます。目標達成に向けた行動をするなかに潜んでいるリスクを解析しながら、従業員が力を入れるべきポイントを提案するため、効率的に業務を進めることが可能です。
また、AIチームメイトはワークフローのサポートによって業務効率化を促進します。タスク処理や業務の優先順位決定、作業の割り振りを実行し、従業員が無駄なく業務を進められるよう手助けをしてくれます。カスタマイズ性が高く、ユーザー環境に適応するのもAIチームメイトのメリットです。ワークフローの問題点や改善点を洗い出し、チームに共有して業務効率化につなげます。
AIチームメイトにより、AIが得意なことはAIに任せ、従業員は本来集中すべき業務に取り組むことができます。
参照元:Asana|単なるツールではなく、チームメイトとしての AI
ガートナーでもトップリーダーに位置づけられているAsana
ガートナー(Gartner)は世界最大級のIT市場調査会社で、同社による評価はITベンダーや企業にとって重要な参考資料となっています。ガートナーが2023年に発表した「共同作業管理のマジック・クアドラント」報告書では、Asanaがビジョンの完全性および実行能力が高い企業としてトップリーダーに位置付けられました。
Asanaはアメリカを本拠地とし、世界各国に拠点を構えて事業を展開しています。コラボレーションワークマネジメント(CWM)市場に強く、世界トップレベルの企業を顧客に持ち、ブランド認知度も非常に高い企業です。製品開発に顧客フィードバックを反映しており、非常に高い顧客満足度を獲得しています。このような実績やガートナーの高い評価から、Asanaを採用すれば日本企業のAI導入においても高い効果が得られると予想できます。
まとめ
日本ではまだビジネスシーンにおけるAI活用が進んでいるとはいえないものの、AIによって業務効率化が図れるのは事実です。すでに海外ではAIの活用が進み、従業員が本来力を入れるべき業務に集中できる環境が整えられています。
AIで業務効率化を推進することで、労働力不足が解消され、生産性や安全性の向上につなげられます。幅広い部門でAIによる業務効率化が可能なので、自社の課題や目標を明確にしたうえでツールを導入し、AIの活用を始めてみてください。
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