日本の食品業界が抱える課題とは? 課題を解決に向けた今後の展望

 2023.03.22  2023.07.04

食品業は近年、新型コロナウイルス感染症の流行や少子化などによって、大きな影響を受けています。これからもそうした傾向はさらに強まると考えられるため、早期に対処していくことが必要です。本記事では、食品業界が抱える課題について詳しく解説します。併せて、どのように解決すればよいのか、おすすめの対策もご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

日本の食品業界が抱える課題とは? 課題を解決に向けた今後の展望

日本の食品業界が抱える課題とは

私たちの食生活を支える食品業界は、今どのような課題に直面しているのでしょうか。ここでは、とくに指摘されやすい5つのハードルについて解説します。

人口減少による市場の縮小

少子化の影響を大きく受け、日本の総人口は減り続けています。総務省統計局が公表した「人口推計」によると、2023年1月時点における総人口は1億2,477万人(概算)で、前年同月に比べて53万人減少していることが分かります。2019年後半以降には急なカーブに変わり、減少スピードが上がっていることも懸念される点です。

他方、厚生労働省の「我が国の人口について」を見ても、2065年には総人口が9,000万人を割り込み、高齢化率は38%台の水準になるとまで推測されています。

人口が減少すると、社会のさまざまなところでゆがみが生じます。食品業界としても、食品を食べる人数が少なくなれば当然、総消費量が減るでしょう。また、高齢者が増えたとしても、若者や育ち盛りの子どもと比べて食が細いため、食品への需要は低く、消費量が上がっていく要素は見当たりません。

競争の激化

消費者側の食品に対する購入意欲が薄れる傾向にある中、食品業界でも課題は山積しています。同業他社との差別化を図るために価格を下げようとすれば、生産コストなどを徹底的に抑えなければなりません。しかし、価格を下げても他社がそれに追随してくれば、競争はさらに激化します。少子高齢化によって需要自体がより低くなっていけば、こうした価格に頼った競争は、食品業にとって消耗戦になりかねません。

品質の要求水準の高まり

食品業界は人々が口にするものを取り扱っていることから、品質などに対して厳しい基準が設けられるなど、高い安全性を求められています。とくに異物混入や産地偽装などは、これまでも数多くニュースで大きく取り上げられてきました。ひとたびこうした事案が起きれば、企業のコンプライアンスに不信感を持つ人が増え、信頼回復が困難になってしまうかもしれません。

食品業は細心の注意を払い、安心安全に食べられる食品を提供するよう強く求められています。そのためには、生産から販売にいたるまでのプロセスを一元的に管理する仕組みづくりなどが必要でしょう。

低い利益率と成長率

株式会社デジタル&ワークスが運営している「業界動向サーチ」によると、食品業界の利益率は、ほかの業界と比べて低いことが分かります。2020年決算では146業界中、利益率で見ると99位、成長率は全業界平均3.6%に対して約半分の1.8%で104位という結果でした。

通常、企業は生まれた利益をもとに再投資を行うものの、利益率が低いと投資に回せるリソースが少なくなります。ひいては、なかなか成長が見込めないといった事態になり、悪循環に陥ってしまうでしょう。

さらに食品業界では、商品のライフサイクルが短期化していることも問題視されています。実際にスーパーやコンビニなどの棚を見ると、新商品が頻繁に生まれているのがよく分かるでしょう。通常、商品を開発するには多額のコストや労力がかかります。消費者に飽きられないように、どんどん目新しい商品を開発し、出し続けなければならない状況になれば、経営が圧迫されかねません。

原料費・人件費・物流費の高騰

近年、円安や原油価格などの影響で、食品の原材料費が大幅に高騰しています。 働き方改革などの取り組みから人件費が上がり、物流にかかる負担も大きくなっています。つまり、ひとつの商品を製造するのにかかるコストは、これまでよりも明らかに上昇しているのが現状です。

製造にかかるコストが上がっても、販促のために販売価格を据え置くなら、利益は少なくなってしまうでしょう。収益性が低下すれば、食品業界全体の成長要因がなくなってしまうことも考えられます。

1948年創業 銀座の老舗洋食レストランが、アナログな世界をDX化し経営をV字回復

1948年創業 銀座の老舗洋食レストランが、アナログな世界をDX化し経営をV字回復

  • 社員、アルバイト、外注業者などとの抜け漏れのないタスク管理
  • プロモーションやメニュー開発など積極的なプロモーション展開が可能に
  • 飲食店のDX化により新たな事業領域を実現

詳細はこちら
 

食品業界の課題を解決するには? 今後の展望

食品業界が抱える課題は、今後の経営を揺るがしかねない大きなレベルのものが多く、一筋縄ではいかないかもしれません。では、どのように解決していけばよいのでしょうか。ここでは、2つのポイントについてご紹介します。

ERPシステムの導入

近年よく耳にするようになった「ERP」とは、「Enterprise Resource Planning」の頭文字を取った用語で、「企業資源計画」と直訳されます。日本においては「統合基幹業務システム」や「基幹システム」を指します。

「会計」「人事」「生産」「物流」「販売」といった業務は、企業活動において根幹をなすものです。従来、これらの管理は部門ごとに導入されたシステムで行われるのが主流でした。しかし、そうした方法では無駄が多く発生し、業務効率面でも優れているとはいえません。

そこでおすすめなのが、ERPシステムの活用です。ERPは、企業における「会計業務」「人事業務」「生産業務」「物流業務」「販売業務」などの基幹となる業務を統合できるシステムです。これらの業務を一元化できれば、部門ごとで管理していた情報を簡単にひとまとめにして、分析や処理が可能になります。そのため、DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として導入するのも一案です。

ERPシステムのメリット

ERPシステムを導入すると、さまざまなメリットを受けられるようになります。

まず、商品の原材料から生産、販売にいたる膨大な情報を一元的に管理できる点です。もしも仕入れ・流通・販売など、一つひとつの工程に関わる情報がバラバラにあると、何かトラブルが起きたときに原因を突き止めるまでに時間がかかってしまいます。

ERPシステムには、そうした情報を統合させることで、業務効率化や生産性を向上させられメリットがあります。併せて、経営にまつわる判断をスピードアップさせられることから、さらなる販売促進もめざしていけるでしょう。

食品工場のスマートファクトリー化

2つ目の解決策は、最近話題として取り上げられることの多い「スマートファクトリー化」です。そもそもスマートファクトリーとは、AIやIoTといった最先端のデジタル技術を導入することで、生産工程の負担を減らし、 生産性向上をめざす製造工場のことです。簡単にいえば、ロボットを使って自動化するようなイメージが分かりやすいでしょう。2017年には、経済産業省からスマートファクトリーへの移行に向けたロードマップが発表され、国としても取り組みを後押ししています。

食品業界でスマートファクトリーを導入すれば、原材料の仕入れに無駄がなくなり、在庫過多などのリスクを減らせます。また、工場内では徹底した衛生管理や、温度・湿度といった品質管理も可能です。商品の需要と供給のバランスを図るために、データ分析を行い、顧客のニーズに合わせてタイムリーに開発したり、提供したりすることも実現できます。

まとめ

日本の食品業界は現在、多くの課題を抱えています。人口減少から競争が激化し、低い利益率がさらに低くなることで、経営が成り立たなくなるリスクもあるでしょう。そこで、ERPシステムを導入して業務効率化を図ったり、AIやIoTなどを活用したスマートファクトリー化を促したりするのが効果的です。デジタルを活用したDXの取り組みで経営改善を図れると判断できれば、早期に検討していく必要があるでしょう。食品業界でのDX推進に興味をお持ちの方は、ぜひ以下のURLも参考にしてみてください。

企業が取り組むべきDXの本当の意味と成功戦略

企業が取り組むべきDXの本当の意味と成功戦略
DXの第一人者 前川氏からの提言

業界業種を問わず、多くの企業がDX実現を目指していますが、どうすれば本来の変革に向かうことができるでしょうか。
企業のDXを研究する東京通信大学 情報マネジメント学部 情報マネジメント学科の前川徹教授の見解を踏まえて解説します。

資料はこちら

RECENT POST「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の最新記事


DX(デジタルトランスフォーメーション)

日本の小売業を取り巻く課題とは? 解決策やDX化の具体例を紹介

DX(デジタルトランスフォーメーション)

日本の金融業界の課題と現状は?今後の展望とDX

DX(デジタルトランスフォーメーション)

日本の飲食業が抱える課題とは?解決策のDX促進も解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)

日本の不動産業界の課題は? 現状や今後について解説

日本の食品業界が抱える課題とは? 課題を解決に向けた今後の展望
New call-to-action

RECENT POST 最新記事

ブログ無料購読のご案内

RANKING人気記事ランキング