日本の製造業は現在、慢性的な人手不足や設備の老朽化など、いくつもの課題があります。こうした課題の解決策としてDX推進や業務の見直しなどが挙げられます。本記事では、日本の製造業における課題とその解決策を紹介するとともに、日本の製造業がDX化に取り組む重要性やDX導入の進め方などについて解説します。
日本の製造業が抱える課題とは?
日本の製造業は高い技術をもっていることが世界的に知られている一方で、いくつかの不安要素も抱えています。以下では、「人手不足」「設備投資の遅れ」「感染症や自然災害の影響」という3つの不安要素に絞って、日本の製造業が抱える課題について解説します。
人手不足
日本の製造業が抱えている課題の1つ目は人手不足です。少子高齢化や労働人口の減少に伴って、日本の製造業は慢性的な人手不足に悩まされています。経済産業省・厚生労働省・文部科学省の3省で共同作成した「2022年版 ものづくり白書」によると、製造業の就業者数は約20年間で157万人減少しています。全産業に占める製造業の就業者割合も約20年間で3.4ポイント低下しているため、他産業と比べても製造業の人手不足は深刻化しているとみてよいでしょう。
人手不足は長時間労働の常態化やそれに伴う従業員の負担増などにも悪影響を及ぼす可能性があり、このような問題のある就労環境では、さらに働き手を遠ざけ、人手不足の悪循環を招きかねません。
人手不足対策として賃金を上げるのもひとつの方法ですが、そうなると人件費が増加し、低コストで生産できる海外の製造業に比べて、さらに競争力が低下してしまうのもジレンマです。
また、少子高齢化に伴って技術の継承が難しい、人材獲得競争が激しくなっている、国内の人口減によってマーケットを縮小せざるを得ないなど、製造業は何かしらの対策を講じない限り、さまざまな面から人口減に苦しめられることが予想されます。
進まない設備投資・老朽化
日本の製造業が抱えている課題の2つ目は、日本では設備投資に消極的な企業が多く、設備の老朽化が進んでいることです。経済産業省が2021年に公開した資料「製造業を巡る動向と今後の課題」では、製造業における設備投資は2012年以降、投資額が減価償却費を上回っていますが、足下の投資額は減少傾向にあることが報告されています。特に二次金属加工機械は、設備導入から15年以上経過しているものが70%近くもあり、老朽化が進んでいるのが現状です。
先に紹介した「2022年版 ものづくり白書」によると、2017年度から2020年度の平均値で、営業利益率が高い企業は積極的に有形・無形の設備投資や研究開発投資を行っている一方で、営業利益率が低い企業は、設備投資が少ないにもかかわらず借入金増加率が高くなっています。
つまり、企業競争力を向上させるには、どこかの時点で大胆な設備投資を行い、老朽化した設備を最新化することが必要であると考えられます。
感染症や自然災害の影響が大きい
日本の製造業が抱えている課題の3つ目は、感染症や自然災害の影響が大きいことです。昨今の製造業は新型コロナウイルス感染症の影響によって海外から部品が届かないなど、安定的に製品をつくるのが難しい状況にあります。また、自然災害によってサプライチェーンの流れが一部でも止まると、生産計画に狂いが出る可能性があるのも製造業が抱える課題です。
今日のサプライチェーンが国外にまで広がっていることや、近年自然災害が増加していることを思えば、これは決して軽視できるリスクではありません。
これらの問題に加え、最近ではウクライナ情勢の影響を受けて原油価格が高騰し、エネルギー問題までも生じている状況です。こうした難しい状況が続いている一方で、十分な対策ができている企業は多くありません。先行き不透明なVUCA時代を生き抜くために、日本の製造業は生き残り戦略を考える必要があります。
日本の製造業が抱える課題の解決策
日本の製造業の課題を解決するために有効な方法としては、「DX推進」と「業務の見直しや社内環境の整備」の2つが挙げられます。
DX推進
DX(Digital Transformation)とは「デジタル技術を用いた変革」を意味し、DX推進は、企業でDXを推し進めることです。業務を見直し、必要な部分に最新のデジタル技術を導入することで、高い品質を維持しながら生産パフォーマンスを高めるなどさまざまなメリットが期待できます。
たとえば、AIやロボットなどを活用して業務の自動化・省人化を進めれば、現場の従業員の負担を減らし、人材不足の解消につながる効果が見込めます。
業務の見直しや社内環境の整備
労働人口そのものが減少している現状、人手不足の劇的な改善を今後期待するのは難しいのが実情です。したがって、今後はより少ない人数で業務をこなせるように業務の見直しを行って現状の無駄を探し、それを省くことで生産性の向上を図ることが重要になります。
現場の負担を減らすには、作業工程のマニュアル化やアウトソーシングの活用なども有効な手段です。また、人材を確保するためには、既存の価値観にとらわれず、女性や高齢者など多様な人材を活用していくことも重要になるでしょう。幅広い人材が活躍できるようにするためには、柔軟な働き方ができる社内体制を整備することも必要です。
日本の製造業がDX化に取り組む重要性
製造業においてデジタル技術は非常に多様な活用可能性をもっています。
たとえば、デジタル技術を活用すれば、さまざまな情報を可視化することが可能です。システム上で在庫状況や作業の進捗状況を管理できるようにすれば、今の状況を簡単に把握しやすくなり、在庫管理や人員配置を最適化するなどして、生産性の向上が図れます。また、情報が可視化できていれば、万一トラブルがあっても、円滑に問題を特定して速やかに改善することが可能です。
さらにAIを導入することで、人の手で作業していた業務の多くを機械で処理できるようになります。AIやロボットなどに置き換えられる仕事を積極的に機械化していければ、従業員の負担軽減と生産性の向上を同時に進めていけるでしょう。
以下では、Asanaのワークマネジメントプラットフォームを活用して業務効率化に成功した企業様の事例資料が確認できます。製造業におけるDXの成功事例を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
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DX導入の手順
DXを実際に推進するためにはどのような手順で進めればよいのでしょうか。
最初に行うべきは、社内の課題や業務フローを見直すことです。こうした作業をすることで、DXの目標を明確化したり、改善を図るべき作業工程が見えやすくなったりします。特に業務フローでは、実際に働く現場の意見をヒアリングすることで、より正確な把握が可能になるでしょう。
次のステップでは、上記の作業で得た知見に即して、解決すべき課題や現場の意見に合ったシステムやツールを検討します。導入にあたってはコスト面や使いやすさ、サポートの充実度などに注意しましょう。また、スモールスタートから始めることもポイントです。業務全体をすべて変更すると現場が混乱するだけでなく、失敗した際の負担も大きくなります。まずは一部の部門や業務から導入を始めて、効果検証を繰り返しながら、徐々に適用範囲を広げていきましょう。
DXに取り組む際の注意点とは?
DXに取り組む際には、以下の点に注意が必要です。
導入コスト
システムやツールの導入のためには、まとまった時間とお金が必要です。もしも資金を準備するのが難しい場合は、国が行っている「IT導入補助金」や「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(通称:ものづくり補助金)」を活用して資金を調達することも検討しましょう。
また、DXの推進にあたっては、デジタル関連に強い人材も必要になります。そうした人材が社内におらず、新規雇用も難しい場合は、外部の専門家に相談したり、業務のアウトソーシングを図ったりして対応することが必要です。
セキュリティ対策
DXを推進する際には、同時にセキュリティ対策に取り組むことも重要です。DXを進めるには、さまざまな情報をデジタルデータ化する必要があります。この際、セキュリティが脆弱だと、サイバー攻撃を受けるなどして大きな損害を被る可能性があります。したがって、DXを進める際には、自社の機密情報が外部へ漏えいなどしないように、強固なセキュリティを構築しなければなりません。併せて、研修などを通して従業員の情報リテラシーも高めるようにしましょう。
まとめ
日本の製造業は、慢性的な人手不足や社会情勢の不安などを受けて現在厳しい状況に置かれています。こうした状況に対応するためには、DXの推進が必要です。さまざまな仕方でデジタル技術を業務の中に取り入れることで、従業員の業務負担を軽減するとともに生産性向上も同時に実現し、事業の持続可能性を高められるでしょう。製造業におけるDX推進にあたっては業務全体をマネジメントできる「Asana」の活用が効果的です。DX推進を開始する際は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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