IT技術の活用が進む中、世間ではDX化、IT化、デジタル化など似た言葉が飛び交っていますが、どのような違いがあるのかいまいち把握できていない人もいるのではないでしょうか。本記事では「DX化」の概念、またIT化との相違点についてわかりやすく解説します。DXについて基本的なことから知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
DX化とは「デジタル技術を用いてビジネスに変革を起こす」ことを意味する
DXとは「Digital Transformation」の略語で、日本語では「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれています。経済産業省が平成30年に公開した「DXレポート」では、IT専門調査会社IDC Japan株式会社による定義を用いてDXの意味を次のように説明しています。
「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」
(引用元:https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_02.pdf)
わかりやすくまとめると、DX化とはクラウドやビッグデータといった最新のITを活用しながら、ビジネスにおいて次の事柄を実現することです。
- 市場や顧客ニーズの変動など外的環境への対応力を醸成
- 自社や自社の企業文化・従業員等の内部変革の実現
- ビジネスモデルの変革を通した新たな価値の創造、かつ競争的優位の獲得
このように、自社のビジネスをあらゆる側面から変革(トランスフォーメーション)していくことを指します。
DX化とIT化の違いは「目的」と「手段」
では、よく耳にするIT化とどのような点が異なるのでしょうか。IT化とは一般に、これまで人間が手作業や紙ベースで遂行していた既存業務を、ITツールによって効率化ないし自動化することを意味します。たとえば、従来ハガキや手紙で行っていた連絡がメールになったことは典型的な事例です。
IT化が業務の効率化・省力化に効果的であるのは確かです。しかし、IT化はいわば、既存の業務をアナログからデジタルに置き換えるだけであり、業務の必要性を根本的に見直したり、「新たな価値」を付加したりすることを目的にはしていません。先の事例で考えると、手紙をメールに置き換えただけでは、コストの節減といった「量的な変化」は得られても、新たな価値の創出という「質的な変化」は得られないでしょう。したがって、IT化の目的は「ITツールの導入」なのです。
これに対して、DXの目的は「ビジネスモデルの変革」です。ITツールの導入はあくまで手段であり、IT化は、DX化を推し進める中の一過程として捉えることができます。
DX=デジタル化ではない
昨今、よく使われる言葉に「デジタル化」がありますが、IT化と同じようにDXと単純にイコール関係で結びつくものではありません。デジタル化はDXよりも包括的な概念で、その種類は以下の3つに分けられます。
- デジタイゼーション(Digitization)
- デジタライゼーション(Digitalization)
- デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)
つまり、DXはデジタル化の中の一種類ないし一段階であるということです。ここではそれぞれが指す意味について、具体例を通して解説していきます。
デジタイゼーションの具体例
世界的なIT企業であるガートナーの定義によれば、デジタイゼーションとは「アナログからデジタル形式へと変えること」です。
具体例として、手紙やFAXといった連絡手段をメールに置き換えたり、Web会議を導入したり、紙で管理していた情報をデジタルデータに置き直したりすることが挙げられます。ただし、デジタイゼーションでデジタル化するのは、部分的な業務や情報だけに留まり、ワークフロー全体のデジタル変換を伴うものではありません。
デジタライゼーションの具体例
デジタライゼーションは、デジタイゼーションを経て、その範囲をさらに拡張したデジタル化のことです。デジタライゼーションにおいては、そのワークフロー全体をデジタル化します。たとえば、デジタイゼーションにおいては、業務の連絡手段を手紙からメールにしても、メールの文面を作成し、送信ボタンを押すのは人間自身です。
しかし、デジタライゼーションにおいては、RPAやMAなどのITツールを用いて、ワークフローそのものを自動化します。AIやIoT、ロボットなどを用いて、人間が作業していたことを代行させるのです。ただし、デジタライゼーションは、既存のビジネスプロセスを改善こそするものの、変革するわけではありません。つまり、デジタライゼーションもデジタイゼーションと同様にIT化の範疇に収まる概念であり、DX化そのものを示す言葉ではありません。
デジタルトランスフォーメーションの具体例
デジタル化の最終段階が、デジタルトランスフォーメーション、すなわちDXです。DXは、デジタイゼーション、デジタライゼーションを経て「デジタル化」されたことを基盤として、ビジネスモデルやビジネスプロセスそのものの変革を行います。
DXの典型例としては、店頭販売のビジネスをEC化することが挙げられます。オンラインで商品やサービスを提供可能にすることで、顧客はいつどこにいても望んだ商品が手に入るという新たな顧客体験を得ることができます。企業側も、ECサイト上の顧客データを分析し、ビジネスのプロセスをより最適化することができるでしょう。
DXをデジタイゼーションやデジタライゼーションから差別化する特徴として、より広範なIT技術の導入とともに、組織的・文化的な改革が必要なことが挙げられます。たとえば、店頭販売からECへの移行は、従来とは大きく異なる業務の進め方・考え方の導入を伴うものです。また、顧客データの収集に取り組むには、顧客中心主義的な経営哲学への移行や、柔軟で迅速な経営判断の促進が不可避です。このように、DXとはデジタル対応だけに留まらず、ビジネスモデルや組織そのものの変革を伴うため、全社的な戦略として推進されているのです。
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DX化を進めるデメリットも存在する
DXは企業全体に大きな変化をもたらします。その際、いわゆる「改革の痛み」も発生します。DX化によって想定されるデメリットとしては、ITの導入に伴うコストの発生や、業務プロセスや組織風土が大きく変わることによる従業員の反発、業務効率の一時的な低下などが挙げられます。
また、DXとは本質的に新たな価値を生み出すための挑戦的な試みであるため、絶対に成功できる方程式は存在しません。すぐに結果が出てくるとも限らないので、問題点があればその都度改善していくトライ&エラーが必要になります。
DX化はデメリットを上回る効果を期待できる
改革の痛みはあるものの、DX化によって大きな効果が期待できます。また、今後のビジネス存続のためには必要不可欠です。経済産業省の同レポートでは、「2025年の崖」という問題について指摘しています。これは多くの企業が老朽化した基幹システム「レガシーシステム」を技術的負債として抱えていることにより、2025年以降日本で年間最大12兆円もの損失が発生するというものです。
レガシーシステムは繰り返しカスタマイズされたことにより、システム構造が非常に複雑化(ブラックボックス化)しており、企業は維持・管理するだけでも、技術的・資金的に困難な状況に陥ると言われています。また、その複雑さや技術的な負担ゆえに、データ活用などの新技術に対応しづらく、今日のビジネスニーズに対応しきれません。
クラウド導入などによって、自社のIT環境を刷新し、DXを促進することは、レガシーシステムに付随するこれらの問題解決に寄与します。そして、柔軟性の高いシステム活用は、今日の変動激しい市場状況に適応したタイムリーな対応も可能にします。レガシーシステムの刷新は、DXの一過程に過ぎませんが、まずはこの課題に取り組み、その後さらに自社のビジネスモデルや業務のDX化に取り組むことで、前述のデメリットを上回るメリットが期待できるでしょう。
まとめ
DX化とは、IT化やデジタイゼーション、デジタライゼーションによってアナログな業務をデジタル化した先にあるビジネスモデルの変革を意味します。つまり、IT化はITツールの導入することが目的ですが、DX化においては手段に過ぎません。
DXは組織構造や働き方自体の変革も伴います。この際、必要になるのが、自社がどのような状態にあるのか、組織を見える化し、適切に管理するためのソリューションです。「Asana」はチーム全員の仕事状況を見える化し、その調整やコラボレーションを促進するマネジメントツールです。Asanaを導入すれば、テレワーク導入などのDXを推進しても、従業員をきちんと管理し、組織の生産性を高めることができます。DX化を戦略的に進めたいと考えている方は、ぜひ導入をご検討ください。
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