リスキリングとは? リカレント教育との違いや導入方法

 2023.06.21  ワークマネジメント オンライン編集部

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政府が主導して企業への導入が進みはじめていることから、リスキリングという言葉が多く聞かれるようになっています。しかし、具体的な意味やその効果についてよく知らないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、リスキリングについての基礎知識から、企業・従業員の双方が得られるメリット、導入する際の注意点を解説します。

リスキリングとは? リカレント教育との違いや導入方法

リスキリングとは

リスキリングは英語で「Re-Skilling」と表し、直訳すると「スキルの再習得」となります。経済産業省が2021年に開催した「デジタル時代の人材政策に関する検討会」において示された資料では、次のように定義されています。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

リスキリングは、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって起こる社会の変化に対応するために必要な取り組みのひとつと捉えられています。DXにおいては、デジタル技術を活用して事業の課題を解決したり価値を創出したりすることが期待されます。

DXを前提としたビジネスモデルでは、アナログ時代と異なるスキルが必要不可欠です。今後、デジタル技術の知識がなくては対応しきれない場面が多く出てくるため、既存の従業員を対象にリスキリングが求められています。また、部下と円滑にやり取りすることや意思決定を行う立場にある管理職は、現場の従業員以上にリスキリングが必要となる可能性があります。

リカレント教育との違い

リスキリングに似た概念として、リカレント教育が挙げられます。リカレント(recurrent)には「回帰する」「循環する」といった意味がありますが、リカレント教育とは従業員が働く中で必要に応じて大学などで教育を受け、再び仕事に戻るプロセスを繰り返すことを指します。

リカレント教育とリスキリングの主な違いは、職場を離れるかどうかにあります。リカレント教育の場合は、職場を離れて学び直し、再び業務に復帰する点が特徴です。一方のリスキリングは、通常業務とスキル習得を並行して実施します。学び直しという点では共通していますが、プロセスに違いがあります。

もうひとつの相違点として、自主的な学習かどうかが挙げられます。リカレント教育は社会人が自律的に学び直すことを指すのに対し、リスキリングには企業が今後必要となるであろうスキルを定めた上で従業員に学ばせるという側面があります。

リスキリングが注目されている背景

リスキリングが注目されている理由としては、ビジネスシーンにおいてDXの推進が浸透してきたことが挙げられます。AIをはじめとするデジタル技術の進展により、従来の職業の多くが失われる懸念がある一方、新しい職業の創出や、最新のITツールを取り入れることでの業務効率化といったことも期待されます。近年では新型コロナウイルス感染症の流行の影響もあり、リモートワークなどのITツールを活用した新しい働き方が普及しました。

紙がメインのアナログ時代で必要とされていたスキルと、DXが実現した後に求められるスキルとの間にはギャップがあります。そのため、DX時代に合ったスキルを獲得する取り組みとしてリスキリングが重視されています。

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リスキリングのメリット

リスキリングによって得られるメリットの中から4点をピックアップし、紹介します。

1点目は、採用コストの削減・人材不足の解消です。少子化をはじめとする人材不足が続く採用状況において、企業が求めるスキルを十分に有した人材を採用することは容易ではありません。新規に採用を実施する代わりに、既存の従業員に育成することによって、スキル人材の確保と採用コストの削減が得られるというメリットがあります。

2点目は、業務効率化への寄与です。リスキリングを通じて従業員が新しいスキルや専門知識を獲得することで、従来の業務を効率化することが期待できます。また、リスキリングの実施によって、新しい取り組みも実施しやすくなります。企業やチームで新しいことにチャレンジしようとしても、従業員に知識やスキルが不足していては前に進みません。組織に必要なスキルを獲得した従業員を増やすことで、新規事業への挑戦や革新的アイデアの創出が期待できます。

3点目は、従業員のキャリア形成につながることです。働き方が大きく変化する時代に対応できるスキルを獲得することは、従業員のキャリア形成において重要なことです。リスキリング制度を整備することで、取引先に対しては高いスキルを持った従業員が在籍していることのアピールになります。そのほか、求職者に対しても、就職することで価値のあるキャリアアップが見込めることを提示できるため、企業価値を高めることにつながります。

4点目は、リスキリングを通じて企業内に「学習することが当たり前」という空気をつくることで、自発的な学習習慣を社内に醸成できることです。不確実性や変化が多いといわれる現代において、自ら学習して状況に適応しようとする社内文化が築けることは、企業・従業員ともに大きな強みとなります。

リスキリングの導入方法

では、企業内にリスキリング制度を導入するには、具体的にどのように進めていけばいいでしょうか。順を追って解説します。

目標とする人材像やスキルを決める

まずは、目標となる人材像や今後の事業で必要になるスキルを明確にします。必要な人材やスキルは企業や業務などで異なるため、これが良いとは一概に言えません。そのため、経営戦略やこれから展開する事業を踏まえた上で学習の方向性を定める必要があります。具体的には、学習の方向性や事業の状況、従業員が現在保有するスキルなどの項目を確認します。

方向性が明確になったら、対象の部署や従業員を絞ってリスキリングを実施します。該当する従業員に対しては、事前にリスキリングの必要性やメリットを説明した方が良いでしょう。理解不足のままだと、言われたことをただやるだけの受け身な学習になりかねません。そうした事態を防ぐためにも、リスキリングを従業員自身のキャリア形成にプラスとなるものとして捉えてもらい、積極的に学習に取り組んでもらえるようにしましょう。

プログラム・コンテンツを決める

実施するリスキリングのプログラムにおいて重視するべき点は主に2つあります。1点目は、従業員に合った学習方法を選べるようにすること、2点目は効率よく学習できることです。勤務時間の一部に学習時間を作るため、従業員の負担にならないようなプログラムや教材を用意しましょう。

学習形式としては、e-Learning、研修、オンライン講座、外部講師を招いての講習、従業員同士の勉強会などがあります。それぞれ習得するスキルに合った形式を選ばなければなりません。また、自社で教材コンテンツを作成するのが難しい場合は、アウトソーシングを検討しましょう。

実際に取り組んで実務に活用させる

リスキリングを通じて学習したことは、知識レベルで留めずに実務で生かせられるよう身につける必要があります。そのためには、実務に近い状況でスキルの実践をさせることが効果的です。ただ実践するだけでなく、その都度フィードバックを行うことで、スキル向上につなげましょう。

リスキリングは従業員のキャリア形成にも関係するため、本人のキャリア観とすり合わせることも大切です。個別に面談を実施した上で学習を進めるようにしましょう。

リスキリング体制が定着したあとも、定期的に教育プログラムや教材などを見直すことが重要です。例えば、受講者を対象にアンケートを実施することで改善点を把握します。リスキリングによって効果が得られた場合は、組織全体に成功事例として共有することで知見が蓄積できます。

リスキリング導入の注意点

ここからは、リスキリングを社内に推進する際に気をつけるべきことを紹介します。

社内体制を整える

リスキリングを導入する準備として、まずは社内体制を整備しなければなりません。海外では大手企業をはじめ、リスキング導入事例が多くありますが、国内でも徐々に取り組む企業が増えており、従業員にも必要性を理解する人が増えています。しかし、社内での認知度が低いことが考えられるため、無理に進めようとせず、まずは従業員が取り組むメリットや海外の成功事例を丁寧に説明して、必要性を実感させるところから体制を整えていった方がよいでしょう。

パーソル総合研究所が実施した調査によれば、リスキリングの促進には目標の透明性や上司の支援といった要素が影響を与えることが明らかになっています。また、変化に消極的な雰囲気が組織内にある場合は、リスキリングが浸透しない原因にもなるため、変化をいとわない組織風土の構築を目指す必要があることも示唆されています。

従業員のモチベーションを大切にする

新しいスキルの獲得には継続的な学習が必要です。そのため、従業員のモチベーションを維持できる仕組みを用意することでリスキリングの効果が高まります。

例えば、従業員が学習を通じて習得したスキルを評価する制度を整備したり、習熟度や資格取得などに応じて手当を支給したりする方法が有効です。すでに実施している企業の事例では、進学のための学費全額支給制度、研究と両立するための勤務時間を調整する制度、資格取得などキャリアアップに必要な費用を補助する制度などがあります。

まとめ

従業員が働きながら、この先必要となるであろう新しいスキルを身につけるリスキリングを導入することで、人材不足の解消や業務効率化、従業員のキャリア形成などのメリットが考えられます。導入する際は、必要なスキルを明確にすることや、従業員の自主的な学習を促すことが重要です。社内体制を整備し、学習モチベーションをケアすることで、従業員がリスキリングへ意欲的に取り組みやすくなります。

効率的な業務を推進できる体制を構築するには、ワークマネジメントツール「Asana」の導入がおすすめです。日常業務から組織の全体像に至るまでを可視化することで、社内のDX推進や組織改善、従業員のモチベーション向上を目指しましょう。

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