日本の不動産業界の課題は? 現状や今後について解説

 2023.06.07  2024.03.08

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少子高齢化で人口減少が進む日本では、将来にわたって不動産需要の減少や人手不足の深刻化が懸念されています。本記事では、日本の不動産業界の現状や課題について整理しました。そのうえで不動産業界の今後を見据え、業界が抱える課題に対する解決策をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

日本の不動産業界の課題は? 現状や今後について解説

日本の不動産業界の現状

総務省統計局が公表している「『サービス産業動向調査』2022年(令和4年)5月分(速報)」によれば、2022年5月度の不動産業・物品賃貸業全体の月次売上高は約4兆500億円、そのうち不動産取引業だけで見ると約1兆1,800億円、不動産賃貸業・管理業では約1兆8,500億円となっています。年間を通せば実際には売上高の上下はあるものの、5月度の売上を単純に12倍して2022年の年間売上を推計すると、不動産業・物品賃貸業全体で約48兆6,000億円、不動産取引業が約14兆1,000億円、不動産賃貸業・管理業が約22兆2,000億円となります。

年間売上高の推移を見ると、不動産業・物品賃貸業全体のピークは2019年で約52兆2,000億円、不動産取引業は2018年の約17兆円、不動産賃貸業・管理業は2019年の約21兆9,000億円がピークであり、その後の売上高は年々低下しています。2019年以降、不動産業界の市場規模は縮小傾向にあると考えられます。

ここ数年で市場規模が縮小した最大の要因は、新型コロナウイルス感染症の拡大にあるといっても過言ではないでしょう。なぜならば、コロナ禍で国内景気全体が冷え込んだのに加え、密を避けるためにリモートワークが推奨されたことによって在宅で働く人が増えました。これらのことが大きく影響し、よりコンパクトか、より郊外のオフィス、すなわち賃貸料の安いオフィスに移転する企業が増えたため、オフィスビルの賃貸需要などが減少したと考えられます。

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日本の不動産業界が抱える課題

コロナ禍前までは活況を呈していた日本の不動産業界ですが、コロナ禍に端を発する問題以外にも、実はさまざまな課題を抱えています。主な課題を3つ紹介します。

人口減少・少子高齢化

まず、大きな課題として挙げられるのが、人口減少・少子高齢化にともなう市場規模の縮小です。少子高齢化が進む日本では若い世代の減少が止まりません。経済を支える生産年齢人口も1995年の約8,700万人をピークに減少に転じ、2015年には約7,700万人まで減少しています。2065年には約4,500万人にまで減少すると予測されています。生産年齢人口の減少にともない、住宅やオフィス、商業施設などの不動産需要が低減することは避けられません。このまま人口が減り続ければ、新築、中古を問わず、需要に対して供給される物件が過剰となり、地方だけでなく、都市部でもマンションの空室や一戸建ての空き家、テナントが入らない空きビルなどが増加すると考えられます。

地価暴落のリスク

地価暴落のリスクが高まっていることも日本の不動産業界にとっては大きな課題です。東京オリンピックや大阪万博といった大きなイベントの開催が決まると、開催前に行われる大規模開発や景気全体の底上げによって地価が上昇します。イベント開催で上昇した地価は、イベント終了後には下落に転じ、最悪の場合は暴落してしまうのではないかという懸念が強く持たれていました。これは、1964年開催の東京オリンピック後に政府の行った金融引き締め策により、実際に景気が低迷したという過去があるからです。今回の東京オリンピックでは、終了後に地価が急落したという調査結果はありませんが(むしろ上昇を続けています)、新型コロナウイルス感染症の拡大やウクライナ情勢など、景気に影響を及ぼす不安材料は数多くあります。不動産業界には生産緑地の2022年問題もあり、先行きはさらに不透明です。

生産緑地の2022年問題とは、1992年の生産緑地法改正時に生産緑地の指定を受けた市街化区域内の農地の多くが、生産緑地指定を解除されることによって起こるさまざまな問題のことを指します。生産緑地に指定された土地は、使用範囲が制限されただけでなく、設備の維持・管理なども義務として課せられました。その代わり、生産緑地指定を受けた土地の所有者に対しては、固定資産税が減免されたり、贈与税・相続税の納税猶予が認められたりといった優遇措置が与えられています。

1992年の改正生産緑地法では、生産緑地の指定には30年間の期限が付けられていました。つまり1992年から30年が経過した2022年に指定は解除され、生産緑地の所有者は、営農を続けるか買い取りを申し出るかを選択することになります。買い取りを申し出た場合には、自治体や農林漁業希望者が土地を買い取ることになっていますが、自治体などが買い取らなかった場合には、土地が不動産市場に流れることになります。2017年に再び生産緑地法が改正され、買取申出可能な時期を10年延期する特定生産緑地制度ができたため、宅地の供給過剰による地価暴落は現在のところ起きていません。

しかしながら、問題が先送りされただけと見ることもでき、地価暴落のリスクが解決されたわけではありません。今後の法改正の動向を見ながら、不動産業界全体で不動産価格の暴落対策を考える必要があります。

担い手不足

不動産業界の担い手不足が深刻化していることも見逃せない課題です。公益財団法人不動産流通推進センターの「2022不動産業統計集」によれば、不動産業界における法人数は年を追うごとに増えていますが、一事業所あたりの平均従業者数は3.6人であり、全産業区分の下から数えて三番目、全産業平均の10.6人に対して1/3強にすぎません。不動産業界では事業所を少人数で切り盛りしていることがわかります。

また、不動産業のなかでも不動産仲介業は、成果に応じて給与額が決まる出来高制を取る会社が多く、退職者も多いため、特に慢性的な人手不足に陥っています。

不動産業界の今後:課題解決策とは

これらの課題に対して、不動産業界はどのような解決策を取っていくべきでしょうか。ニーズの変化への適応、海外進出、DX推進の各対応策が不動産業界の今後を占うカギとなります。

時代に合わせたニーズの変化に適応

不動産業界を拡大させるための重要な課題解決策のひとつが、時代に合わせたニーズの変化に適応することです。例えば、日本の人口は年々減少するものの、逆に65歳以上の高齢者人口は増え続けるので、高齢者ならではのニーズを満たすことが不動産業界には求められます。高齢者用に手すりを設置し、段差をなくしたバリアフリーの一戸建て住宅や、ヒートショック対策用の暖房付き浴室を備えたマンションなどは今後、需要が高まるでしょう。中古物件もリノベーションすることによって、お客様のニーズを満たすことができます。

海外進出

国内の市場が縮小するなら、思い切って海外に進出するのも効果的な解決策です。実際にアメリカや東南アジアなどに進出して積極的に不動産事業を展開し、成功している大手不動産企業もあります。とはいえ、海外に進出するほどの財務的な余裕がなく、海外に派遣できる人材もいないという企業も多いでしょう。そのような場合には、国内に在留している外国人をターゲットにした施策を立案・実施し、外国人の需要を喚起するという方法もあります。

DXの推進

不動産業界には、物件に関する資料などのやり取りをいまだにFAXで行っている業者も多く、IT化で遅れをとっている企業が数多く見受けられます。人手が足りないにもかかわらず、仕事のやり方が非効率的で生産性が低くなっていることは大きな問題です。この問題を解決するには、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進して、生産性を大幅に向上させなければなりません。

近年ではインターネットに接続されたパソコンやスマートフォンで、お客様が望む物件の内見を気軽に行えるサービスが提供されています。また、法改正によって、対面での重要事項説明だけでなく、オンラインでの重要事項説明(IT重説)も認められるようになりました。DXを推進してオンライン内見やIT重説を導入すれば、遠方に住んでいるために、対面での契約締結が困難な方もお客様として取り込めるようになり、ビジネスの幅が広がります。物件の内見予約から入居申し込みまで、必要な手続きをすべてオンラインで完結させることも可能です。

不動産業界の課題解決や体質改善のためにITを活用する「不動産テック」と呼ばれる動きもあり、これまでになかった新しいサービスが次々と誕生しています。

まとめ

日本の不動産業界が抱える課題は、人口減少・少子高齢化にともなう市場規模の縮小、地価暴落リスクの高まり、担い手不足の深刻化などです。これらの課題を解決するには、時代に合わせたニーズの変化に適応することや、生産性を大きく向上させるDXの推進が欠かせません。適切なITツールを導入できれば、業務の効率化が図れ、人手不足の解消にもつながります。例えば、仕事管理ソフトウェア「Asana」を利用すれば、全従業員の業務進捗状況やスケジュールを一元管理して「見える化」でき、フォローアップにかかる時間を節約できます。
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