ジェネレーティブAIとは? できることと活用事例

 2023.01.06  ワークマネジメント オンライン編集部

ジェネレーティブAIによって製造のデザイン設計工程の大幅な効率化が実現しています。人間よりも実用的でクリエイティブなアイデアが生成できるからです。このAIの活用は製造業以外でも広まっており、今後も浸透していくでしょう。本記事では、そのAIを導入するメリットや活用事例などを紹介しています。

ジェネレーティブAIとは? できることと活用事例

ジェネレーティブAIとは?

ジェネレーティブAIとは、コンテンツ・モノなどのサンプルから学習したデータをもとに実用的かつクリエイティブなアウトプットを行う機械学習手法です。既存のアイデアではなく、AI自身が学習しながらオリジナルなものを生成する点が特徴です。

特に、製品設計に関係するものはジェネレーティブデザインと呼ばれています。設計者が製品・部品の制約・要件を専用のソフトウェアで定義し、AIがその要件にもとづいた製品設計を次々に生成する技術です。これまでのやり方と異なり、AIと共創するような手法になります。また、ITの開発分野においてはソースコードの生成やアプリの操作画面設計に応用できると言われています。

米国のIT系調査会社のガートナー社によると、ジェネレーティブAIが社会に与えるインパクトは大きいという見方をしています。当手法はヘルスケア、製造、メディア、自動車などの幅広い業界ですでに実証されており、今後も発展が進んでいくことでしょう。特に、製品開発の効率化や創薬分野での活用が進むという予想がされています。また、具体的な数字の変化では、社会で生成されるデータのうちジェネレーティブAIによって生み出されるものが現在1%未満のところ2025年までに10%に増加するという予測を立てています。

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ジェネレーティブAIのメリットとできること

ジェネレーティブAIを活用することで得られるメリットと、特に効果を発揮しやすい領域について解説します。

豊富なバリエーションの中から検討できる

ジェネレーティブAIを活用した製品開発では、重量やコストなど設計に必要な条件や制約を定義することから始まります。AIは設定された条件の範囲内にある設計アイデアを次々に生成可能です。

従来のやり方では、設計者自身がアイデアを探す必要があり、条件を検証する手間がかかりました。しかし、AIなら条件に一致する設計アイデアを人間よりも短時間でより多くのアウトプットができるため、設計に関する業務の効率化につながります。

クリエイティブな提案ができる

AIには先入観や固定観念がない上、短時間に大量の情報を処理できます。その強みを活かして人間のデザイナーでは思いつかないような創造性を発揮できます。

AIがアイデアを提案するとき、過去のデータを瞬時に処理して新しいデザインを設計します。人間が同じことをしようとすると時間と手間、労力がかかりますが、AIにとって情報処理は得意分野です。人間にはない視点、構造を持ったアイデアを提案できます。また、人間がデザイン設計をするときは、これまで培ってきた知識や経験、先入観からアウトプットが行われます。それによって安定的に質の高い設計が実現する一方で、革新性や新しい発想が出てきづらくなる側面があります。しかし、AIは毎回膨大なデータを参照して設計案を出せるため、効率的に新しいデザインを生成可能です。

コストの削減につながる

AIの活用によって設計にかかる時間とコストの削減がしやすくなります。例えば、ジェネレーティブデザインで設計することで部品の質量を最小限に抑えられます。それは、使用する原材料も少ない量で済むことにつながります。また、製造工程を考慮した設計になっているため、以前よりも時間的余裕を持ってアイデアを検討できます。必要であれば途中から条件を変更したり、デザイン設計をやり直したりすることも気軽にできるようになるでしょう。

従来のやり方では、条件を満たす設計を考えて検証する作業に多くの時間がかかっていました。しかし、AIを使えば膨大な代替案が素早く提示されるため、労力・時間などの様々なコストを削減できます。

ジェネレーティブAIの注意点

企業や個人の活動に革新をもたらす一方で、ジェネレーティブAIがもたらす危険性、社会への被害も懸念されています。その危険性の例が「ディープフェイク」や「フェイクニュース」です。フェイクという言葉の通り、偽情報の生成やなりすまし、詐欺、不正に利用されるリスクがあります。

例を出すと、ジェネレーティブAIの技術を悪用してもとの動画に映る人物とは異なる人物の顔を合成することで、本人が実際にしていない行動や発言の捏造が可能です。影響力のある人が狙われると問題に発展しかねません。

AIの技術は年々高度になっているため、人の目による判別が困難です。悪用への対策にジェネレーティブAIを使う例も出てきています。SNSの普及によって情報の拡散スピードが上がった現代では、実際の真偽に関係なく情報が広がっていくこともあり、企業も時代に合わせた対応や潜在リスクへの対処が必要です。また、AIで問題が起きるかどうかは利用する人の倫理観も関係してくるため、リテラシーの向上も今後重要なものになっていくでしょう。

ジェネレーティブAIの活用事例

製造現場でジェネレーティブAIが活用された事例を二つ紹介します。活用されることでどのような効果を発揮したのか、製品にどう生かされたかなどの情報は参考になるはずです。

自動車メーカーが設計で活用

一般道路から険しい地形にかけての運用を想定した、無人の小型移動ロボット開発に活用された事例があります。大手自動車メーカーと大手3D CAD事業者が協力してジェネレーティブAIを活用し、構成部品の脚、車輪、シャーシ、タイヤなどを3Dプリント製造が可能なように設計することに成功しました。また、強度やコスト、製造時の複雑さなどの様々な条件もクリアした設計になっています。

この移動ロボットには車輪とは別に脚があり、歩行機能が搭載されているのが特徴です。オフロード車両でも通行不可能な場面での利用が想定されており、平地では四輪駆動車として走行しますが、障害物がある場所では歩行機能で乗り越えて移動します。内部に荷台があるため、荷物や物資の積み込みも可能です。緊急補給品の輸送や険しい奥地への商品配送、路面状態が悪い地域への物品輸送、極限状況における遠隔地での調査などで利用される予定です。また、この事例が示すように、製造シーンにおける設計・開発の再定義、よりよいアイデアの探索にジェネレーティブAIは効果を発揮します。

医薬品開発の期間を短縮

新薬創出で活用された事例もあります。ジェネレーティブAI技術を活用して探索研究、前臨床期間の短縮、実験する化合物数の削減を目的にし、仕組み自体はジェネレーティブデザインの手法を応用しています。

医薬品の候補になる化合物は実験やコンピューターなどの工程を経てパラメーターの最適化が行われ、それには数年単位の長い期間がかかります。しかし、ジェネレーティブAIを活用すると制約条件に一致する化合物を自動的に候補として見つけるなど、バーチャル上で検討できるようになります。これにより、リード期間の短縮と化合物の合成数を減らす効果が期待できます。

本事例においては、合成する化合物数の削減をより短期間で実現できるようになりました。数億円規模の費用削減にもつながるため、より価値の高い事業にリソースを回せるようになります。

まとめ

ジェネレーティブAIは、コンテンツやモノなどの学習したサンプルデータをもとに要件を満たした成果物を生成する機械学習手法です。膨大なデータからオリジナルなものを生成するのが特徴で、人間よりも短時間で多くのクリエイティブな設計案を出せます。また、製造業などでは質量を最小限に抑えた設計を実現することによって軽量化やコスト削減も可能です。

製造業を代表に幅広い産業で活用が広まる一方で、ディープフェイクなど悪用される危険性もあります。今後はAIを扱う人間の倫理観やリテラシーも重要視されるようになるでしょう。

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