PMOが知っておきたいプロジェクト管理の運用ルールについて

 2022.01.20  2022.09.05

企業が目的を達成するために開始するプロジェクトは多くの場合、不特定多数の人物が関わるチーム体制にて進められます。複数の関係者が円滑に仕事を進めるためには、運用ルールとして要項をまとめる必要があります。そこで本記事では、プロジェクトに不可欠な存在である運用ルールを設計するメリットや有効性について解説します。

PMOが知っておきたいプロジェクト管理の運用ルールについて

運用ルールを決定するまでのプロセス

運用ルールを決定するまでのプロセスには、大きく分けて「要件定義書の作成」「手順書・ガイドラインの作成」の2つがあります。

「要件定義書」とは「プロジェクトの内容」をまとめた、実施前に作成する最終的な書類のことです。プロジェクトの概要や実施する目的、実施後にできること、完了後の業務フロー、機能要件・非機能要件などの項目がまとめられています。プロジェクト管理では、「運用するうえで必要な要件を定義する」ために作成されます。実施する目的と達成したいゴール、メンバーの役割、発生する業務の対応などを具体的に落とし込みましょう。

その後、要件定義をもとにプロジェクトの全体像を把握し、運用手順書やガイドラインを作成します。要件定義書との違いは、手順書・ガイドラインは現場の作業者が利用するマニュアルの役割を担う点です。誰が見ても理解できるように抽象的な表現や専門用語などの使用を避け、図表や写真などを活用して見やすい内容となるよう心がけましょう。また、作業工程も具体的に決まっているのであれば、チェック表や手順表を添付することで、リスク対策としても有効的です。

どうしても専門用語を多く含む必要がある場合は注釈を付けるか、用語集を付録として添付すると、チーム全体が共通言語でコミュニケーションが取れ、生産性向上に寄与します。

プロジェクト管理で運用ルールを決めるメリット

プロジェクトを進めていくと、往々にしてさまざまな問題や課題に直面します。それらに適切に対処しなければ、作業の抜けや漏れなどが発生し、プロジェクトの失敗につながるおそれもあります。運用ルールの策定は、そうしたミスを発生前から未然に防ぎ、仮にミスが発生した場合も素早く対応するために大切です。以下では、運用ルールを決める主なメリットについて解説します。

暗黙の了解や属人性がなくなる

運用ルールが敷かれていないと、業務において気づかない間に「暗黙の了解」が発生してしまう可能性があります。暗黙の了解とは、「現場でその日、最初に会った人には必ず挨拶をする」といった具合に、ルールとして明言されていなくとも、コミュニティにおける常識として浸透している状態を指します。

「〇〇では△△として処理をする」などの独自ルールが暗黙の了解になっていると、仮にそのルールがプロジェクトにとってリスクがある内容であった場合、ミスが発覚したときのリカバリが難しくなる可能性があります。

また、明確なルールが定まっていない状態では、個人の経験や技術に影響を受けやすくなります。そのため、業務の属人化にもつながりやすくなります。特定の人しか対応できない作業が発生してしまうと、引継ぎがうまくできなかったり、万一その人が抜けたときにプロジェクト自体が停止したりしかねません。そして、PMO側も管理ルールが決まっていない状態だと特定の管理者に依存する状況となるため、同じようにプロジェクトの失敗に結びつく可能性があるのです。

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こうした事態を防ぐために明確な運用ルールをしっかりと定め、作業をマニュアル化することが大切です。

管理項目を統一して現状把握がわかりやすい

進行中のプロジェクトを成功へ導くためには、スケジュールやコスト、業務進捗といった現状の把握が欠かせません。運用ルールを作成しておくことで、ルールに則った管理項目で統一できるため、それらの管理がしやすくなります。

現状把握をスムーズに行えるようになると、目標や業務、タスクに対して発生しているコストが可視化されるため、生産性向上や業務効率化に向けたリソース確保、人材の配置、新たなタスクの指示などが行いやすくなります。トラブルの早期発見にもつながるため、リスク対策やミスの予防としても効果的です。

共通のプロセスで進行できる

運用ルールによって業務フローを可視化できるため、共通のプロセスをメンバーに共有して進行できます。いつ・どこで・誰が・何をするのかが具体的に明言されていれば、トラブルが発生しても共通のプロセスで対応できるので、どのような状況下でも迅速な処理が行えます。

また、新人がチームに配属されたとしても、ルールをもとに教育が可能となります。すぐに戦力として換算できる点もメリットです。リソースのコントロールがしやすくなるため、必ずプロセスの共通化は実施しましょう。

引継ぎをスムーズに実施可能

プロジェクトを進めていると、メンバーの入れ替わりや担当者の変更はつきものです。その際に発生するのが、業務や役割の引継ぎ作業です。このとき運用ルールが定まっていないと、引継ぐべき内容や項目が明確化されていないため、適切な引継ぎが行えない可能性があります。

運用ルールを策定することは、引継ぎ作業の円滑化にも役立ちます。プロジェクトの目的や目標、ゴールまでのプラン、作業工程、作業の手順、役割などが明確になるので、それらのルールに基づいて引継ぎ作業を行えます。

また、進行自体がルールをベースに進んでいる状況であれば、途中参加でもすぐに現状把握ができます。作業に取り掛かりやすくなる点もメリットです。

プロジェクト運用ルールにおいて必要なポイント

実際にプロジェクト運用ルールを作成する場合、必ず必要となる項目や押さえておきたいポイントがあります。ここでは、特に必要性の高いポイントを3つご紹介します。

達成するゴールと役割分担

運用ルールを定める際、「プロジェクトのゴール」と「ゴールを達成するための役割分担」を明確にしておく必要があります。目的や計画が不明瞭だと、作業工程にかかるコストがうまく把握できず、スケジュールの設計や作業員の配置も難しくなります。

また、同じく重要になるのが「役割」です。プロジェクトを達成するために必要となるタスクは専門性が高く、重要度が高いものから雑務レベルのものまで多岐にわたります。そのため、それぞれ適正のある人材を割り振る必要があります。運用ルールを定めるには、発生するタスクを洗い出しておく必要があり、どのレベルのスキルを持つ人材が適任かを定めておかなければなりません。ルール作成時は、プロジェクトの全体像を棚卸しするのを忘れないようにしましょう。

なにをどうするかでタスク構成する

プロジェクトを完遂するためには、ゴールから逆算して目的を達成するために、仕事をいくつかのフェーズに分けてそれぞれのプロセスにて目標を定める必要があります。そして、各プロセスで発生するタスクは、「何を」「誰が」「どうするか」で構成します。

タスクが上記の項目を押さえて設計されていないと、業務レベルや必要なスキル、発生する可能性があるリスクなどを想定できないため、運用ルールを定めるのが困難になります。

完了報告を決める

プロジェクトの各プロセスが完了した際、進捗把握のために「完了報告」をする必要があります。これは、事実に対して客観的な内容を報告するのが目的ですが、この完了報告をどのような方法で実施するかをあらかじめ決めておくことが重要です。

「報告書を作成し、上長に共有する」といったフローを設計し、その際に使用する報告書の項目や提出場所などを定めたら、運用ルールに記載しましょう。

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まとめ

プロジェクトの運用ルールを作成するときは、要件定義をもとに運用時に必要となる要素を洗い出し、業務内容やフェーズごとの目標、トラブル発生時の対処方法、スケジュール、完了報告などをまとめていきます。PMOがリソース・コストの調整や適応人材の開発、品質・進捗・現状の把握をスムーズに行えるように、運用ルールの作成は必ず実施しましょう。

また、プロジェクト管理ツールAsana」を合わせて導入することで、タスクの動きやプロジェクトの全体像を把握できるため、策定した運用ルールに基づき進められているかどうか管理・調整しやすくなります。業務の効率化にもつながりますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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