クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)とは?その概要を具体的に解説

 2021.12.24  2023.03.30

プロジェクト管理においては、各タスクに期限とバッファを設けるのが一般的ですが、1つのタスクに遅れが生じると、後工程すべてに影響が出る場合があります。そこで活用したいのが、プロジェクト全体のバッファを一元管理する「クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)」です。本記事では、CCPMの概要やメリットなどをご紹介します。

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)とは?その概要を具体的に解説

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)とは

「クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(Critical Chain Project Management:CCPM)」とは、製品を納品するまでの速度の向上や、納期の遅延リスク軽減などのために有用なプロジェクトの管理方法です。大きな特徴としては、プロジェクトで発生する各タスクの期限をできるだけ短くし、プロジェクト全体としてのバッファ(予備日、時間的なゆとり)を設けることが挙げられます。

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)では、進捗状況とバッファの残り具合を共有しながら進めるため、チームの協力体制が整っているとより有効です。また、タスクの数が多く、複雑になりがちな中~長期に渡るプロジェクトを行う場合にも向いているでしょう。

クリティカルチェーンの特長

従来の管理方法においては、プロジェクトの各プロセスで発生するタスクごとに、それぞれ期日とバッファを設定していました。しかし、それでは1つのタスクに遅れが生じた場合、その後工程にも遅れが生じ、結果として全体的な遅延を起こしてしまうことがあります。たとえ納期に間に合ったとしても、遅れた分を取り返すために、後工程に携わる担当者への負荷の増大は避けられないでしょう。

こうした課題を解決するために開発されたのが、クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)です。前述の通り、各タスクの期日を最短に設定し、それによって生まれたバッファをプロジェクト全体で一元管理することで納期の遅延を防止します。

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメントの強み

スケジュールに余裕があると、心にも余裕が生まれます。しかし、余裕がありすぎると、かえって「学生症候群」「パーキンソンの法則」など、スムーズな進行の妨げになる現象を起こすことがあります。学生症候群とは「期日直前まで作業を後回しにしてしまう」という心理状態、パーキンソンの法則とは「資源はあるだけ使ってしまう」という法則です。

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)を用いれば、プロジェクト完了までのプロセスをチームで協力しながら、かつ最短ルートで進められるので、これらの問題の解決につながるでしょう。

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クリティカルチェーンの作成方法

続いては、クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)に基づいたプロジェクトのスケジュール作成方法をご紹介します。

1.タスクを整理し、PERT図を作成する

まず、プロジェクト全体の流れと各タスクの所要時間を把握します。そして、少しでも遅れるとプロジェクト全体の遅れにつながる工程を探しましょう。その際は、「PERT(Program Evaluation and Review Technique)」を用いるのが有効です。

PERTとは、各作業の順序を矢印で表した「アローダイヤグラム」という図で表現する手法です。アメリカの国防総省にて、弾道ミサイルを開発されるときに初めて使われたとされています。アローダイヤグラムを作成するにあたり、まずは各タスクを着手する順番に横に並べていきましょう。

2.各タスクに最短の所要時間を見積もる

各タスクを順に並べたら、次は各タスクの最短の所要時間を求めます。ちなみに、ここでいう「最短」とは「約50%の確率で期日に間に合う程度」と考えておくとよいでしょう。

そして、順番に並べた各タスクの所要時間を矢印に書き込んでいきます。そうすることで、「どの工程・タスクを組み合わせれば、もっとも効率的にプロジェクトを完了させられるか」などが分析しやすくなります。

注意点として各タスクが遅れることを考慮し、プロジェクトの最後にバッファを設けることを忘れないようにしてください。たとえば、「タスクA:最短2日+予備日1日、タスクB:最短3日+予備日2日」ではなく、「タスクA:最短1日、タスクB:最短2日、バッファ:5日」とするのが適切です。これにより、スムーズに進めばプロジェクトを最短で完了できますし、途中で遅延が発生した場合もバッファ期間で対処できます。

3.リソースの競合を確認する

とりわけ製造や土木、医療、開発などの現場では、リソースの関係で一度に複数のタスクを処理できないケースが少なくありません。各工程・タスクに必要なリソースを確認し、同じリソースを用いるタスクが複数ある場合は、タスクを処理する順番などを工夫しましょう。

また、リソースには当然「人」も含まれます。「同時進行すべきタスクA・Bの担当者が同じ」といったケースは見落としやすいので注意してください。

「〇〇のタスクが遅れると、その後のスケジュールがすべて遅れる。だから、同時進行で進められる〇〇のタスクの順序を変える」などの調整を行うことで、もっとも効率的なスケジュールを作成しやすくなります。

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメントのメリット

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)を取り入れることで、次のようなメリットがあります。

業務効率が向上する

主なメリットとしては、まず業務効率の向上につながる点が挙げられます。各タスクの最短の所要時間を明確にすることで、「後回しにしてしまう」「ダラダラと作業してしまう」といった可能性が減り、限りある時間を有効に使えるようになるでしょう。

タスクの優先順位が明確になる

PRET図を作成することで、タスクの優先順位が明確になる点もメリットです。「どのタスクが滞ると、全体の進捗に影響があるか」「どのタスクが滞ることで、どれくらいバッファが減るか」などが可視化されます。なので、「早く終わらせられるが、優先順位の低いタスクばかりが消化される」「難易度が高いが、全体の進捗に関わるタスクが放置されている」といった課題も解決できます。

プロジェクト全体の進捗が共有される

進捗率とバッファの残りを反映するグラフの作成などを通して、プロジェクト全体の進捗を各メンバーに共有しやすいこともメリットでしょう。あらかじめ注意すべきバッファの残状況になった場合の対策を、チーム全員で共有しておくことも有効です。

従来のやり方でメンバーにタスクを割り当てた場合、どうしても「自分のタスクを完了させること」だけに目が行きがちです。しかし、クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)を用いて、各タスクの前後関係や最短のルートなどを可視化することで、メンバーそれぞれが「自分ごと」としてプロジェクトを捉えやすくなるでしょう。

まとめ

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)では、各タスクの期日を最短で設定し、プロジェクト全体のバッファを設けたうえで、進捗率と残バッファをメンバー全体で共有します。

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)では、各タスクの所要時間やタスク同士の前後関係などを示した、PERT図を作成することが一般的です。「どのタスクが遅れたら全体の進捗が滞るか」に気を配り、もっとも効率的なルートを選ぶのが大きなポイントです。特に、複雑な工程が必要なプロジェクトやタスクが多く、中~長期に及ぶプロジェクトは、その効果を感じやすいでしょう。

クリティカルチェーン・プロジェクトマネジメント(CCPM)にはチーム一丸で取り組むことが求められます。その際は「Asana」などのプロジェクト管理ツールの活用もおすすめです。進捗状況や資料などをツール上で共有できるので、メンバー同士のやり取りもよりスムーズになるでしょう。

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