モンテカルロ分析とは? シミュレーションのやり方もわかりやすく解説

 2022.10.27  ワークマネジメント オンライン編集部

不確実性の高い現代の市場環境においてはリスク管理が欠かせません。モンテカルロ分析は、ビジネスにおいてどのようなリスクが存在するのか、その危険性や発生確率はどの程度なのかといったことを計算によって導き出す分析手法です。本記事では、モンテカルロ分析の概要やメリット、シミュレーションの仕方などを分かりやすく解説します。

モンテカルロ分析とは? シミュレーションのやり方もわかりやすく解説

モンテカルロ分析とは

モンテカルロ分析とは、ビジネスなどにおけるリスクを定量的に分析するための数学的手法です。モンテカロル分析は元々、アメリカの科学者スタニスワフ・ウラムが原子爆弾の開発をする途上において1940年代に考案しました。

モンテカルロ分析は、リスクがプロジェクトに与える影響、たとえば、あるリスクが発生した際にプロジェクトのスケジュールやコストにどのような悪影響が生じるかなどを分析するために活用されます。モンテカルロ分析においては、シミュレーションによってさまざまなリスクシナリオの可能性を検討し、そこで起こりうる結果やその発生確率などを分析します。これによって、経営者はプロジェクトに必要とされるスケジュールや予算などが最大でどれほどになるのかを客観的に評価し、プロジェクトにおける意思決定に役立てられます。

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モンテカルロシミュレーションとは

モンテカルロ分析を実行するために用いられるのが、モンテカルロシミュレーションです。このシミュレーションにおいては、分析対象における不確実性を含む変数に毎回異なるランダムな値(乱数)を導入し、何度も結果(リスク)を計算し直して、その結果が発生する確率を算出していきます。つまり、モンテカルロシミュレーションは、リスク分析における変数の不確実性を考慮に入れた分析手法であり、その有用性からさまざまな業界において活用されています。

モンテカルロシミュレーションの仕組み

モンテカルロシミュレーションの仕組みをより詳細に説明すると、このシミュレーションにおいては、不確実性を内包するあらゆる要素に確率分布と呼ばれる値の範囲を代入し、起こりうる結果をモデリングしていきます。このモデリングにおいては、乱数を用いて何度も計算をやり直し、それによって生じる結果の発生確率などを示していきます。計算の回数は不確実な要素の数や範囲にも左右されますが、数千回、数万回以上にも及ぶ膨大な数になるため、コンピューターを用いて計算されます。専用の解析ツールを用いる方法もありますが、身近なところではエクセルなどのスブレッドシートを用いて計算することも可能です。

モンテカルロ分析を行うメリット

モンテカルロ分析をプロジェクト管理において導入するメリットは、主に以下の事柄が考えられます。

さまざまな視点からプロジェクトを分析できる

モンテカルロ分析を行うことで、さまざまな場合に分けてプロジェクトを分析可能です。たとえば、分析を通して、プロジェクトで目標としている予想収益や納期を達成できる可能性がどれくらいあるかを早い段階で予測できれば、プロジェクト管理におけるコスト管理やスケジュール管理などを現実に沿った形に設定ないしは修正可能です。

将来のリスク分析に役立つ

モンテカルロ分析は将来起こりうるリスク分析に大きな効果を発揮します。この分析手法においては、何度も乱数計算を繰り返すことにより、プロジェクトにどのようなリスクが生じる可能性があり、その影響規模はどの程度のものになるのかを数値的に示せます。分析結果は、グラフなどを用いて視覚的に分かりやすく表現できるので、分析者はもちろん、チームにとっても結果を理解しやすいのも強みのひとつです。

モンテカルロシミュレーションのやり方

モンテカルロシミュレーションは、どのように進めればよいのでしょうか。続いては、モンテカルロシミュレーションの実施方法について解説します。

1. 確率分布で乱数を多数発生させる

モンテカルロシミュレーションにおいて核心となるのは、確率分布で乱数を多数サンプリングすることです。この計算においては乱数(ランダムな値)を使う必要があるのは、初回の結果がその後の計算に影響しないようにするためです。それぞれの確率分布に適切なパラメータを定義することで、多種多様な条件を詳細に組み入れて計算を実行できます。

2. 乱数をもとに将来予測をする

次の段階では、先の乱数を用いて、想定しうる将来のシナリオを多数計算していきます。最終的な計算結果は、標本値に統計処理を行うことで得られます。サンプリングデータが多ければ多いほど統計結果の精度が上がるというのは、統計の基礎です。モンテカルロシミュレーションも無数の計算を経て結果を出すので、その計算処理には多くの時間がかかります。

3. 結果を推定する

最後のステップは、各シナリオに関数を用いてシミュレーションした結果を計算し、平均を取ることです。シナリオを介して十分な量のシミュレーションを実行することで、信頼できる指標が得られます。

モンテカルロシミュレーションの活用例

モンテカルロシミュレーションは、不確実性が大きな影響を及ぼす幅広い分野で活用されています。たとえば、すでに紹介したように、モンテカルロ分析は原子爆弾の開発(原子核反応)の途上で考案されたものであり、現代でも素粒子物理学の領域などで活用されています。学問領域では、天文学や気象学などもモンテカルロ分析の恩恵に預かることが多い分野です。

ビジネスにおいては、とりわけ金融関係などはモンテカルロ分析を多用することで知られています。たとえば、金融アナリストは企業がデフォルトに陥るリスクを評価するためにこの分析を使いますし、投資家は為替や株価の変動などをシミュレートする目的で使用します。

また、本稿で解説してきたように、プロジェクト管理においてもモンテカルロ分析は有用です。プロジェクト管理においては、プロジェクトを実行する際にどのようなリスクが生じうるか予測分析し、対策を講じる「リスク管理」が重要になります。

プロジェクトの実施時にはさまざまな不確実性が想定されますが、モンテカルロ分析は偶然発生する事象まで計算に組み入れたリスク分析ができるので、プロジェクトで想定されるリスクを洗い出し、対策に反映するには非常に有用です。あるいは、個々のプロジェクトを超えて、企業の次年度の売上や経費などを予測計算する際にもモンテカルロ分析は使えます。

まとめ

モンテカルロ分析は、確率分布や乱数などを用いることで、不確実性も計算に組み込んでリスクの発生確率や影響度などをシミュレーションできる数学的手法です。プロジェクトを進行させていく過程では、さまざまな不確実性が障害となることが予想されます。特に現代は市場環境の変動が激しく、不透明なVUCA時代であるだけになおさらです。このような不確実性も考慮に入れたリスクを管理するために、モンテカルロ分析は大きな力を発揮します。

プロジェクトを円滑に進行し、リスクを軽減するためには、効率的な管理運用体制の整備もまた重要です。プロジェクト管理ツールAsanaは、チームメンバーのタスクを一元的に集約し、チームのコラボレーションを促進するクラウドソリューションです。Asanaを活用してチームの管理や連携を強化させ、そこにモンテカルロ分析といった手法も加えていくことで、プロジェクト進行において致命的な問題が発生するリスクを減らせます。ぜひ導入をご検討ください。

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