「経営戦略の父」から学ぶアンゾフの事業拡大マトリックスとは?

 2022.06.06  2023.03.30

ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変化する時代にあって、企業の成長戦略を描くのに重要視されているのが「アンゾフの事業拡大マトリックス」です。本稿ではこのフレームワークの概要、4つの成長戦略、成長戦略の中でも今後特に注目の多角化戦略について、詳しく解説していきます。

「経営戦略の父」から学ぶアンゾフの事業拡大マトリックスとは?

アンゾフの事業拡大マトリックスとは

アンゾフの事業拡大マトリックスとは、ロシア系アメリカ人のイゴール・アンゾフという経営学者によって提唱されたフレームワークです。アンゾフは「経営戦略の父」とも呼ばれますが、その名にふさわしく、このフレームワークは企業が事業成長や事業拡大を考えるにあたって非常に重要であるとされています。

このアンゾフの提唱した考え方はシンプルで、成長戦略を「市場」と「製品」の2軸で捉え、それらをさらに「既存」と「新規」の2つの視点で分解し、4つの象限に分類するというものです。「既存市場×既存製品」「既存市場×新規製品」のように象限ごとに分解しながら戦略を考えることで、企業が目指す戦略や実施すべき施策が見えてきます。

現代は主にインターネットの発達によって消費者の行動やニーズが非常に多岐にわたるようになり、経営を取り巻く環境がそれまでの時代とは大きく変化しています。経営環境の変化に対応し企業は成長を続けねばならず、その成長の実現のためにアンゾフの提唱したシンプルながらも強力なフレームワークが重要視されているのです。

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アンゾフの事業拡大マトリックスにみる4つの成長戦略

アンゾフのマトリックスは4つの象限に戦略を分類して考えると述べました。ここからはそれぞれの象限の戦略がどのようなものかを詳しく見ていきましょう。

今までの市場と製品を活かす「市場浸透戦略」

まず「既存市場×既存製品」の戦略です。これは「市場浸透戦略」とも呼ばれ、既にある市場で既にある製品を販売するという戦略です。基本的にはボリューム勝負のような戦略であり、顧客のリピート率や購入頻度を高めたり、1回あたりの購入数や購入金額を増やしたりといったものがあります。より細かい例を挙げれば、次回購入時に100円OFFの有効期限付きのクーポンを配布してリピート購入を促すなどです。

最もリスクを抑えて実施できる戦略ですが、その分他社も実施しやすいので認知獲得のための広告費投下が増加するなど、体力勝負になることも多いです。

今までの市場に新商品を投入する「新商品開発戦略」

次は「既存市場×新規製品」の「新商品開発戦略」です。これはすでにある市場に対して新しい製品を投入することで自社のパイを拡大しようとする戦略です。飲料や食品などでよく行われますが、顧客や市場のニーズを捉えつつ他社との差別化を実現する製品を、場合によってはコンスタントに開発していかねばなりません。開発のための設備や人員など、新たに投資を行ったうえで実現できる戦略なので、市場浸透戦略と比べるとリスクは高くなります。

今までの製品を市場開拓して活かす「新市場開拓戦略」

3つ目は「新規市場×既存製品」の「新市場開拓戦略」です。これは企業が既に有している製品を、それまでアプローチしてこなかった顧客や市場に向けて展開する戦略です。国内から海外に展開するという大きな規模のものでなくとも、特定の地域のみで展開していた商品を全国展開にすることや、ターゲットとする年齢層を変えることもこの戦略に入ります。

新規市場の開拓にあたっての入念なリサーチや分析が必要で、加えて単に市場を変えたといっても既存市場と同じ販売方法でうまくいくとは限らないので、営業力の強化や新たなマーケティング手法の確立が求められる場合もあります。したがってこの戦略に関しても「市場浸透戦略」と比較すると実施リスクが高いと言えます。

新たな市場と製品で勝負する「多角化戦略」

4つ目は「新規市場×新規製品」の「多角化戦略」です。これは「これまでアプローチしてこなかった市場に対し、新しい製品で勝負をする」という非常に難易度の高い戦略です。

これを実現するには、新規市場参入のためのリサーチなどの準備と、新製品の開発のための一定規模の投資が両方必要になります。ハイリスクである一方、見事ニーズにマッチしたときには非常に大きなリターンが見込めるのが特徴です。戦略検討の際には、自社の持つ強みやアセットを活用できる市場かという視点を持つことが重要です。

多角化戦略には4つの方向性がある

アンゾフのマトリックスの中で最も高難度の多角化戦略ですが、実は単純に一括りにできるものではなく、そのパターンによって4つのタイプに分類されています。

今までの技術と業種を活かす「水平型多角化」

1つ目は「水平型多角化」です。これは現在と同じ業種や分野において知識や技術を武器に水平的に展開する方法で、例えば自動車販売店がレンタカー事業に進出することや、ジュースなどの清涼飲料のメーカーが缶チューハイなどの酒類の市場に挑戦することなどが挙げられます。自社がこれまで培ったノウハウや既存の設備の活用などで、相乗効果が期待できる方法がこのタイプです。

似ている市場で展開する「垂直型多角化」

2つ目は「垂直型多角化」です。自社の現在の市場と似ている環境へサービスや製品を投下していくやり方であり、より詳しく述べると自社のサービスを起点にその上流工程や下流工程へと事業展開する方法です。例えばスーツの販売店がスーツの製造へ参入するケースなどが挙げられます。「水平型多角化」のように既存のノウハウやアセットの活用がしにくく新規参入へのコストがかかりますが、うまくいけば既存事業との大きなシナジーが生まれ、大幅な事業拡大が可能となります。

技術を生かして異業種に挑む「集中型多角化」

3つ目が「集中型多角化」です。これは企業が培ってきた技術やノウハウを軸に、新たな市場で新規サービスを展開する方法です。新規サービスは既存事業とは関連がないように見えますが、企業の技術力やコアになる顧客などに関連性があり、自社の強みをよく理解して適切な市場分析ができれば、非常に高い効果を発揮しうるでしょう。例えばフィルムメーカーによる化粧品事業や医療事業への参入などが挙げられます。

新しい製品と分野で展開する「集成型多角化」

4つ目は「集成型多角化」です。これは先に挙げた3例とは異なり、完全に新しい市場で全く新しい製品で勝負していく方法です。市場に対して知見があるわけでもなく、既存製品の強みを活かせるわけでもないところからのスタートとなるので、大きな費用がかかるうえに入念な分析も必須で、ハイリスクな手法と言えます。例えば自動車メーカーが住宅業界に参入するケースなどが挙げられます。こういったチャレンジは当然リスクですが、企業全体として見れば、既存事業とは異なる事業が成功すれば新たな利益創出の柱が生まれることになるので、結果的にはリスク分散につながります。

今後は多角化戦略を意識した事業拡大がポイントになる

ここまでアンゾフの事業拡大マトリックスに基づいて戦略の説明をしてきましたが、これからの時代で特に重要とされるのが「多角化戦略」です。新型コロナウイルスの影響で人々の生活様式やビジネスの在り方が大きく変容した現在、これまでのやり方では行き詰まってしまうケースもありうるでしょう。

そういった事態を打開するためには、今現在市場や消費者が求めているものだけでなく、コロナ禍を乗り越えた先の世界でどのようなニーズが生まれるか、どのようなサービスや製品が必要とされるかを考えることが重要です。ただし新たな領域にチャレンジする準備のみではリスクを抱えるだけになってしまうため、多角化戦略は意識しつつ低リスクでもできる施策から成長戦略を検討していくのがよいでしょう。

まとめ

本稿ではアンゾフの事業拡大マトリックスの概要、4つの成長戦略、成長戦略の中でも今後の事業拡大のポイントになる多角化戦略について解説してきました。この事業拡大に向けたデータ分析やプランの一元管理に効果的なツールがAsanaです。成長戦略の組み立てを効率的に進めたいとお考えの方はぜひ一度お問い合わせください。

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