DXレポート2.1を解説!経済産業省が示唆するデジタル産業の目指すべき姿とは

 2022.04.12  2022.10.28

WORK INNOVATION SUMMIT 24

2021年8月、経済産業省により最新版の「DXレポート2.1」が発表されました。これを受け、今一度DXへの向き合い方や改革の方向性などを見直そうとする企業も増えてくることが予想されます。本記事ではレポート2.1の主な内容について、改訂前と比較しながらわかりやすく解説します。レポート2.1の概要を知りたい方は、ぜひご一読ください。

DXレポート2.1を解説!経済産業省が示唆するデジタル産業の目指すべき姿とは

「DXレポート」は経済産業省が2018年公表した資料

そもそもDXレポートとは、経済産業省が2018年9月に公表した、日本におけるDXの展望や懸念点をまとめた資料のことです。具体的には、日本が今後どのようにDXを進めていくべきかのシナリオや、それにあたっての対策、DXを推進しないことにより起こりうるリスクなどが詳細に書かれています。

「2025年の崖」は初期のDXレポートで初登場した言葉

日本におけるDXの課題を語るうえで避けて通れないのが、「2025年の崖」です。これはDXレポートにて登場した言葉で、端的にいうとレガシー化したシステムの継続利用や業務改革の遅れが、2025年以降に年間最大12兆円もの経済損失をもたらす可能性を示唆したものです。このあまりに大きな経済損失が、チャート上で崖のように急落する絵を描くことから、2025年の崖と呼ばれています。そして、本レポートでは2025年の崖について、以下2点の課題が指摘されています。

  • 多くの企業の既存システムが事業部ごとに独立し、全社横断的なデータ取得などに向いておらず、さらには個社別のカスタマイズも加わっているためシステム全体が複雑化している。
  • 上記の問題に対して、経営陣が課題意識をもって経営改革を行おうにも、現場サイドがそれに抵抗感を示すためなかなか実行に移されない。

DXレポートでは、これらの課題を克服しなければ、2025年の崖の到来が危ぶまれる旨を説いています。これは特にアメリカの巨大新興企業に代表されるような、「個人データの分析をもとにレコメンドなどを活用し、事業成長につなげていく」「汎用性の高いシステムをもとにスピーディーにアジャイル開発を行い、改善を試みる」といった事業運営の姿勢をにらんだ指摘と見られます。

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DXレポートは「初期レポート」「レポート2」「レポート2.1」の3つが存在する

2018年に公表されたDXレポートは、実は「初期レポート」と呼ばれるいわゆる第1版であり、その後「DXレポート2」「DXレポート2.1」が一定期間を空けて続けて公表されています。ここからは、それぞれのレポートの詳細について解説します。

DXレポート2.1のポイント4つ紹介

初期レポートが公表された2年後の2020年12月、DXレポート2という名前で新しいレポートが公表されました。その中では、以下のような課題が指摘されています。

  • 初期レポート公表以降、特定の指標をもとに企業のDX推進度合いを測定したが、ほとんどの企業が推進できていない現状だった。
  • 「DXとはレガシーシステムからの脱却である」「競争優位性が担保されているのであればDXは不要」など、誤ったDXの解釈がされていた。
  • 新型コロナウイルスの影響を受け、産業界に大きな打撃が走ったが、事業環境の変化に対応できた企業とそうでない企業とのあいだに著しい差が生じた。これは既存のルールや文化への疑問を抱き、大胆な改革を行えたか否かが分かれ目である。

このような課題を捉え、改めてDXの本質とは何か、それをもとに企業はどのように変革を進めていくべきか、後押しする立場としての政府の方針はどういうものか、といった内容が示されました。

ここまで聞くと、「レポート2でも十分な内容だったのでは」と考える方もいるかもしれません。しかし、翌年8月に登場するDXレポート2.1も、ただの補足資料とはいえない重要性をもっています。以下では、レポート2.1の主なポイントを4つご紹介します。

ポイント①:DXレポート2.1はレポート2を補完している

1つ目のポイントは、前身であるDXレポート2を補完する位置づけとなっている点です。レポート2では、DXを推進し、いわゆる「デジタル産業革命」を経た結果としての「デジタル産業」「デジタル社会」とは具体的にどういうものかが述べられていなかったため、このような視点を補足する形で公表されました。

ただの補足資料的な位置づけとはいえ、内容はしっかり詰まっており、先ほど触れた「デジタル産業の目指すべき姿」以外にも、「ユーザー企業とベンダー企業の現状とあるべき姿に向けた変革」「今後のDXの方向性」「DX研究会にて検討すべき今後の施策」といった項目が解説されています。

ポイント②:デジタル産業のDX化には3つのジレンマが存在する

2つ目のポイントは、「3つのジレンマ」について触れている点です。これは、現在の産業構造でいうところの「ユーザー企業」と「ベンダー企業」が抱える、DX推進における課題を指しています。具体的には「危機感のジレンマ」「人材育成のジレンマ」「ビジネスのジレンマ」と呼ばれる3つです。それぞれの詳細は以下の通りです。

  • 危機感のジレンマ:「現状の業績がよいため、真に改革が必要だとは考えていないが、いざ危機感を覚えたときには、すでに改革実行に必要な投資ができるほどの企業体力を失ってしまっている」というもの
  • 人材育成のジレンマ:「技術発展のスピードが著しいため、従業員が新しい技術を習得したときには、すでにその技術が古いものになってしまっている」あるいは「速いスピードで新技術を習得できるような優秀な人材は、当然他社からの引き抜き対象になってしまうので、自社内に最新技術に通じる人材が乏しい状態になってしまう」というもの
  • ビジネスのジレンマ:「従来のいわゆる丸投げに近いような受託契約をビジネスの主軸としていたベンダーからすれば、ユーザー企業のDXを伴走するスタイルへシフトすると、受託ビジネスよりも売上規模が落ちるうえ、最終的にユーザー企業の内製化が進み、ベンダー企業そのものが不要になってしまう」というもの

ビジネスのジレンマはベンダー企業にのみ該当する課題ですが、危機感/人材育成のジレンマについてはユーザー企業・ベンダー企業それぞれが抱えうる課題です。

ポイント③:デジタル産業のあるべき姿を再定義

3つ目のポイントは、デジタル産業のあるべき姿を再定義している点です。レポート2.1においてデジタル産業は、「デジタル社会の実現のために必要となる機能を社会にもたらす」とされています。具体的なデジタル産業の要件としては、以下の項目が挙げられています。

  • 課題解決や新たな価値・顧客体験をサービスとして提供する
  • 大量のデータを活用して社会・個人の課題を発見し、リアルタイムに価値提供する
  • インターネットに繋がってサービスを世界規模にスケールする
  • 顧客や他社と相互に繋がったネットワーク上で価値を提供することで、サービスを環境の変化に伴って常にアップデートし続ける
  • データとデジタル技術を活用し、マルチサイドプラットフォームなどのこれまで実現できなかったビジネスモデルを実現する
    (引用元:https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210831005/20210831005-1.pdf P8)

そして、これらを満たすデジタル産業がもたらしてくれるデジタル社会とは、次のように書かれています。

  • 社会課題の解決や新たな価値・顧客体験の提供が迅速になされる
  • グローバルで活躍する競争力の高い企業や世界の持続的発展に貢献する企業が生まれる
  • 資本の大小や中央・地方の別なく価値創出に参画できる
    (引用元:同上)

ポイント④:DX成功パターンの提示が課題とされている

最後のポイントは、本レポートにも課題が残っているという点です。レポート2.1を報告した「デジタル産業の創出に向けた研究会」は、これが完全なものであるとは考えておらず、どの企業に対しても当てはめられるような、汎用性の高いDX成功パターンモデルの提示が必要だとしています。

これを提示することにより、企業戦略をもってDXに取り組みやすくなるほか、自社の取り組みが最終的なゴールであるデジタル産業へのシフトにおいて、どのフェーズに該当するのかを把握しやすくなり、迷子にならなくなると研究会は考えているのです。

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まとめ

度重なるDXレポートの改訂から、政府は企業のDX化が進まないことについて、深刻な課題意識を抱いていることがうかがえます。無論その思いは、昨今の激変する事業環境において事業を運営されている方も同じことでしょう。

そこでDX推進を支えるパートナーとしておすすめしたいのが、ワークマネジメントツール「Asana」です。Asanaは、全社のあらゆる業務を「見える化」するツールで、これを用いればタスク管理やワークフローの確認など、これまで地道にやるしかなかった仕事を一元的に管理できるようになります。細かい業務をまとめて効率化することで生産性向上につながり、大胆なDX・経営改革に踏み出していく土台づくりにも貢献します。自社のDX化に課題を感じている方は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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