企業の人事部門の課題と対応策について

 2021.03.10  2023.03.30

DXやテレワークの導入など、国を挙げた働き方改革が急激に進行する近年、人事部門の業務においても積極的な変化が求められています。本記事では、企業の人事部門の課題と対応策について俯瞰的に解説します。現在の企業において、人事部門が求められる役割について考える参考にしてください。

企業の人事部門の課題と対応策について

人事部門の課題について考える重要性

人事部門の課題が具体的に何を指すかをご説明する前に、「そもそも、なぜ人事部門の課題を企業全体の重要事項と捉えねばならないか」について考えてみましょう。

はじめに「人事部門」とは、企業の根幹を為す「人の管理」を預かる役職です。現在の企業社会においては、個々の業務プロセスでいかにDXが進んでいようとも、重要な判断については依然ほとんど「人」に委ねられているのが現状でしょう。

そのため、どんな人材をどこに配置するかによって、企業経営の方向性や成果が大きく異なってくるのは必然です。企業における人材登用・人材評価・人材配置を一手に引き受ける人事部門の働きは、企業全体の未来を決定づけるといっても過言ではありません。

実際、近年では「戦略人事」という概念が非常に注目を集めており、経営戦略にマッチする人事マネージメントの実行は、事業の成功に決定的な影響を与えるとされています。例えば海外では「CHRO(Chief Human Resource Officer)」、日本語に訳すと「最高人事責任者」という役職を置き、経営戦略の場にも積極的に参加させるほど、人事部門の役割が重要視されています。

「どんな人材をどれほどの人数採用し、どのような評価基準に基づいて、どこの部門に配置する」といった人事の仕事は、企業全体の経営戦略や経営目標から本来切り離し得ないものです。むしろ、経営戦略をただの絵空事にせず、現実に実現していくには、「人」という血肉を現場に送り込む人事部門の力こそが大きな価値を持ちます。こうした意味で企業の基礎に関わる人事部門の課題には、真摯に取り組む必要があるのです。

企業の人事部門の課題と対応策

前項では、人事部門の仕事が企業経営において、いかに重要かをご説明しました。以下では、企業の人事部門が抱える課題と、その対応策について解説していきます。

採用に関する課題

採用関連業務は人事部門の基幹業務のひとつであり、持続可能な企業体制を構築するためには不可欠な課題です。社員の募集を行っても応募者が少ない、あるいは応募者が多くても自社のニーズにマッチせず採用まで至らない場合、従来の求人方法を見直すことが重要です。

例えば、応募者が集まりづらい場合は、「募集要件が厳しすぎないか見直す」「競合他社と差をつけるために、待遇面を強化する」などの取り組みが必要です。売り手市場の今だからこそ、応募者目線に立ち、自社に入社するメリットがきちんとPRされているか、常に再確認することも必須でしょう。

逆に、応募者が多くても採用まで至らないという場合もあるでしょう。その際は、自社が求める人材のイメージを明確にし、それとマッチした募集方法・採用プラットフォームを準備するなどの対応が求められます。例えば、中途採用で即戦力の人材がほしいなら、それに対応した資格や経歴を応募条件に明記するといった具合です。

採用活動においては、企業全体の経営戦略と業務現場におけるニーズの双方を加味しなければなりません。少子高齢化社会が深刻化し、日本社会そのものの持続可能性まで危ぶまれる中、人材の確保という問題は、企業を挙げて考えていかねばならない難題です。

定着に関する課題

「社員が定着せず離職してしまう」ことも、企業にとって深刻な課題です。社員の頻繁な離職は、採用や研修関係のコストを増大させるだけでなく、会社に悪いイメージをもたらし、今後の採用業務にも支障をきたす恐れがあります。

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社員の離職率を改善するためには、まずはその離職原因を正確に把握し、判明した問題の解決に当たらなければなりません。例えば、多くの社員が賃金に不満を持っているようであれば、給与額を見直すといった具合です。あるいは、代替手段として福利厚生を充実させたり、副業を許可したりするなどの方策も一考の価値があるでしょう。

特に、離職理由として代表的な「職場の対人ストレス」は、上司と部下の縦関係で生じやすいものです。管理職研修やセクハラ・パワハラなどのコンプライアンス研修を充実させ、管理職の部下への接し方を見直すことも有効かもしれません。

大事なのは企業ないし人事部門が主体となって、労働環境の改善に取り組む姿勢を示すことです。企業が社員の待遇について真摯に考えていると示すことで、社員も企業への信頼や帰属心を高め、定着しやすくなることが期待できます。

育成に関する課題

人材難が深刻化する中で求められているのは、社内の現有戦力を育成し、そのパフォーマンスを高めることです。とはいえ、人材を育てるというのも、それはそれで難しい課題であるのが現実です。

企業において活躍する人材を育成するには、そもそも自社がどんな人材を求めているのか、目標や人物像を明確化することが先決です。そうしなければ、効果のある人材開発計画を立てること自体が困難になるでしょう。

また、求める人物像が明確化したとしても、各社員はそれぞれ異なる個性・適性を持っているため、人事部門の担当者はそれらも把握し、適切な社員に適切なプログラムを割り当てる必要があります。

それを行うには、各業務部門の管理者や育成対象の社員からヒアリングを実施することが重要です。求める能力や現場のニーズなどに合わせて、研修形式とOJT形式を使い分けるなど、育成方法を工夫することも欠かせません。

さらに、ストレス負荷のかかりやすい新入社員の早期離職を防ぎ、育成効率を高めましょう。これには、採用時や入社後の説明やフォローを、新たな社員たちへしっかり行うことが大切です。

配置に関する課題

限られた人材リソースの中、組織として最大限のパフォーマンスを発揮するためには、人員配置が重要な課題となります。適切な人員配置を行うには、経営戦略に照らした経営者側のニーズと、現場を回している各部門のニーズを双方擦り合わせて考えることが大切です。経営者側のニーズとしては事業計画や事業展開、年齢・性別などの人員構成に即し、配置を実行することが求められます。一方、現場側のニーズとしては欠員補充や定型業務対応、高負荷・高技術業務対応などが挙げられるでしょう。

両者のニーズを両立する人員配置を可能とするのは、全体の組織図についての理解と、個別の従業員の情報把握をおいてほかにありません。つまり、組織図の理解を通して、「どこにどんな人材が何人くらい必要なのか」をシミュレーションし、最適な人材配置を検討するのです。

とはいえ、企業規模が大きければ大きいほど、人事担当者が個々の社員を直接知ることは難しくなるでしょう。そこで重要になるのが、人事システムなどの管理ツールを活用することです。システムを通して組織全体や各従業員のデータを一元管理し、「見える化」すれば、データに即した効果的な人員配置が可能になります。

労働環境に関する課題

社会的に「働き方改革」が掲げられる中、労働環境の整備も人事部門として外せない課題です。社員が快適に働ける労働環境を整えることは、社員の企業満足度や仕事へのモチベーションを高め、ひいては労働生産性の向上につながります。採用人事においても、企業のアピールポイントとして有利に働きます。

新型コロナウイルスの流行とともに急速に広まったテレワークなどは、働き方改革の最たるものです。これが普及すれば、従来の労働形態では難しかった地方の人材や、育児・介護など家庭の事情を抱えた人材でも、積極活用できる可能性が出てくるでしょう。

しかし、テレワークの導入は人事部門に対して、「適切な労働時間の管理」という従来の課題を新しい形で突き付けるものでもあります。管理者が直接に勤怠状況を確認できない以上、その代替としては、やはり管理システムの導入が欠かせません。

また、労働環境については、社員のメンタルヘルスケアも重要です。労働時間や働き方の多様化も含めたさまざまな形での環境整備を通して、社員が職務に専念できる状況を作ることが、今後はますます重要になってくるでしょう。

社員のモチベーションに関する課題社員の仕事に対するモチベーションをいかにして高めるかも、人事にとって大きな課題です。モチベーション向上は、その社員の労働生産性や成長に直結し、企業にとってもさまざまな恩恵をもたらしてくれます。社員のモチベーションを高めるには、社員が頑張ることの動機付けとなる制度を導入したり、社内コミュニケーションを促進する施策を講じたりするなどが有効です。

例えば、新入社員の研修段階において、企業への帰属意識(エンゲージメント)を高めるような教育を行うのも効果的でしょう。また、普段から公正かつ透明性のある人事評価を行うことでも、「頑張れば報われる」という希望を社員に持ってもらえると期待できます。メンタルヘルスケアを含む労働環境の改善が、社員のモチベーション向上に寄与することはいうまでもありません。

人事部門のリソースに関する課題

ここまで、人事部門が取り組むべき課題を列挙してきましたが、場合によっては、それらの解決に当たるべき人事部門自体のリソースが足りないことも考えられます。

人事部門は上記の各課題に関わる仕事のほかに、月々の給与計算や勤怠管理をはじめとする普段の労務まで正確に行う必要があり、その負担は決して少なくありません。人事部門のパフォーマンスを最大限に発揮させ、企業経営にも関わるコアな部分の業務へ注力させるためには、こうしたルーティンとしての間接業務を効率化することが不可欠です。

人事業務を効率化する方法の一例としては、ITツールの活用や、間接業務のアウトソーシングなどが挙げられます。ITツールの活用は今後、社会的にDXやテレワークが進む中では必須とも言えるでしょう。また、自社の人件費が高いなら、安価なアウトソーシングは人手不足の軽減と人件費の削減を両立する、一石二鳥の策にもなり得ます。

任せられるところはコンピューターや外部企業に任せて、貴重な自社の人事担当者には戦略人事や労働環境の整備といったコア作業に専念してもらう。こうした経営方法が、これからの時代では重要になってくるでしょう。

まとめ

今回は、企業の人事部門における主要な課題と、その対応策について解説しました。DXやテレワークなど、働き方が多様化または刷新されていく中、人事部門の業務もより戦略的な動きが求められています。記事中で挙げたような重要な諸課題に対し、人事担当者を専念させるためには、ITツールの活用によるシステムの効率化が効果的です。

例えば「Asana」の仕事管理ツールは、定型的な反復業務はもちろん、一元的な情報管理やチームの情報共有も効率化し、人事業務を効果的にサポートします。こうしたツール活用により普段の業務を効率化し、人事課題の解決により多くの時間を捻出していってください。

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